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11 冒険者ギルド

 私がカウンターに戻って来たのをにやにやしながら見ている茶髪の男を無視して、受付に話しかける。


「仕事をしたいんだけど」と私は言う。


 受付の男は黙って奧を指さす。指さされた所には黒板のようなものがあり、そこにおびただしい量の張り紙が乱雑に貼ってある。求人情報が載っている掲示板か何かなのだろう。

 

 ギルドの奧に行き、そこで求人情報を眺める。嫌でも目につくのが、赤色で、そして大きな文字で書かれてる求人広告。


・・・・・・・・・・・・・・

 <討伐依頼>

 ランク:特級


 対象:魔王


 条件:なし


 報酬100,000,000金貨


 *特記事項:

  仲介手数料無料

・・・・・・・・・・・・・・・


 あ、これが巫女の言っていた魔王を倒してっていうやつね。他の求人依頼と比べて紙が茶色く古ぼけている。長い時間この掲示板に掲示されているのだろう。まぁ、この依頼はスルーする案件ってことね。


 掲示板をざっと見渡す。<討伐依頼>という求人が7割を占めている。<採取依頼>が2割弱、<護衛依頼>が1割満たないというような感じだろうか。

 <討伐依頼>に魔王を倒してとかいう依頼があるのだから、まともなのがあるとは思っていなかったから、案の定なのだけど、ふざけたような内容が多い。ファイヤーだとかウォーターだとかのドラゴンの討伐依頼とか、呆れるばかりだ。ドラゴンってそもそも、架空の動物でしょ、頭おかしいんじゃないの。こういうのを会社ではから案件というのだ。なんとかドラゴンの討伐というのは、恐らく実態のない案件なのだろう。


 それに、アンデッドドラゴンとか、文字通りアンデッドであるなら、不死なのだからどうやって倒せというのだろうか。依頼内容に矛盾がある。嘘を付くならもっと考えて嘘をついて欲しいものだ。<討伐依頼>はかなり怪しい。関わらない方がいいだろう。あ、分かった。これは冒険者ギルド側の陰謀だろう。存在しない動物の討伐依頼をだして、依頼受注の際の前受金を掠め取るというのが目的だろう。竹取物語のかぐや姫と同じ発想だ。かぐや姫は、蓬莱の玉の枝などの存在しないものを要求して、遠回しに結婚を拒否していたんだっけ。仲介手数料が安いのは、実現不可能な依頼を出して、前受金を騙し取っているからなのだろう。


 <護衛依頼>は、依頼内容がシンプルだ。何月何日出発で、どこどこの街に行く。予定行程は何日、というような内容だ。期限も決まっているから、非常に予定が立てやすい。しかし、出発日が明記されている分、スケジュール調整が難しいし、いつでも護衛の仕事があるということではないようだ。まぁ、だから<護衛依頼>って仕事は少ないのだろう。


 <採取依頼>は一見して無視すべき内容から、現実的なものまで多岐にわたる。ユニコーンの生け捕りってさぁ、と依頼人のセンスを疑ってしまう。ネス湖のネッシーの生け捕りとかの方がまだセンスも夢もあるというものだ。ユニコーンなんて、童話の世界の生き物なのだから、それを捕獲して欲しいとか、誰が真に受けるかよって話。

 生理的に受け付けなかったのが、小人族(女)の生け捕り依頼だ。依頼人の性癖が垣間見えてしまう。小人族ってのがアフリカかアマゾンかどこかにいるというようなテレビ番組を見たことはあるものの、ちょっとねぇ。呆れてしまう。人権って概念がこの世界にはないのだろうか?


 首を傾げてしまうのは、金属と思われる物質の採取依頼だ。アダマンタイトとかオリハルコンとか聞いたことのない金属は、たぶん空案件だからいいのだろうけど、鉄の採取依頼って何? と思う。鉄鉱石の採取依頼なら分かるのだけど、鉄をどうやって採取せよというのだろうか。鉄鉱石を採掘し、製鉄して依頼主に届けろってことかねぇ。一般人が高炉とか持っている筈がないのだから、そんな依頼をしても無意味な気がするのだけれど……。もしくは、空き缶でも拾って鉄を集めろという依頼なのだろうか……。


 私が掲示板の前で依頼を眺めていると、さっきの茶髪の男の声がきこえた。


「新米冒険者は、なんの仕事をするのかい? やっぱり魔王討伐かい? 」と茶髪の男は言った。またテーブルではどっと笑いが沸いた。

 私は、無視をしてそのまま依頼を眺め、まともなのがないかと物色する。

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