11話 渡せなかったチョコは最初から見ていた
片思いの人がいる。
「チョコ、渡せた?」
冬の風が、強く吹き抜けていった。
「ううん、渡せなかった」
友人は、俯いてチョコを握りしめている。
「泣いた?」
誰もいない校庭を冷たい風が流れていく。
「泣いてなんかない!」
声は震え、唇をかみしめていた。
「嘘だね」
風が強く吹き、髪が乱れる。
「なんでわかるのよ」
風がおさまり、静けさが声を鮮明にする。
「分かるもん」
夕日がゆっくりと傾き、二人を赤く染めていく。
「見てたから」
「いつから?」
「最初から」
冷たい風が、二人の頬を赤らめた。
「「なんで」」
二人の声だけが重なる。
「なんで好きなんだよ」
「あんたに言う必要ある?」
「あるから、ここにいる」
遠くで部活の笛の音が聞こえた。
「なんで」
「言わない」
帰宅途中の生徒の笑い声が、遠くから聞こえた。
「お前は何で、好きなんだよ」
「誰だって、アイドルみたいな人、ふつう好きになるでしょ」
「それって、本当に好きなの」
「……うるさいな!
分からないのよ!
分からなかったから渡せなかったんでしょ!」
冷たくなった手を、ぐっと握りしめた。
「そうなんだ」
「それで、何で最初から見てたの?」
「なんでだろうね」
チョコの箱が、ぐしゃりとつぶれる音がする。
夕日は影を溶かしていった。
ささやかな会話劇です。
解釈はご自由にどうぞ。




