天の海
掲載日:2026/02/20
クラムボンが目の前で浮遊している
淋しい風が吹いている
薄明穹が星を射抜いた
それは煢然とした星だった
赤銅色に輝いていた
クラムボンが目の前で浮遊している
銀彩に光る月が尖っては丸く
やがて円満となる
何本も傘を失くしては一本を見つけ出す
折り畳み傘も失くしてしまう
内側の黒が生きやすくする
クラムボンが目の前で浮遊している
虚空が侘しい風に共鳴する
峻厳な山々はただそこに在れ
ビルの間に強風と雨粒が吹き荒れる
沈殿した電車の中で人々が疲弊する
神さまだって参ってしまって
クラムボンが目の前で浮遊している
魂の希望が煌めき輝きそして燃える
蒼く 蒼く 蒼く
紺青の夢よ今と成れ
淋しい風が吹いている
ビル群が琥珀の陽に照らされ
嘆く泪もない
夜の境がやってきて雲が千切れていく
天の海の雫が落ちないことを希う
クラムボンが目の前で浮遊している




