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TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?  作者: 畑渚


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第38話 研究開発

「というわけで頼めないか!」


 アステリア学園に戻った俺は、莉子会長に内緒で小春ちゃんに頭を下げに来ていた。


 小春ちゃんからしても、その聞き慣れないお願いは想定外だったようで、鳩が豆鉄砲を食らったかのような表情をしていた。


 この願いが小春ちゃんの専門外なことはわかっていた。

 彼女の専門は機械系。生物学を修めているとは聞いたことがない。


 だから、かなり無理なお願いだということは自覚していた。


 しかし


「え、いいよ」


「へ?」


「ん?だからやってみるって」


「そ、そうか」


 交渉などは必要なく、ただ単純な承諾の言葉のみが交わされただけだった。


「ちなみに専門外じゃないのか?」


「おいおい、もしかして専門外のことを頼むことに申し訳なさを感じていたのかい?」


「ああ、そりゃそうだろ」


「この私を舐めないでくれたまえ」


 小春ちゃんは作業の手を止めて、バッと立ち上がった。


「たとえ私の技術に『専門』があったとしても、私の知的好奇心に『専門』はないのだよ」


「探究心の塊ってことかよ」


「当たり前だろう。特に今回に至っては、国内の研究者の誰もしたことがないアプローチでモンスターの生態について探求することになる。研究者として、これ以上にわくわくすることはないよ」


「そんなもんなのか」


「そんなものさ。とにかく任せてくれたまえ。と言いたいところだが」


「だが……?」


「もちろんセナ、君にも最大限協力してもらうよ」


 そういってワシワシと手を握ったり開いたりする小春ちゃん。


 あ、やべ


「君の身体の構造について興味があったんだ。大丈夫、ちょっと体組織をもらったり体液を採取したりするだけだから」


「あ、俺ちょっと用事思い出して~」


 踵を返した俺の目の前の扉が、大きな音を立てて自動で閉じる。

 なんなら追加で金属のシャッターが降りてきて、俺の退路を塞いだ。


「大丈夫、痛くはしないからね」


「ひえーっ!」


 俺の悲鳴がアステリア学園に響いた。



<=>



「しくしく、もうお婿に行けない」


「今の君ならお嫁だろうに」


「嫁には行きたくねぇ!」


「その外見なら引く手数多だろうね」


「だとしてもだ!」


 そんなこんなでなんやかんやがあって、俺は身体のいろいろな部分を採られて、ほぼ裸でベッドの上でシーツを掴んでいた。


「ほら、終わったよ」


「おう。それで結果は?」


「まあ待ち給えよ」


 そうしてなにかをシャーレに乗せて顕微鏡にセットする。

 壁掛けの大きなモニターをつけて、そこに見えているものを投影する。


「これが君の皮膚細胞だ。で、これをマナクリスタルの破片にくっつけると……」


 紫色の個体が細胞に近づいた瞬間。まるで喰らいつくかのように細胞が蠢き、マナクリスタルが飲み込まれた。


「つまりは、君の身体はマナクリスタルを食べ物だと認識している。皮膚細胞レベルでね」


「やっぱりか……。モンスターがあの日門の近くしか徘徊しなかった理由。そして今日まで大規模な侵攻をしてこなかった理由はこれか」


 マナクリスタルがある場所では無類の強さをみせるモンスターだが、逆に言えばマナクリスタルを定期的に摂取できるダンジョン内でしか生息できない。


「いいサンプルを手に入れたよ。これでノーベル賞は私のもの……」


「あ、公表はしないでくれ」


「えっ?そんなバカな。この大発見を世に公表するなって言うのかい」


「だからだよ」


 この研究には最大のリスクが潜んでいる。


「ダンジョン側にこちらと交流する意思がある者がいるってことがバレたら、事が事だ、国を揺るがす大事に発展しかねない」


「確かにそうだね。しかしそれは世紀の発見の前には些事でしか……」


「それ以上に、だ。その謎の存在と小春ちゃんが繋がりを持ったと思われる可能性がある」


「私の身を案じているのかい?」


「当たり前だ。そんなリスクは置かせない。だから、お願いしてる立場で申し訳ないが、公表するタイミングは考えてほしい」


「そうだね、わかったよ」


 わかってくれてなによりだ。

 この研究で小春ちゃんに不利益があってはいけない。


 これは俺のわがままなのだから。


「それじゃあちょっと1人にしてくれないかい。集中して取り組む必要性があるからね」


「わかった。でも晩御飯のときは呼ぶからな」


「余裕があったら行くよ」


 これ、来ないやつだな。


 そんなことを考えながら俺は小春ちゃんの部屋を後にした。



<=>



 それから三日三晩、小春ちゃんは姿を見せなかった。


 ご飯は部屋の外に置いてたら、しばらく立つと空の器が置かれていたから、食うことには食ってるらしいというのだけが、生きてることの証明だった。


 そしてその日、ようやく小春ちゃんは重たいドアを開けた。


「小春ちゃん!心配したぞ」


「思ったより難航してね」


「ということは……!」


「ああ、できたよ」


 そういって小さな瓶を取り出す。


「これが、マナ補充ドリンクだよ」


「名称まんまだな」


「わかりやすくて良いだろう?」


「まあ別に商品にするわけでもないし、名前なんてどうでもいいんだ」


 俺はドリンクを受け取って、中の液体を観察してみた。

 といっても透明の紫色の液体ということくらいしかわからないが。


「さあ、本当に出来たか試してくれるかい?」


「……俺が飲むのか」


「君が飲んで問題ないことを確認してからが良いと思うんだよ」


「うーん、まあそうか。じゃあ飲むぞ」


 蓋を開けて、中身をのぞきこむ。得体のしれぬ液体がゆらゆらと揺れている。


 意を決してぐびっと飲み込んだ。


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