第15話 会場に降り立つ
「わぁ、ここが会場かぁ」
「早く行こ!遅れちゃうよ〜」
女の子たちが手を繋いで俺の側を駆け抜けていった。
探索者協会認定ランク3昇格試験。俺はその会場に立っていた。
「見てあの子」
「かわい〜い、何かのコスプレ?」
そう、創作コスプレとでも言わんばかりの衣装を身にまとって。
「小春ちゃん、ほんとにこの服である意味があるのかよ……」
遠くでサムズアップしているであろう小春ちゃんに思いを馳せながら、俺は立っていた。
格好は簡単に言えば軍服ロリータと言うやつで、ロリータ衣装に覆い被さった重厚なマントが存在感を放つ。
これが、小春ちゃん製最新鋭の機能服じゃなければ今すぐ脱ぎ捨てていたところだ。
「ええい、ここまできたんだからこれで行くっきゃない!」
踏ん切りをつけて、俺は受付の方へと歩みを進めた。
「受付、お願いします」
「あらかわいいお客さんね。お帰りはあちらよ」
「へ?」
「探索者というのはお嬢ちゃんのような子がするようなものじゃなくて、もっと泥臭くて恐ろしいことなのよ」
受付のおばちゃんは、メガネを光らせながら言った。
「で、でも」
「お嬢ちゃんなら何にでもなれるわよ。わざわざ探索者なんて道を選ばなくてもね」
「……」
俺は思わず口を噤んでしまった。
そして暫く考えて、辺りを見回した。
「御託はいい。早く受付をしてくれないか」
俺の口調に驚いたのか、受付のおばちゃんはメガネの位置を調整する。
「アステリア学園1年、セナ。学生証と必要書類はここ。はい」
「……お嬢ちゃん、やるわね」
小声でそう囁いてきたおばちゃんに感謝を述べながら、俺は受付を終えた。
装備をチェックしながら時間を過ごしつつ、周りを観察する。
緊張してるもの。受付で言われたことが心に残ってるもの。友達と騒ぐもの。
そして、俺たちを囲むように配置された、フレンドリーそうな表情のスタッフたち。
そう。すでに会場に着いた時点から、試験は始まっている。
スタッフの一人と目が合った。すると自然を装って目線を外される。やはり、見られていると思わせないように振る舞っている。
「うーん、もし、だとしたら」
ダンジョン内での行動以外に評価点があるとなると、大変困ったことになった。
なんてったって、俺は今ふざけた衣装で来てしまっているからだ。
決してダンジョンをなめてるわけではなく、実際、小春ちゃんによる手の込んだ戦闘装束なわけだが、傍から見れば、たわけた服の幼女が冷やかしに来たようにしか見えない。
「まあ、なるようになれ、だな」
細かいことは気にしないことにした。たとえマイナスからの評価でも、ダンジョン内で覆してみせるさ。
「さあどーんとこーい」
そんな事を呟きながら、集合時間を待った。
<=>
「よろ〜」
「お、おねがいします!」
「お、おう。こちらこそよろしく」
ダンジョン内試験は3人1組。その結果組むことになったのがこの2人だ。
「うちは由希」
「私はすずかです」
「俺はセナ。この際敬称は抜きで行こう」
しかし今回からの試験には、ランク4の引率がつくことになったらしい。
「俺もか?俺はアキ。季節の秋と書いてアキだ」
帯同するランク4の男は、紺色のフード付きマントで身体を覆い隠しており、得物も見えない。マントに変な膨らみもないことから、暗器使いだと目星をつける。
「あまり詮索するな」
「ごめんごめん、つい癖で」
一時的とはいえ背中を預け合う仲間に向ける目ではなかったか。反省反省。
「それじゃ、簡単に説明するぞ。3層のフロアボスまでたどり着いて帰ってくればよし。フロアボスは倒さなくても良い」
「なんで倒さなくても良いの?」
「パーティはランダムで組まれる。対大型戦が苦手な3人が集まったパーティは悲惨だろ」
「なるほどねぇ」
「は、はい!私からもいいですか?」
「なんだ」
「秋さんは戦闘に参加しないってことでいいんですよね?」
「ああ。危なくならない限りは手は出さない。ただ、手を出し渋るなとも言われている」
「なにかあってからじゃ遅いですもんね……」
秋は言うことは全部言ったと言わんばかりに、それ以来口を閉ざしてしまった。
「よし、とりあえず行こうか」
「待って。戦い方を確認しない?」
由希ちゃんの指摘に思わず足を止める。
「確かにそうだな。俺はコレだ」
そう言ってマントの裾から手を出す。
手には、小春ちゃん特性の手甲から進化した籠手がはめられている。
「戦闘スタイルも近接だな。二人は?」
「うちは短剣。おなじく近接」
「わ、私はレイピアですけど……」
「だけど?」
「えっと、その。私……異能持ちです」
「まじか」
「すご~」
「戦闘中に近くにいてくれれば、多少ですが筋力などが向上するみたいです」
まじかよ。ただの女の子だと思ってたらとんでもない異能持ちだった。
「ああ、お前か。報告にあったのは」
秋が口を開く。
「報告?」
「ああ。異能持ちが1人いると聞いていたが、運がいいなお前ら」
そりゃそうだ。どう考えたって有利に試験を進められる。
「ラッキーなのはいいことだ。よし、じゃあ進もうぜ」
俺達は話を終えて、門を通り抜けた。




