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TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?  作者: 畑渚


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経緯とか話します

現代ダンジョン×TS美少女×機甲=自由奔放!

『第一次ダンジョン事変』


 その騒動は後にそう呼ばれることとなる。


「なんだあの化け物は!」


「も、モンスター!?」


 突如現れた門から、のっそりとソレらは現れた。


 彼らが初めにしたことは――




――虐殺だった。


「に、逃げて!」


「痛い、痛いよぉ」


「た、たすけ……」


 門から次々と出てくるモンスターたちは、手当たり次第に人々を殴り、切り、殺していった。


「……やべぇ」


 俺は、そんな事変に巻き込まれた一人だった。


 そんなに不運という不運にあってこなかった人生だったが、それも全部この時のために溜め込んでいたとすれば案外頷ける。


「ははっ、まったく最悪な最期だぜ」


 意識が朦朧としながらもそう呟く。



 もはや、痛みは感じなかった。



 腹部に空いた貫通孔に風がしみる。腹部からもろびでた内臓が、プルプル震えている。


「は?」


 突然、ガシリと足をつかまれる。人ではない、モンスターにだ。


「おいおいまてまて」


 もちろん、そんな静止を聞いてくれる奴らではない。

 人外の力によって軽々と、引き摺られるようにして運ばれる。


 俺は最後に、門を通る浮遊感を感じながら、薄れていく意識に終止符を打った。



<=>



 次に目を覚ましたのは――




――目を覚ました?あの致命傷だった俺が?


 バタリと起き上がると、そこは暗い空間だった。いや、正確には真っ暗ではない。うっすら光る鉱石のようなもので、数メートルは先が見える。しかしそれ以降が靄がかかっているかのように不思議と見えない。



 まるでダンジョンだな。



 ゲーマーでもあった俺はそう感想を抱いた。いや、最後の記憶を辿れば俺は門のなかに入っていたし、本当にダンジョンなのかもしれない。


 だとしたら俺はなぜ起きたんだ?


 その時、はらりと髪が降りてきて視界にかかる。

 はて、俺はこんなにロン毛だっただろうか。そもそも銀髪ではなかったはずだが……?


 俺は顔に手を当て、それから胸に手を当てる。



 フニッ



 小さい。小さいが確かに、俺ではないものが有る。


 そのまま手は丸みを帯びた腹を撫で、そしてさらに下に。


「あっ……」


 ない。俺のモノはそこにはなかった。


「ど、どういうことだ……?」


 その声すら、俺のものではなかった。

 そこに前までの低音の響きはなく、透明感のある高音のウィスパーボイスがあるだけだった。


 あたりを見回しても、鏡のようなものはない。


 自分がどうなっているのかを見る必要がある。

 その一心で俺は、ダンジョンを進んでみることにした。



<=>



 ペタン、ペッタン


 擬音にするならそう表現するだろう音を出しながら、目の前をモンスターが立ちふさがってきた。

 俺はこいつをスライムと名付けた。


「しかし、どうやって戦おう」


 実はこの身体はハイスペックでしたという可能性もあるが、そうでなかった時にエロ同人より酷い目にあってしまいそうなので期待しないことにしてた。


 一つこの身体になってから感じていた違和感。それにかけてみるほうが有益に感じた。


「こいっ!もう一つの身体!」


 本能に従って、右手を前に掲げる。すると目の前に文様のついた円が現れる。その幾何学模様は青白く光っており、それが常ならぬ力だと示しているかのようだった。


 腕が魔法陣に吸い込まれ、思わず引き戻す。


 しかしすでに腕は変化していた。

 少女らしからぬ重厚な手甲。青白い線が所々を駆け巡っており、その重々しさとは裏腹に、指の動きに合わせて自在に動く。


 あとはもう身体が理解していた。


 新たに下に現れた魔法陣に右足を突っ込み、柔らかな足は冷たい金属とも鉱石とも思える感触に包まれる。


 慣れればどうってことはない。


 左足と左手も同様に装着する。すると増殖する細胞のようにアーマーが展開され、胸と背中までつつみ込んだ。胸の中心のリアクターが煌々と光り輝き、機甲の重みを打ち消してくれる。


 最後の魔法陣に手を突っ込み、仮面に似たデバイスを取り出す。それを顔に当てれば、先ほどと同じ要領で頭をつつみ込んだ。


「これが……俺の力?」


 脳内分泌系すらコントロールされてるかのように、万能感と戦闘欲が沸き立ってくる。


 視点もだいぶ高くなったが、機甲は俺専用のようにカスタマイズされており、歩行に支障はない。


「じゃあ、始めますか」


 俺は攻撃の基本。パンチを繰り出してみる。


 瞬間、拳が光り輝き炎をまとう。ふくらはぎと腕についたブースターが唸り火を吹く。


「ははっマジかよ」


 目の前のスライムは、許容量以上の衝撃を受け核が砕け散った。


 残ったのは、スライムだったものの断片と、目を光り輝かせている俺の姿だけだった。


「と、とりあえず進むか」


 俺はその場を後にした。後ろで光る何かに気づかずに。



<=>



「やばいものみたっす」


 私は思わずそう呟いた。コンタクト型デバイスに、加速するコメント欄が映し出される。


〈かっけーーー!〉

〈あのスライムをワンパン?しかも拳で!?〉

〈ランク5の芸当だったが、あんなのいたか!?〉


「皆さん落ち着くっす。私は高ランク探索者に詳しいっすけど、登録されてる探索者にあんなのはいなかったっす」


 私はたらりと汗を流す。これは間違いなく特大スクープだ。間違いなくこの切り抜き動画はバズる。


〈俺あいつの正体知ってるよ〉

〈は?マジ?〉

〈嘘乙〉


「まあまあみんな落ち着くっす。私も、というか皆もわかってるはずっす」


 妖しい閃光を放つ機甲。そこまで来てピンと来ない探索者はいない。


「リビングアーマーの一種っすよね。でもそれだと、『ダンジョンのモンスター同士は争わない』という原則に反するっす」


 モンスター同士は争わない。たとえ縄張りがかぶったとしても、異種同士で結託して人間を殺しに来るのである。


「私は後を追うっすよ。切り抜き班、後は任せるっす」


 そう言って私は、あの機甲の後を追った。



<=>



「か、快適だ」


 俺はあの後も出てくる多種多様なモンスターをちぎっては投げ、燃きつくし、空を駆けてキックをお見舞する。


 一つ分かったのは、この身体はこの機甲を動かすために作られたということだ。でないとこの本能的な操作が成り立たない。


「さてっと」


 一周してみて気づいたことが二つ。


 一つは、上に行く道と下に行く道があるということ。下に行く道は俺が目覚めた部屋の近くに、上に行く道は最も離れたところにあった。


 二つ目だが、どうやら俺は『ここの階層のボス』として生まれた可能性があること。

 先ほどの道の話もそうだが、どうにも目覚めた部屋がボス部屋らしい立地と装飾をしている。広い部屋の奥に祭壇があり、そのうえで俺が目覚めた。それにこの戦闘能力もボスならば説明がつく。


 じゃあ俺はダンジョンから出られないの?と言えば答えはノーだろう。だって俺が死んだときダンジョンのモンスターたちが出てきてたもんな。


 まあとにかく、方針は決まった。


「地上に何とか出る」


 外に出れば鏡もあるだろうし、自分の状況も分かる。


「よし、行こう!」


 そう一歩を踏み出した瞬間――


「ぎゃーマズイっす!」


 道の奥から悲鳴が聞こえてきた。前途多難ってやつかにゃ?



<=>



 駆けつけるとそこには、倒れ伏した少女と、棍棒を振り上げるモンスターの姿があった。


 まずい、あのままだと当たる


 その瞬間、俺は閃光となった。速攻で機甲を展開し、勢いよく振り下ろされた棍棒を片手で受け止める。


「無事か!?」


「た、助かった?」


「待ってろ、すぐに片付ける」


 棍棒を押しのけ距離を取る。こういうのは助走が大事だからな。


 拳を突き出しながらブースターを吹かす。超常的な加速が機甲を軋ませる。

 そして一瞬にして取った距離は、ゼロとなった。


「ゴポォ」


 モンスターが口から黒い液体を吐く。うまくとどめを刺せたようだ。


「い、一撃で魔核を貫いたっすか!?」


「無事か少女」


「無事っす。ホント助かったっす」


 少女は立ち上がって何度もペコペコと頭を下げる。


「しかし、一体何者っすか。モンスターを襲うモンスターなんて」


「ああ、モンスターじゃないからな俺」


「え?どういうことっすか」


「……悪い、ソレ、消してから話さないか?」


 俺は自分の胸元をトントンとする。

 少女はしばらく固まった後に、分かったっすと胸元についたカメラの電源を消した。


「これでいいっすか」


「ああ、ありがとう」


「こっちこそ無許可で撮ってて申し訳ないっす。それで、モンスターじゃないというのは?」


「実はかくかくしかじかで――」


 俺は、意識を失ったときから目が覚めたまでを説明した。


「な……なんのアニメっすかそれ」


「ところがどっこい、ほんとに起きてることなんだ」


「じゃあリビングアーマーが転生した姿ということっすか?」


「ああ、これは本体じゃなくて――」


 俺は機甲を解除する。どこからともなく風が吹き込み、銀髪がたなびく。


「こっちが一応、今の俺の身体になるのかな」


「か」


「か?」


「かわいいぃぃぃぃ!!」


「ヒッ」


 少女からガシリと肩を組まれ思わず声が出た。


「超絶美少女じゃないですか!あたりっすよ当たり!大当たりっす!」


「そ、そんなにかな」


「そのテレ顔!致死級っす!私が隣にいるの恥ずかしいっす!」


「そうかな、君も十分かわいいけど」


「うぐっ、今日が私の命日っすか」


「またまた冗談を」


「まあその容姿は置いといてっすね。どうするんすか、色々」


「えっ?色々って」


「お金とか家とかっすよ」


「えっ別に生前の家が」


「あっ気づいてないっすよね。失礼したっす」


「気づいてない……?何に?」


「ダンジョンが現れた日、つまり第一次ダンジョン事変から30年経ってるっす。アニバーサリーっす」


「へ、へぇ。第一次ダンジョン事変っていうのかあの事件……30年!?」


「はいっす。だから家も金もたぶんないっす」


「そんな〜」


 別に財産があったわけでもないが、それでもあったもんがなくなれば悲鳴を上げたくもなる。


「じゃあ住所不定の一文無しってこと……?」


「そうなるっすね」


「なんだそのハードモード!ふざけるなぁ!バカヤロォ!」


「まぁまぁ、落ち着くっす。一つ、解決策があるっすよ」


 少女はとんと胸を叩いて次のように言った。


「私についてくれば寝床と多少の金銭は保障するっす」


「その言葉が聞きたかった!」


 そうして俺は、居候として新たな人生を歩み始めたのだった。


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