骸骨として転生した俺は体を探し求める
(ここは、どこだ……)
目が覚めたら、本来あるべきはずの少し薄汚れた白い天井が見えなかった。
代わりに、抜けるような青空が目に入ってくる。
手をついて立ちあがろうとした時に、異変に気づく。
感触がおかしい。
地面に置いた手から伝わる感触に、弾力感が全くないのだ。
立ち上がってその手を見た途端、本日二度目の戸惑いの表情が目に浮かんだ。
肉のまとわれていない、正真正銘の骨だったからである。
(なんだ、これは……?!)
立ち上がって周りを見渡すと、右手から川のせせらぎのような音が聞こえてくる。
歩く足も、どうやら骨のようらしく、歩くたびにカツン、カツンと石を踏む音が聞こえる。
少し歩くと、小さな川に到着した。
蛇行する川の一部に、配置された岩場の関係で水面が凪いでいて、空を浮かぶ雲を映し出している場所がある。
そこに、自らの顔を差し出す。
(うぉっ!)
そこに映し出されたのは、まごうことなき骸骨。
普通の骸骨と違うのは、目の奥に小さく青白い炎が燃えていることだ。
さらに立ち上がり全身を映してみると、黒い外套を着ているようで、フードを被れば遠目には骸骨であることにすぐには気づかれることはなさそうだ。
非現実を受け入れている途中だったが、突然周りに複数の気配が現れた。
そしてゴソゴソと茂みをかき分けて、リスに似た、しかし頭にツノのある動物が現れた。
リスたちは、ツノに風のようなものを纏わせると、一気に襲ってきた。
ほぼ無意識に手を振るうと、その手から炎でできたカッターのようなものが発動して、襲ってきたリスたちを薙ぎ倒した。
(これは、魔法……?)
ようやく現実を受け入れ始めると同時に、なんとかこの世界で生き延びなければならないという気持ちが湧き上がってきた。
まずは失われた体を取り戻すところから始めなければ。
そう決心すると、骸骨男は立ち上がり、川下に目を凝らした。
川を下れば、きっと集落がある。まずはそこで情報収集だ。
そして骸骨男はある生き始めた。失われた自分の体を取り戻すために……
――――
正体不明の骸骨男が東の森の中で目を覚ましたのと同時に、骨がなくぐにゃぐにゃとした細目で陽気なスライムが西の洞窟の奥深くに転生した件は、別のようので別ではないお話、かもしれません。