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家族と婚約者の愛を諦めたらシルバームーンに幸せが届けられました  作者: ミカン♬


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4 婚約者/ナウファル国第二王子殿下

 レティーナとラミネルは赤子の時からの婚約者である。ここナウファル国は神への信仰が厚く、行事の際には神殿で神に〈伺い〉を立てることが多い。


 王家に第二王子のラミネルが誕生すると直ぐに婚約者の〈伺い〉が行われ<神託>でライナー侯爵令嬢レティーナとの婚約が決定した。


 この<伺い>は互いの家の発展と利益が目的だ。本人同士の相性や気持ちは考慮されない。完全な政略婚である。なので婚姻後に離縁した夫婦も少なからず存在する。


 そういう意味でも二人は仲の良い婚約者同士とは決して言えない。誰が見てもラミネルはミシュベルの方を気に入っている。


 母のイザベルがもっと深く考慮していればレティーナとラミネルは仲の良い婚約者同士になっていたかもしれない。


 イザベルは王太子妃とも親交が深くレティーナを連れて登城する際は必ずミシュベルを伴った。それで三人は赤子の時からの幼馴染なのである。妹は姉と同じ立場だと思って成長した。そして姉の婚約者である美しい王子様に恋をしたのだ。


 一途なミシュベルは恋心を押えられず常にラミネル殿下へ熱い想いを伝え続けている。それが気に入らないレティーナは妹を叱り泣かせる。するとラミネルがミシュベルを庇ってレティーナを不機嫌にさせる。ずっとそれが繰り返されてきた。


 王子様は自分に好意を向けるミシュベルを無下にはできない。それに恋愛を深く追及するには三人ともまだ幼過ぎた。

 


「お姉さま、愛想良くしなさいってお母様に言われましたよね。また叱られますよ?」


 急に矛先を向けられてレティーナはいつものように『うるさいわね、ペチャペチャ喋って』と言い返しそうになったのをグッと抑えた。


 これに意外な顔をしたのはラミネルだ。いつもなら怒って妹を泣かすのに婚約者はすました顔をしている。

 

「レティーナどうしたの? 今日は静かだね」

「もう妹に注意するのは疲れました。何度言っても分かってくれませんから」

 妹の頭の中は綿飴のように甘くてフワフワなのだ。


「天真爛漫なのがミシュの長所だよ」

「そうですね」


「ネル様、天真爛漫ってなんですか?」

「可愛いってことだよ」


 嬉しそうに微笑んだミシュベルは母に似て本当に美しい。自分も【鍾愛神の加護】が欲しかったとレティーナは思うのだった。



 お茶会は終わってラミネルを見送るとまた妹のおしゃべりが始まった。


「お母さま、ネル様が私を可愛いと言ってくれました。お姉さまはお茶会が疲れたそうです」

「まぁ、そんなことを言ったの?」


 イザベルはレティーナを冷ややかに睨みつける。


「いえ、違います」

 妹の勘違いを恨めしく思った。妹に悪気はないはずだ、姉の発言内容を正しく理解できないだけなのだ。


「嘘ではないです。お姉さまは言いました!」

「どうしてこんな子が殿下の婚約者に選ばれたのかしら。ミシュだったら殿下も喜ばれたのに」

「はい、ネル様は私のほうが良いって言ってくれます」


「はぁ~ミシュはお嫁に出せないの。ずっとお母様と一緒にこの家で暮らすのよ」

「そんな……」

「素敵なお婿さんを見つけてあげますからね」

「嫌です! ネル様がいいです!」


 シクシクと泣きだしたミシュベルを抱きしめるイザベル。甘やかされてなんでも手に入るミシュベルだけどネル様だけは自分の物にはならない。

 


「お先に失礼します」

 レティーナは母親がまた小言を言う前にその場を離れようとした。だがイザベルに呼び止められてしまった。


「あの手紙、私が書いたと思ってるみたいね。私は知らないわ。お前、誰かに恨まれているんじゃなくて? それとも父親の気を引く自作自演かしら?」


「違います! 本当に部屋に置いてあったんです」

「ふん、どうだか」


「お母さま手紙ってなんですか?」

「何でもないの。行きましょう」


 どうやら本当にイザベルは知らないようだ。では誰が書いたのか。自分を恨む誰かが夜中に部屋に忍び込み、手紙を置いて行ったと考えるとレティーナはゾッとした。


 部屋に戻ってモナに話したが「私は奥様だと思います。他に思い当たる人はいません」と決めつけた。


「でも私が怒鳴ったり物を投げ付けた使用人とか・・・枕を破って何度も部屋を羽毛だらけにしたから……」


「クッションや枕を投げた程度で恨んだりしません。部屋の掃除は私達の仕事です。お嬢様、手紙のことはもう忘れた方がいいですよ」


「うん、そうするわ」


 そう言ったもののレティーナの頭にはずっと手紙の内容が頭から離れずにいた。


読んで頂いて有難うございました。

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