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家族と婚約者の愛を諦めたらシルバームーンに幸せが届けられました  作者: ミカン♬


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28 新天地

 流刑で海に出た船は吸い寄せられるように小さな島に流れ着いた。そこは多数の舟形が打ち上げられ海岸には光石が散らばって辺りを明るくしていた。


 レティーナの魔法で氷の橋を作って島に渡ると二人は流木に腰を下ろし見つめ合った。


「シルバームーンの日は潮の流れが変化して外海には出ないんだ。舟形はここに辿り着くんだよ」


「ここに月神様の門があるのですか?」


「ここの浜辺が門かもしれない。手紙はここで海に沈んでしまう。それを月神が拾ってくれるんだろう」


 島を見渡すと無人島のようで二人の後方から数メートル奥は木々が密集した真っ暗な一帯が広がっていた。


「怖くなった?」

「ルナフィス様と一緒だから平気です」


「危険な島では無いよ。後日ここに平民の船が来て舟形や光石を回収するんだよ。それを神殿は買い取るんだ」


「ルナフィス様はここを知っていたのですね」


「実際来たのは初めてだ。魔法で影を飛ばして訪れたことはある。ここになら流されてもいいと思って刑を受け入れたんだ。父上もこの島を知っていたのだろう。それでも王家に切り捨てられた事には変わりないが」


 話を聞いてレティーナは彼が終始落ち着いていた理由が分かった。


「それなら教えて下さっても良かったと思いますけど?」

「ここまで来れば君は怖がって後悔するかもしれないと思ったんだ。そうしたら公爵の元に戻してあげようと思った」


「私は流刑になったんですよ? もう戻れません。お父様には置手紙を残しました。お別れできなかったのは残念ですけど、後悔はしていません」


 レティーナの決心は固くその瞳は真剣だった。


「ありがとうレティーナ、一緒に行こう新天地に」

「ええ、どこにでも一緒に行きます」


 新天地とは何処でどうやって行くというのか。レティーナは疑問だったがルナフィスには考えがあるのだろうと思った。


 ルナフィスにしても諦めていた恋が叶い、未だ信じられない気持ちだった。


「影を通じて君を見ていた。バルコニーでいつも月を見上げていたね」

「ルナフィス様も同じ月を見ていると思って見上げていました」


 熱く見つめ合う二人はどちらからともなくキスを交わした。すると後ろで「コホン、ゲホン」と誰かが咳払いをして「もういいですかな?」と聞き慣れた声にレティーナは思わず立ち上がった。


「お父様!」

「無粋だな公爵」


「置手紙でお別れなんて寂しいじゃないかレティーナ、父は悲しいよ」

「ごめんなさい。でもどうしてここに」

「それは私が聞きたいよ。殿下、これはどういうことですか。娘が一緒だなんて聞いていませんが」


「隠れて聞いていただろう? レティーナも流刑になったんだ」

「だからなんで流刑なんかになったのですか」


 泣きそうな公爵は説明を聞くと「レミアにも君と同じ勇気があれば最初から私達は親子でいられたのに。流刑なんかにならなくても殿下と婚姻を結ばせてやれたはずだ」とレティーナを抱きしめた。


「本当に殿下に付いて行くんだな?」

「はい」


 グナード公爵は随分前から船を出向させてシルバームーンに備えていた。密かにルナフィスを国外に逃がそうとしていたのだ。


「意地悪ね。教えてくれたら私はお父様と一緒にここに来たのに」

「秘密の共有は少ない方が安全だ。レティーナはラミネル殿下との婚約を受ける気だったじゃないか」

「義務だと思ってたもの。でもルナフィス様の流刑が決定して耐えられなくなったの」


「仕方ない。殿下、娘をお願いします」

「ああ、こちらこそ頼むよ義父上」


「義父上は早すぎませんか?」

 公爵は剣を抜くとルナフィスに向かって振り下ろした。


「きゃぁああ!!!」

 レティーナの叫びと共にルナフィスに填められていた魔封じの首輪がポトリと砂浜に落ちた。


「さすがソードマスターだな公爵、いい腕だ」


「お父様! 心臓が止まりそうでした」

「はは、ちょっとくらい切れてもレティーナが治療すれば大丈夫だ」

「もう!」


「小舟は破壊しておこう」

 ルナフィスが指を鳴らすと二人が乗って来た船は木っ端みじんに砕け散った。



 島の裏側には公爵が所有する魔道船が泊められており、その雄大さにレティーナは感嘆した。


「凄い、これがお父様の船……」

「そうだ、海賊も魔物も恐れるグナード家の魔導船だ」


 三人が乗り込むと船は汽笛を鳴らし新天地を目指して北に進路を取った。


 

読んで頂いて有難うございました。

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