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家族と婚約者の愛を諦めたらシルバームーンに幸せが届けられました  作者: ミカン♬


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17 聖女ミシュベル

 浮かんでいたミシュベルの体はラミネルの腕の中にポスンと落ちて来た。


「どうなってるんだ? ミシュ、ミシュ、目を開けるんだ」


 レティーナが妹を診ると呼吸は安定して眠っているように見えた。

「毒が消えています。殿下右手を見て下さい!」


 ミシュベルの右手の甲に【印】が浮かんでいる。両手に加護の印が出るのは珍しい。

「早く妹を治療師の元へ運んで下さい」

「そうだな」


 ミシュベルを抱いて走り去る婚約者の後ろ姿にやはりラミネルは妹を愛しているのだとレティーナは思った。

 以前のような嫉妬は感じない、一途にラミネルを慕うミシュベルを憎いとも思わなかった。できればあの二人が結ばれて幸福になればいいとさえ思えた。


(私が婚約者で本当にいいのかしら。殿下を心から慕っているのはミシュベルなのに)

 レティーナの心に小さな罪悪感が芽生えた。


 倒れたミシュベルの様子が気になって宮殿に向かおうとすると誰かが叫んだ。


「あれは、聖女様の誕生ではないのか?」

「そうだ聖女様だ!」


 この日、聖なる印が現れてミシュベルは聖女となった。


 狙われたのはミシュベルだと思われた。ラミネルはケーキ類は苦手。ケーキが好物の妹は我先にと食べていた。だがレティーナに犯人の動機がさっぱり分からない。


 命を狙ったが皮肉にも毒がきっかけで聖女になってしまった。今後ミシュベルにはいかなる毒も呪いも効果は無い。その身は神殿の預かりとなって毎日神に祈りを捧げることになるだろう。



 ラミネルの部屋、彼のベッドにミシュベルは寝かされてあった。


「ミシュはどうやら本当に聖女になったみたいだ。眠っているだけで心配ないそうだ」

「そう、良かったわ」


 ソファーでレティーナも休んでいるとシオンとイザベルが駆け付けた。


「ミシュ! ぁぁ……私の娘が聖女になったのよ!」

 イザベルは歓喜して眠っているミシュベルを抱きしめた。そしてレティーナがいるのを見つけると「出ていきなさい、ミシュが汚れるわ! 毒はお前の仕業でしょう!」と怒鳴って周りを驚かせた。


 シオンが慌ててレティーナを部屋の外に連れ出して謝罪する。


「すまない、妻は興奮しているんだ。許してやってくれ」

「そうやって庇ってばかりね、お父様は。だからお母様は変わらないのよ」

「あれは狂ってる。そう思って欲しい」

「そうします」


 母親に全く未練はなかった。もう父親にも期待はしない。

 レティーナにとって家族と呼べるのは公爵家の人達だけ。血の繋がりはないが心は繋がっているのだから。



 ──綿飴令嬢が聖女になった。そのニュースは瞬く間に国内中を駆け巡って大騒ぎになっていた。聖女が国に存在するだけでその国は豊かになると言われている。


 誰もが喜んでいる中でミシュベル本人だけが嘆いていた。


 聖女になった当初彼女は喜んだ。

『私はお姉さまより偉くなったのね? 勉強していない私が頑張ったお姉さまより偉くなった。凄いわ』


 優越感に浸り大喜びしていたのに。


 将来ミシュベルは王族に嫁ぐことになった。でも大好きなネル様は姉の婚約者。そこで第一王子殿下ルナフィスと婚姻を結ぶことになったと聞かされた。彼女は白髪の王子様は嘘つきの悪い人だと認識している。


『ネルさまがいいの! ネルさまがいい! ダメなら聖女になんかならない』

 

 今の平和で豊かな王国に聖女は特に必要はない。


 同じくルナフィスも必要のない王子だった。国民や貴族達には難病を抱えて税金で贅沢に暮らしているだけの王子様と思われている。


 王家はそこで第一王子ルナフィスを聖女の伴侶にして彼の名誉を回復したいと考えた。王族に不要な者など存在しないとアピールできる。


 反対に神殿側はそうはいかなかった。聖女は神殿の力を誇示できる大切な象徴。聖女が神殿で祈りを捧げれば平民も貴族もこぞって寄付を増やすはずだ。

 第二王子が王太子になるのは確実。聖女にはラミネル殿下に嫁いでもらって王家とは力関係の均衡を図りたい。


 ミシュベルをラミネルに嫁がせたいと思っているのは神殿だけでは無かった。イザベルも可愛い娘の為に出来ることを画策し始めていた。


読んで頂いて有難うございました。

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