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家族と婚約者の愛を諦めたらシルバームーンに幸せが届けられました  作者: ミカン♬


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16/36

16 レティーナ16歳

 温かな日差しの中、薔薇の香る庭園でレティーナとラミネルのお茶会が準備されていた。本日は城で二人の婚約式の予定を話し合って、ついさっき終わったところだった。


 庭園に来ると魔力が暴走した日を思い出す。けど公爵家で平和に暮らしたお陰でレティーナの精神は安定を取り戻していた。

 5年の間にオーサーとモナは結婚した。契約婚であるため淡々とした夫婦に見えるが互いを信頼しているのは伝わってくる。レティーナは二人には本物の夫婦になって欲しいと願っている。


 王子妃教育の時はモナが同席して一緒に勉強したので楽しい時間を過ごせた。魔法の訓練も余念が無く腕を上げるとジェルドと共に公爵の領地の害獣や魔物討伐にも参加した。日照りが続くと雨を降らせたり、ケガや毒も処置できてレティーナは領民からも慕われた。


 テイラー侯爵家には一度も帰っていない。時々シオンが訪ねて来るだけだ。


 ラミネルが嫌がって禁止していたのでルナフィスには会えないでいた。ジェルドを通して手紙のやり取りはしていたが二人の再会は叶わなかった。


 月を見ては彼を思い出し、雨が降ると会いたくなった。


 <間もなくラミネルと婚約だね。手紙のやり取りも終わりにしよう>

 それがルナフィスからの最後の手紙だった。




「ネルさま~ お姉さま~」

 お茶の席には輝くばかりの美少女に成長した妹が待っていた。


 出迎えたミシュベルにラミネルは眩しそうに微笑む。


 過去にラミネルとお茶の時間が再開すると決まった時、レティーナはミシュベルの同席を希望した。婚約者と二人っきりは気まずかったのだ。思い返せば王子妃教育の後二人で過ごした時間は全然楽しくなかった。まだ妹のおしゃべりを聞いている方がマシだと思ったのだ。


 今日もミシュベルのお喋りを聞き流しながらレティーナは静かにお茶を飲んでいた。


 そんな彼女にラミネルは熱い視線を送る。


 婚約式迎えて祝いのパーティが開かれればレティーナは社交界デビューを果たし貴族令嬢達の頂点に立つ。凛として美しく成長した婚約者は今やラミネルの自慢だった。


 しかしラミネルには不満があった。婚約式の準備でレティーナと二人っきりになる機会が増えたのに、彼女は口付けはおろか抱擁すら避けるのだ。


 今だって全然ラミネルの方を見ない。ずっと彼女を見ていても目が合わないのだ。レティーナはラミネルを愛しているはずだった。子供の頃はミシュベルがベタベタすると癇癪を起こしていた。

 今なら彼は理解できる。レティーナは嫉妬していたのだと。


 彼は王子妃教育の時に自分が吐いた暴言を彼女はまだ根に持っているのだと思っていた。


 (婚約式が終われば1年後には婚姻だ。何も心配はない、大丈夫だ)

 そう思い込んでも漠然と不安だった。



「ねぇ聞いてる? ネルさま?」

「うん? 聞いてるよ。婚約式のドレスがどうしたの?」


「私もお姉さまと同じのがいいの」

「ミシュにはピンクが似合うから、同じのは止めた方が良いよ」


「お姉さまの銀色の髪に白いドレスは似合わないわ」

「そうかな、何でも似合うと思うよ」


 ラミネルが適当に聞き流しているのを感じてミシュベルはプッと頬を膨らませた。行儀が悪いがそれもまた可愛いと笑いながらラミネルは指でミシュベルの頬をつついた。



 給仕がケーキを切り分けて皿に運ぶとミシュベルは手を叩いて喜んだ。


「わぁ~ イチゴケーキ! 美味しそう!」

「僕のも食べていいよ」

 ご機嫌なミシュベルにラミネルは自分のケーキも勧めた。


 もうすぐ15歳だと言うのにミシュベルは相変わらずマナー無視で騒がしい。今も口いっぱいにケーキを頬張り喉に詰まらせ水を飲んで流し込んでいる。


「レティーナも食べるといいよ」

「はい、有難うございます」

 ラミネルの許可が出てレティーナはケーキを口に運んだ。が、飲み込む前に異変を感じて直ぐに吐き出した。


「ミシュベル! 毒だわ!」

 叫んでも既に遅く、妹は床に倒れ吐血した。


「解毒を! レティーナ魔法で早く!」

 ラミネルが膝を着いてミシュベルを抱き起こしたがレティーナも崩れるように椅子から倒れ落ちた。


「レティーナ!」

 ラミネルが立ち上がろうとするとミシュベルは彼の上着を離すまいと握りしめた。



 レティーナは体がフラ付いたが意識ははっきりしていたので体内に入り込んだ毒を魔法で排出した。


「ミシュ、ミシュ! しっかりしろ死ぬな!」


(早くミシュベルを助けないと!)

 フラ付く体に力を入れてレティーナが立ち上がるとミシュベルに信じられない異変が起こった。


 体がフワリと宙に浮かぶと真っ白な光を放ったのだ。



読んで頂いて有難うございました。

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