まさか
【人物紹介】
直人 なおと。19歳。大学1年。根が真面目。初デートは焼肉でテンパる。
聡志 さとし。52歳。係長。美人局の経験あり。ガラケー打ち。頬にキスで満足。
義人 よしと。24歳。社会人2年目。現在休職中。精神疾患。
部下 ぶか。28歳。聡志の部下。アプリを紹介した。ツッコミ役。
アプリを初めてすぐに良い出会いというのは稀。いくらなんでも都合よすぎやしないか。
聡志「はぁ」
職場の喫煙室でスマホを眺める。
部下「係長どうしたんです?ため息なんてついて」
聡志「いや、なんかさ。可愛かったんだよね」
部下「それって恋?乙女か!」
聡志「それなー。久しぶりに胸に刺さるというか」
部下「まさか、19歳の子ですか?」
聡志「。。。」
部下「引くわー。犯罪じゃないですか」
聡志「だよなー」
部下「どこまで手を出したんです?」
聡志「どこまでって、一緒に食事しただけだけど」
部下「ホントにですか?ホントに食事だけですか」
聡志「初回からがっつかないよ。っていうか19だから」
部下「しっかりしてそうでなんか怖いですよ」
聡志「ちょっと上の空だったけど慣れてない感じがまた可愛くって。えへ」
部下「えへ。じゃない!恋ですよ恋。とりあえず仕事に支障出てるんでしっかりしてくださいね」
部下に叱られる。52歳の聡志。
昼休みはいつもみたいにコンビニランチ。冷やし中華と麦茶のペットボトル。
昨晩のコッテリのあとだからとサッパリを選ぶ。
寝る前に消臭剤をガンガンに振りまくってビショビショにさせた。どうにか部下から焼肉臭を言われずに済む。スメハラなんて言われたら苦痛である。
ぴろん
アプリの通知音。メッセージである。
33歳の男性。名はソラという。登録名なのかもしれない。プロフィール写真は、帽子で目を隠してある。帽子からハミ出る髪はカールしている。「天然パーマかな」。52歳と33歳なら誰からも文句言われないし大人の付き合いが出来るかもしれないと心によぎる。
ソラ「初めてじゃないかもしれませんがよければメッセージお待ちしてます。聡志さんのプロフィールを見てものすごく興味を持ちました。聡志さんに甘えたいです」
初めてじゃないとは。アプリのことか?なんのことか分からないが、甘えたいとは。どういうことだろうか。半分くらいはわかっているが。分からないことだらけではあるが、ひとまず返信しておこう。
聡志「メッセージありがとうございます。私も年齢が離れてはいますが、大人のお付き合いが出来る方を探していたので少し興味を持ちました。いつかお会いできると良いなと感じてます」
ソラ「それは会っても良いということでしょうか」
聡志「もちろんです。ソラさんさえ良ければ」
まさかのとんとん拍子。18時に動物園の入口付近で待ち合わせ。17時閉門の動物園の入口を利用して待ち合わせた。ひと気が減ったことで探しやすく声をかけても不自然じゃないということで選択した。
電車で運悪く人身事故が発生し待ち合わせに遅れてしまう。メッセージで「少し遅れます」と伝えてあるが、返信が無い。気が気じゃない。焦りで貧乏ゆすりを起こしてしまう。
誰かが緊急停止ボタンを押したようだ。帰宅ラッシュでのコレはなかなか厳しい。
色々ありようやく動物園の入口へ向かって走る。駅から3分ほどの距離。タクシーには乗らず向かった。
聡志「はぁはぁはぁはぁ」
急な上り坂。老いを感じ膝に手をつき、顔を入り口に向けている男性がいる。
「。。。」
特別これといったリアクションもなく。
息を整え。ゆっくりと歩き体裁を整える。頭の毛穴と言う毛穴から汗が滴り落ちハンカチで拭う。ハンカチはすぐにビッショリと汗を吸う。
聡志「あの。ソラさん。。ですか?」
ソラ「はい。聡志さんですよね」
返答に笑顔で返す。
ただ夕暮れで顔に陰影が出来流れから笑顔であろうと。
聡志「遅くなってすみません。待ちましたか」
ソラ「いいえ。大丈夫です。それより俺の顔見覚えないですか?」
知り合いか。照明と夕暮れで陰影が出ているためハッキリとはわからない。
聡志「えっと。すみません。どこかでお会いしたでしょうか」
申し訳なさそうに尋ねる。
ソラ「わかりました。とりあえず、どこかでお食事でもどうですか?」
訝しげに言われるまま付いていく。
ソラ「聡志さんはお昼何食べたんですか?俺は、カツサンドでした。元気と勢いを出したくて」
聡志「昼は、コンビニの冷やし中華でした。昨晩焼肉でしたので」
ソラ「焼肉ですか。じゃあ今夜は少しサッパリしたのが良さそうですね」
聡志「サッパリと言うことは、寿司とかですかね」
ソラ「それもいいですね。イタリアンでマリネと冷製パスタはどうかな」
聡志「どちらも魚ですね」
ソラ「ほんとだ!」
意気投合。
ふらふらと繁華街へ向かう。
ソラ「間を取って居酒屋にしましょうか」
またみてね