待ち合わせ
【人物紹介】
直人 なおと。19歳。大学1年。根が真面目。
聡志 さとし。52歳。係長。美人局の経験あり。
義人 よしと。24歳。社会人2年目。現在休職中。
部下 ぶか。28歳。聡志の部下。アプリを紹介した。
ブブブ
スマホの通知のようだ。
覗いてみると昨晩のアプリになにか通知が来ている。開く。
19歳の大学1年生の例の男の子からだった。
なおと「いきなりでごめんなさい。ぼく、プロフィール見て素敵な人だなと思いメッセージを送りました。ちゃんとした人っぽく見えたので、一度お会いできないかなと。思いました。気になりましたらメッセージください。まってます」
感無量。変な汗が滲む。午後からの仕事にも力が湧きそうだ。
バリバリ働き定時退勤。
帰りは、ゆっくりと帰りたい。バスに揺られて帰る。
バス車内で返信。
聡志「返信遅くなり申し訳ありません。今仕事が終わり家に帰る途中です。なおとくんは、パパ活を希望してるようですが、なにか買いたいものでもあるのですか?私は、その手助けになれますか?」
返信待ち。すぐには戻ってくるとは考えてはいない。明日でも明後日でも良い。仕事や生活の活力にさえなれば。
「えっ」
返信はすぐに来た。
なおと「お返事ありがとうございます。お昼に送ってからしばらく無かったので、ダメかと思ってました。うれしいです。今仕事帰りなんですね。あの、聡志さんは今どの辺ですか?近いならお会いしたいです」
すぐに返信が来たことに驚き。さらに、今どこ。会いたい。心が震える。手のひらには汗がしたたり、額と首筋にツーっと汗が流れる。震える心と指先。はやる気持ちをグッと堪えながら文字を打つ。スマホながらフリック入力は苦手とガラケーさながらのマルチタップ入力。
聡志「今はバスの中です。えーっと、スタジアムの近くです。ではわかりませんね。えっと」
なんとか現在地を伝え送信する。
すぐに返信。あと15分くらいで合流できそうだと言う。バスを途中下車し合流地点へ向かう。
これまでなら、今すぐと言うわけではなく、日時を決めてお互いにわかりそうな目印を付けて出会うという昔ながらの出会い方をしてきた。それが、ただの児童公園で待ち合わせるという。
落ち着けと自分に言い聞かし周りを見渡すと。
マンション群に囲まれた児童公園。夕方ですでに子供たちは家に戻ったであろう。砂場には持ち帰り忘れたスコップが落ちている。ふと我に返る。
聡志「これは、騙されたかもしれない。どこからかカメラで撮られて社会的制裁をををを」
男の子「騙されたんですか?いくら騙されたんですか?警察に一緒に行きますか?」
急に声を掛けられ思わず
聡志「うわぁあはあぁ」
声にならない声で叫ぶ。
男の子「大丈夫ですか?安心してください。大丈夫」
両手を握り顔をじっと見る。自分よりずっと若くまだ幼いように見える男の子に心配されたことに徐々に恥ずかしさが昂る。
男の子「落ち着きましたか。よかった。ぼくは、今日ここで待ち合わせしている人がいるんです。でもまさか、児童公園だとは思いませんでした。って。興味ないですね。ごめんなさい。もう着くころだと思うんですよね。息が整うまで隣に座ってますね」
聡志「でも、今から来られる方にご迷惑になりませんか?私はだいぶ落ち着きましたので。あちらのブランコにでも乗って待ちますよ。ありがとうございました」
男の子「良かったです。もし詐欺に遭ったなら警察に行って話だけでもすると良いと思います」
的確なアドバイスとまではいかないが、まだ男の子と呼ぶのが似合うそんな子に心配されることに恥ずかしさがこみあげてくる。アプリを開きメッセージを見たがまだ何も返ってきてはいない。ダメ元で着いたことを報告。返信までの間に、汗をかきすぎたとして公園のトイレに入る。
また見てね