ブラジルコーヒー
【人物紹介】
直人 なおと。19歳。大学1年。根が真面目。初デートは焼肉でテンパる。キスLV.1 天然の甘え上手
聡志 さとし。52歳。係長。美人局の経験あり。ガラケー打ち。頬にキスで満足。ハラスメントを恐れる。老いを感じる。義弟と出会い系で再会。解説好き。年甲斐もなくはしゃいぐ。
空 あおい。33歳。聡志の義弟。アプリで再開。アプリではソラ名義。甘えたい。聡志にべったり。カールな髪。
義人 よしと。24歳。社会人2年目。現在休職中。精神疾患。毎週通院。
佐伯船生 さえきふなお。20代。依存性パーソナリティ。2週に1回通院。
部下 ぶか。28歳。聡志の部下。アプリを紹介した。ツッコミ役。
名前を呼ばれた。
義人「はい」
主治医とのやり取り。特に変わったことも無くいつもと同じ。このやり取りは何の意味があるのか。
約5分ほどの会話で退室。
再度待合室。
しばらくすると会計で呼ばれ支払いを済ませ病院から出ていく。
「駅まで一緒に行きませんか?」
呼ばれたような気がして視線をかえると。
佐伯「いかがですか?それともちょっとお茶しません?」
先回りしていたようだ。
義人「あの。私が呼ばれるまで佐伯さんのお名前呼ばれてませんでしたが」
佐伯「ええ。私は午前の朝イチでして。ただ帰るのがつまらなくて待合室にいたんです」
義人「本当に寂しがり屋なんですね」
少し打ち解ける。
佐伯「そうなんです。それと年の近い人を見てなんとなく」
義人「私も年の近い人がいてなんだか親近感あります。でも、急に触るのは。ちょっと」
佐伯「ごめんなさい。反省してます。誰でも嫌ですよね」
義人「なおt。家族なら。べつにそういうのは」
佐伯「ご家族と住まわれてるのですか?俺もです」
駅まで歩く。その途中にコーヒーの香りが。
義人「ちょっとコーヒーでもいかがですか?」
佐伯「よろこんで!」
からんころんころーん
義人「ふたりで。はい」
奥のテーブル席へ。
佐伯「ふかーい」
義人「ほんとだ」
黒い皮張りの椅子。柔らかいソファだった。
思いのほか柔らかくて超えに出てしまう。
義人「アメリカンで」
佐伯「俺は、ブラジルで」
注文して店内をぐるっと見回す。
佐伯「はじめて?」
義人「ここははじめてですね」
佐伯「そっか。俺も」
店内にボトルシップがあちこちに飾られている。オーナーの趣味だろうか。大人の趣味だとわかる。
ボトルシップというウイスキーなどの瓶の中に船の模型。ピンセットを使い作る器用な人向けの趣味。
佐伯「あなたなら出来そうじゃないですか?その細い指なら」
義人「あなたではなく、義人とお呼びください」
急に距離感が縮まる。これには佐伯船生も驚きを隠せない。
佐伯「だったら義人さん。俺の名前も下の船生と呼んでください」
義人「ふ。ふな。ふなお。。くん」
佐伯「呼び捨てで良いですよ。義人さん」
義人「なんかの縁です。なんだか友達が出来たみたいで」
佐伯「そうやって少しずつ仲良くなりましょ」
コーヒーが運ばれる。
船生は、義人より少し高く見上げる程ではない。爽やかな雰囲気がある。
義人「ブラジルコーヒーってどんな感じ?」
船生「飲んでみる?」
船生が口を付けた反対側からひとくち。
義人「ん。甘い香り。チョコと合いそう。アメリカンみたいに癖が無くて飲みやすい」
船生「ははは。食レポうまいね」
義人「次回飲もう」
カップを戻し飲む。
義人 《あれ?さっき右手で飲んでなかったか?》
義人「私の病名は実はまだハッキリとして無いんだ。うつなのか適応なのか。それとも双極性なのか。なにもわからなくて。ずっと通っているけど。だから障害者年金が貰えなくてね」
船生「そうなんだ。分からないっていうのは苦痛だよね」
誰かに理解してもらえて少しだけ嬉しい気持ちになる。
義人「毎週通ってるでしょ。休職手当では苦しくてね。本当は外でコーヒーさえも厳しくて。でも、ふなおくんとこうして共有出来てなんだか嬉しくてさ」
船生「わかる。それ。一般の人には理解されないから。家族からも疎まれてるよ」
義人「なおt。家族と言っても弟なんだけど、弟は理解してくれてるらしくて。でも迷惑かけてるようで。心苦しいというか」
船生「それだけ優しいんだよ義人さんは。いい弟さんじゃないですか」
義人「そうかな。ありがとう」
大事な弟を良いように言われて照れる。
船生「今日はちょっと迷惑をかけたのとこうして病気の共有できたから俺が出しますよ」
義人「それは良くない。そんな心配されたくない」
船生「そういうつもりじゃ」
義人「じゃあ。次であった時にでも払わせてくれよ」
船生「え?次回あるんですか?」
義人「そりゃあるだろ。私は毎週。ふなおくんは2週に1回なんだ」
船生「じゃあ次回で!」
はしゃぐ船生を見て同年代の男を見てどこか可愛らしさを感じる。
またみてね




