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4-28



 零戦が、学校付属の滑走路に降りた。

 自動車ほどの着陸速度は、比してならば巨大といっていい零戦のスケールも相まって不自然なほどの低速。

 そして、そんな速度だというのに神経質なほどに正確な三点接地。

 武蔵は最近気付いたことがある。

 飛行機とは、軽すぎても安定しないので扱いにくい物らしい。

 彼の零戦は未だに改造半ば、最終的にはもっと軽くなる予定となっている。

 果たしてその時の零戦が、まともな制御を許す飛行機になっているとは武蔵には思えなかった。


「速度が遅すぎて舵が効いてない、ここも何かしら対策は必要だな」


 低速のレスポンスをよくする方法は幾つかあるが、どれも一長一短だ。

 ストレーキか圧縮空気か、あるいはシンプルに尾翼を大きくするか。

 尾翼の変更はよくある話だ、それどころか枚数を増やす場合とてある。

 しかし当然、空気抵抗は増えて速度が低下してしまう。

 ああだこうだと悩みながら機を降りた武蔵に、部員たちの心ない言葉が浴びせられた。


「おっ、不敗記録ニキじゃーん」


「あはは。もう止まったっての」


「偉そうなこと言って、初心者に落とされやがった」


 もっとも、武蔵もまたそれを意に介するような性格をしていなかった。

 ただ、彼が気になっていたのは一つ。

 あの時、何故彼女はあのような操縦を可能としたのか。

 武蔵は少女を前にして、まず提案した。


「引き分けにしておいてやる」


「えー、勝ったじゃない」


「お前、なにか不正したろ」


 その内容は、果たして判っていない。

 だがやったかどうかの1点については、武蔵は疑っていなかった。


「ただ、それで実際勝ってみせたのは大したもんだ。おまけで引き分けにしておく」


「えらそうだなぁー」


「この場で話すのは面倒か。部活が終わった後、どこかで合うぞ」


「あらら。これって放課後デート?」


「放課後尋問だ」


「初めて聞いた言葉が出てきた」







 空部が終了した後、武蔵は少女を伴って喫茶店に入る。

 同中学校の生徒が頻繁に利用する、リーズナブルさが売りのチェーン店だ。

 2人はとりあえず飲み物だけを注文し、さてと本題に入ることにした。


「―――で、どうやって俺の動きを読んでいたか、だが……」


「ふしゅー! ぶぶぶっ、ぶーっ!」


「口笛どころか唇ぶるぶるしてるだけじゃねーか」


 誤魔化す時のお約束、ということで口笛を吹こうとする少女。

 しかしながら、どうにも彼女は不器用らしい。

 戦闘後、武蔵が彼女を詰問したところ、そのからくりを彼女はそれなりにすぐにゲロった。

 イカサマだ。


「ほら、前に教えてもらった自動操縦装置? あれのセキュリティーホールに介入したの。コネクタは普通の世界共通規格だったから、携帯機器繋いどけば楽勝だったわ」


「……操縦には介在していないな?」


「さすがにそんな卑怯なことしないわよ、操縦をモニタリングしてただけ」


 だけ、と言われても困る武蔵であった。


「完全な反則だ」


 少女は武蔵の零戦にこっそりと装置を取り付けて、読み取った情報を自分の4式戦闘機に送信していたのだ。

 それを計算してヘッドアップディスプレイに投射、零戦の未来位置を映像化して投射していたのは確かに彼女の技能であり大したものと言っていい。

 彼女の手札で武蔵に勝つにはそれくらいのイカサマは必要、とはいえ判っても出来るものではない。

 彼女がやってみた作戦は、結果を残したという意味では成功であり、競技としては反則以外の何者もない。


「盲点だった。事故防止の為に自動操縦装置には、常に高精度の未来位置が計算されてる。それさえ読み取れば、素人のお前でも俺の動きを予測って出来るわけだ」


 自動操縦装置は様々なセンサーで、自機の未来位置を予測している。

 パイロットの操作すら読み取っているのだ、その精度は余地というより予報に近い。

 彼女はその未来位置予報を、疾風に送信させていたのだ。

 どうりで勝てないわけであった。

 ほぼ未経験者である彼女が、武蔵が行ったフェイントにすら引っかからない時点で気づくべきだった。

 生データではなく総合的にシミュレートした未来位置なら、なるほど間違うはずがない。



「手を抜くことがスポーツマンシップではない、ってあんたが言ったんじゃない」


「ルール内であれば、とも言ったはずだ」


「他の機にハッキングしちゃだめってルールはないわ。ちゃんと確認したもの」


 武蔵は頭を抱えた。

 ルールはプロペラ機であること。以上。

 などと言われているが、もちろん他にも様々なルールがある。

 ミサイル、ドーピング、人工知能……禁止されているものは幾らでもある。


「データリンクは禁止、ってルールがあったはずだぞ」


「ちゃんと読みなさい。地上管制及び友軍機とのデータリンクは禁止、よ」


「そりゃ大会委員会本部のモニタング用通信の為に断りを入れてるだけだ。どこの誰が敵機とデータリンクすると思うんだ」


「むーっ。いつかアンタが言ってたんじゃない。ずるいということは、逆説的にルール内だということだって」


 武蔵は片手の平を額に当て、アチャーと言わんばかりに天を仰いだ。

 彼女の言の通り、どうにも販促とは言い切れない。

 これが他校チームであれば大会委員会に報告してルール改定を促すのだが、彼女は自陣営であった。

 使えるのは一度であろうが、武器になる手札を捨てる気にはなれない。


「これお前の弱味な。俺お前の弱味1つゲットな」


「え、嫌よ。死ね」


「死ねとか言う奴は人としてどうかと思う。そんな奴死ねばいい」


「えーっ」


 届いた飲み物を受け取り、武蔵は軽く喉を湿らす。


「つまり、今俺の零戦の中にはお前の携帯端末が入ってるわけか」


「うん、そそ」


「これ、ハッキングっていうのか? 直接接触してバックドアこじ開けるなんて」


「この世界で一番多様されてるハッキングのテクって何か知ってる?」


 少女は見上げるように上目遣いで、いたずらっぽく笑う。


「そりゃあ、ウイルスじゃないのか?」


「画面を後ろから覗き見る、よ」


「……アリかそれ?」


「逆よ。ルール外の手段こそをハッキング……クラッキングって呼ぶの。アリナシでいえばナシの部分こそをそう呼ぶのよ」


 なるほど、と武蔵は関心した。

 いうなれば、武蔵の発言は「そのルール違反は邪道だ」と言っているようなものだ。

 王道のルール違反などあっては堪らない。

 ……こうして武蔵の敗因は明らかとなったわけだが、彼女側にグレーな行為があったとはいえそれで納得出来るわけでもなかった。

 今回彼女は不正行為で武蔵に喰らいついたわけだが、それは逆に言えば、ハード的には零戦の後ろを取ればそのまま撃墜出来ないわけではないということだ。

 相当な技量と経験を求められる。

 相当な技量と経験を積んだ才能あるパイロットなら、非才な武蔵を一方的に撃墜出来る。


「これじゃあ最強とは言えんな」


「最強……あんたも中学2年生ってことなのね」


 不名誉な感じに生温い目を向けられていたが、武蔵は無視して考察する。

 何度か記されてきたが、零戦は後世の評判ほど運動性能に優れた機体ではない。

 ―――だが、軽量改造された武蔵の零戦は、と問われれば、その限りではない。


「ロール速度に課題は残る。だが、運動性能はマシンマキシマムとして限界に達してるはずだ」


 高高度性能を目指して軽量化された機体だが、軽ければ当然身軽にもなる。

 電子制御の範疇で実装可能であった自動空戦フラップまで搭載されており、結果論とはいえ武蔵の零戦はドッグファイターとして優秀なのだ。

 ならばなぜ、空戦で遅れを取ったのか。

 そんなことはわかっていた。やはり、武蔵は非才なのだ。


「俺だ。俺の性能が、零戦についていけてない」


 それなりに大柄な武蔵は、耐G能力が低かった。

 トレーニングでカバーしても、ブラックアウトは避けようがない。

 マシン(零戦)がどれだけ優秀でも、ソフト(武蔵)が制御出来ないのなら宝の持ち腐れだ。

 そこを、少女の疾風に突かれたのだ。


「さっきから聞いてれば何よ。私だって頑張ってるんだから、私が勝つことだってあるでしょ!」


 武蔵は閉口した。

 まさしくその通りだと思ったのだ。

 勝負事は結果が全てであり、彼女は結果を示した。

 彼女の頑張りが、武蔵のこれまでの努力に届いたのだ。







 これまで基礎を軽んじていたわけではない。

 だが武蔵は改めて、自分の限界に挑んでみることにした。

 遠心力発生装置という機械がある。

 高速回転する座席に座り、どれほどのGに耐えられるかテストするものだ。

 名前がそのまんまであるが、パイロットライセンスを持つ者なら一度は経験しているテストである。

 中学校に設置されているわけがない大掛かりな設備だ。しかしこれをどうしても使用したかった武蔵は、ハカセに相談してみることにした。


「長時間ぶっ続けで遠心力発生装置の訓練を受けるにはどうしたらいいと思います?」


「まかせろ」


 場所はハカセの工場店舗。その裏手の、広場のような場所。

 ハカセが示したのは、いかにも手作りといった様子の空中ブランコであった。

 木の枝からぶら下がっている2本のロープ。繋がっているのは尻を乗せる粗末な板。

 まさにお父さんの日曜大工で作ったような、粗末な手作りブランコ。


「これに乗れと?」


「うむ」


 訝しみながらも、ブランコに腰掛ける武蔵。


「のおおぉぉぉ!?」


 突如として、木がくるくると回りだした。

 ついで、吊り下げられた武蔵もまた盛大に回転を始めた。


「落ちっ、落ちるっ!」


 猛回転する武蔵オンブランコ。

 ブランコの脇に設置されたGメーターがあっという間に跳ね上がる。


「早っ、遠心機より早い! 数秒で5G行きやがった!」


 戦闘機の座席は、大きく背もたれが倒れている。

 当然である。重圧を尻の一点にかけるより、背中に分散させた方が楽に決まっている。

 これを成すには高度な操縦システムが必要であり、第二次世界大戦当時の戦闘機はほぼ垂直な座席しか有していなかったが、さすがにGが弱点である武蔵は座席を大きく倒している。

 彼にとって健気な耐G対策だが、このブランコにそんな気遣いはなかった。


「おらおらおらー!」


 楽しくなってきた様子のハカセに、武蔵は考える。

 この男、いつか絶対泣かす、と。







「パイロット大和くんだから乗れなーい!」


 ブランコから落ちて吹っ飛ぶ武蔵を、ハカセがケラケラ笑う。


「ごらぁ! これ耐G訓練じゃねーだろ!」


 さすがに怒る武蔵であったが、ハカセはそれを鼻で笑う。


「お前の体幹が軟弱なのが悪い。俺なら10Gは行ける」


「……手本を見せて頂けますか?」


 10Gとは、もはや才能の世界の重圧だ。

 それを、このような不安定なブランコで乗れると豪語するハカセに武蔵は疑いを抱く。

 だが、だが実際、この自称ハカセはこともあろうに平然と高速回転するブランコに乗って見せたのだ。


「どやぁ……」


 決め顔でドヤるハカセに、武蔵は才能の采配が間違っていると憤った。

 こんなのがパイロットとして天賦といっていい才を持ってるなど、とんだ冗談である。


「がむしゃらにトレーニングしても、意識を保てない瞬間がある」


「それは仕方がない。体質とかの問題だ、諦めて次いけ次」


 手をひらひらと振るハカセに、武蔵はうらめしげな目を向けた。


「じゃあ、俺は最強に至れないと認めろというのか」


「目の前の現実で妥協する奴は自分と戦うことの出来ないガキだが、目の前の現実を闇雲に否定するのは自分を認められないクソガキだ。受け入れた上で、超えていけ」


「そんな哲学いらない」


「お前は自分に才能のないと思ってるのかもしれないが、別にそんなことはない。お前よりへっぽこな奴なんてごまんといる」


「俺以上の才能だって、ごまんといるでしょう」


「そうだ。だから、上を見上げて悔しがったり下を見て安堵するようなかっこ悪い真似はやめろ。手持ちのカードで勝つ方法を考えろ」


「そんなこと……分かってる」


 その場しのぎの運動性能ではなく、勝つ為の手札を取る。

 それは、武蔵が零戦を選んだ時に考えたことだ。

 だが、その場しのぎも出来なければ次に繋げない状況もあったのだ。

 ハカセはどこか、遥か遠くを見る目で空を見上げる。


「というかお前は、なまじ知識があるから考えを狭めすぎだ。人に相談しろ。よく言うだろ、3人よればもんじゃの知恵って」


 武蔵は困り果てた。

 今のは彼なりのギャグだろうか。







「というわけで、今日集まってもらったのは他でもない」


「私これから友達と遊びに行く予定なんだけど」


 困った様子の黒髪少女を連れて武蔵は放課後の教室に陣取った。


「俺はある男から助言を受けた。3人集まってもんじゃを焼け、と」


「その助言について、あんたは何も思わなかった?」


 武蔵は気付いたのだ。

 自分には友達がいないことに。

 故に彼は決意した。やたらと絡んでくる黒髪少女を友達のカテゴリーに入れてしまおうと。


「というわけだ友達。妙案はないか」


「お好み焼きにしない?」


「駄目だこいつ役に立たない」


「酷い言いようね。というか、普通に仲間と隙を埋め合うんじゃ駄目なの? 戦闘機乗りはタッグを組んで戦うのが基本なんでしょ?」


 正しくはエレメント(2機編隊)だが、面倒なので武蔵は指摘しなかった。


「まず、俺についてこれる奴がいない」


「私は? 一度、あんたを落としたわよ」


 言葉に詰まる武蔵。

 スポーツは結果がすべてだ。現実に一度落とされた以上、武蔵にはそれを否定できなかった。

 この時点では流石に、武蔵も彼女の提案を受け入れることはなかった。

 だが結局は武蔵の空戦における隙という問題は解決せず―――有耶無耶のうちに、少女は半ば無理矢理に武蔵のバディに収まったのである。







 やはり、一人で考えてもろくな解決策など出ないらしい。

 いや、彼女がもたらした解決策が「ろく」であるかは議論の余地があるが。


「意識を失っちゃう? なら事前に何秒後にこうする、って操縦入れとけばいいでしょ」


 以前と同じ喫茶店にて、サンドイッチの盛り合わせから容赦なくチキンサンドを強奪した彼女はそう提案してきた。

 あっけからんとした、シンプルな提案。だがそれは、あまりに非現実的な機能だ。


「例えば……なんだ。ループ中に切り返さなきゃいけない時は、ループする前に切り返す動作とタイミングを入力しとけと?」


「そうそう。戦術得意なんでしょ? なら敵の動きくらい予想すればいいじゃない」


 簡単に言ってくれる、と武蔵は難しい顔で残ったレタスサンドを咀嚼する。


「……それで墜落や空中接触したらどうする」


「操縦系とは別に安全装置が制御してるんだから、危険操作はそっちでカバーするわよ。マニュアルだろうと自動操縦であろうと安全装置は区別してないわ」


 確かにその通りではある。

 直接操縦されていようと事前に入力された操縦であろうと、自動操縦装置は無遠慮に操縦に介入して安全を確保する。

 この方式の問題点は、ひとえに武蔵が敵の動きをどれほど予想出来るかだ。


「―――いや」


 違うのかもしれない。

 あるいは、そうなのかもしれない。

 武蔵は凡人だ。それは彼自身が認めるところだ。

 理屈抜きに機械の限界を識れたりなどしない。殺気だけでフェイントを混ぜたりなど出来ない。

 真の怪物を前に、武蔵はどこまでも凡庸だ。

 そんな大和武蔵の、唯一にして最大の武器。


「そうだな、ようはやりようか」


 別に完璧な予想をする必要はないのだ。

 複数の可能性があるのならば、それらに対応できる折衷案を実行すればいい。

 否―――もしこれを実現出来るのならば。


意識を保つ限界(9G)ではなく、人体の限界(40G)の機動が出来るかもしれない」


 勿論これは、あまりに極端な例だ。

 40Gに耐えられる航空機など、ごく少数しか存在しない。

 だが、もし。

 必殺のタイミングで、人体の限界に迫る運動性能を発揮出来るのならば。


「世界で戦える武器になる」


 武蔵は震えた。

 あまりに革新的で悪魔的な、甘美な可能性であった。










 時差入力、と仮称されたこのシステムを、彼女は零戦に容易く実装してしまった。

 確かに弄るのはハードウェアではなくソフトウェアだが、それにしてもあっという間の改造であった。

 触れてはならない禁断の領域である操縦系のプロトコルを平然と改変する彼女に、武蔵はいっそ呆れかえる。


「情報系の専門家だって、そこは手を出せないもんだぞ」


「どってことないわよ、こんなの」


 どうやら、少女はソフトウェア方面に並々ならぬ能力を有しているらしかった。

 何にせよ、こうして武蔵の零戦は夏の大会に挑む、すべての準備を終える。

 数合わせのような3機を置いてきぼりに、武蔵と少女の零戦と疾風は暑い空を暴れまわった。

 その戦績など過去の話だ。今更回想したところで意味はない。

 だが、その夏、競技者達は2人の若者の名を知ったのだ。


「なあ」


 大会終了後、暑い、熱すぎた夏を経て、武蔵と少女は話していた。


「なによ?」


「今更だが、お前のことをなんて呼べばいい」


 黒髪の少女は目を丸くした。


「本当に、まさに今更ね……好きに呼べばいいじゃない」


「黒髪」


「名前で呼べ」


「時雨」


 少女……時雨は、手にしていた飲み物を落としかける。


「そりゃ、そっちが名字じゃなくて名前だけど……いきなり女の子のこと、下の名前で呼ぶんじゃないわよ」


「じゃあ白露だな」


「他人行儀ね。私達、エレメントじゃない」


 どうすればいいんだ、と武蔵は困ってしまった。


「うっふっふ、武蔵は私のことなんて呼びたいのかなぁー?」


「髪」


「色まで省くんじゃないわよ」


 やれやれと肩を竦める時雨に、武蔵は提案する。


「俺達がエレメントであることは否定しない。お前はそれなりに使える奴になった」


「そりゃどうも」


「今後とも一緒にやっていきたいと思っている」


「はいはい。友達のいない大和君に、ちゃーんと付き合ってあげるわよ」


「友達くらいいる。サッカーボールとか愛とか勇気とか。だが、お前とはもう少し交流があってもいいとも思っている」


 意外な言葉に、時雨はこいつ誰だと言わんばかりの目で武蔵を見た。


「えっと、それはつまり?」


 武蔵は言葉を選び、眉をしかめ、ぎりりと奥歯を噛み締めてから口にした。


「……帰るぞ」


「ヘタレた! 今この人ヘタレた!」


 それが白露 時雨の知る限り、最初の武蔵からのアプローチであった。

 この一年後、武蔵の兄の凶報が彼に届くこととなる。













 ねえ、私はここにいるよ。



作中世界の21世紀において、学生がエアレース用の中古機を購入する感覚は、現実でいえばバイクを購入するくらいの感覚です。


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