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第7話 それはもう自業自得では?

 怪盗ヒーロープリンセスには、怪盗以外にも他の活動を行っている。それが、名前にもある通りヒーロー活動である。

 怪盗程、そこまで活発的には活動はしてはないがそれとなくしている。わざわざ平日の学校から抜け出していたら、学生の本分である学業を疎かになってしまう。


 なので、ヒーロー活動はあくまでついで。但し、学校での時間意外で目に映る見過ごせない状況があれば、すぐに駆け付ける様に心掛けている。


 て言うのは建前である。本音を言うと、首を突っ込むのは嫌なのがプリンセスである。アニメや漫画の主人公みたいな正義の心など、そこまでは持ち合わせてなどいない。

 プリンセスの欲を満たすには十分だが、あくまで怪盗として欲を満たしたい。そこにこれと言った事情は無い。


 強いて言うなら、"怪盗"が性に合っている。


 そして今、名前の知らない少女の為にプリンセスはヒーローとして夜の街を駆け回っている。


「そう遠くへは行っていない筈ですが…」


 建物から建物へとジャンプで跳び移り、少女を探しているものの中々見つからない。3機のパピヨンドローンも、ダ・ヴィンチ操作で街中を飛び回っているが全然だ。


 探し始めてから、かれこれ10分近くは経とうとしている。なのに、何の情報も得られていない。

 もう少し、探し出す手段を増やすしか他はない。


「カメラ…そう、カメラしかないわね。ダ・ヴィンチ、街の監視カメラを全部私に下さい」


『全部ですか?本当に全部ですか?』


「えぇ、お願いします」


 ダ・ヴィンチは、街にある全てのカメラにアクセスして、プリンセスのフードのディスプレイに全て映し出す。が、それは失敗であった。


「ダ・ヴィンチ!?これ、多過ぎま──」


 シャルの視界には、膨大な量の監視カメラの映像が流れ込んでまさかの視界不良となってしまった。それに驚き、プリンセスは建物の上で頭から転んでしまう。


 立ち上がり、スーツに着いた土を振り払ってフードを外した。


「情報量が多過ぎますよ。ビックリしちゃいました。オーマイガー…」


『プリンセス様がそう望みましたので』


 確かにそうだった。否定はしない。でも、ちょっと極端だったかなと思う。

 もう一度改めて、ダ・ヴィンチにちゃんと場所を絞って貰って監視カメラの映像を受け取る。


 しかし今度は、フードのディスプレイではなく、スマホとは別のデバイスに映像が送られる。


 棒状の物が二つくっ付いてあり、その内の一つを横へ引っ張ると、透明なガラス板が出てきた。軽くガラス板に触れると、ちゃんと整理された監視カメラの映像が流れる。


 スマホ以上にお手軽でスペースを取らない。プリンセスが独自に開発した新しいデバイス。


「ドローンが通った場所以外で更に絞り込み、小さい子が簡単に入れる場所は…見つけました」


 少女が映り込んだ映像をタップし、ダ・ヴィンチがすぐさま解析。映り込んだ時間帯と行き先を推定して、ダ・ヴィンチが少女の行き先を割り出した。


『最短距離、このルート通り進めば約5分で目標と接触します』


「では、行きますよ!」


 フードを深く被り直し、少女求めてプリンセスはその場から飛び立った。



 ////////



 巧みにワイヤーガンを駆使して移動したお陰か、ダ・ヴィンチが計算して割り出した時間よりも1分半程短縮して少女を目にした。


 商店街の一丁目。建物の上から確かに少女を目にしてはいるが、その目に映る光景はどうも穏やかなものではなかった。

 少女の周りには、数十人という暴力団員に囲まれていた。これにはプリンセスも参った。


 何かの見間違いだろうと、一度目を瞑ってはしっかり見開いて状況を再確認する。


「あの子、凄い才能の持ち主ね」


 皮肉の言葉しか出ない。事実、ここまでで問題が多々起きては、誰かしらに因縁付けられているのだ。しかも、問題を起こす度に質が向上している。ある意味、才能があるとしか言いようがない。


 と、悠長に考えては感心している場合ではない。今は、目の前の事に集中しなければならない。

 プリンセスは、建物から飛び降りて少女の目の前に降り立ち、ワイヤーガンの銃口を目の前に居る暴力団員に向ける。


「ご機嫌よう。随分と子供相手に大人気ないですね」


「ハッ!天下の怪盗ヒーロー様のご登場ってか?」


「天下の怪盗ヒーロー…凄く強そうですね!」


 数では圧倒的に不利。けれど、いつも追い掛けまわしてくる警察官と比べれば、大した人数ではない。問題は無いが強いて言うならば、少女の方が心配だ。


 プリンセスが現れてから、何も言葉を発していない。ゆっくり話を聞きたいが、まあ今はそういう訳にもいかない。取り敢えず目の前に居る暴力団員の掃討。


「ちょっと失礼しますね」


「えあ、ちょ──」


 少女が何か言おうとしていたが、それを無視して抱き抱えては近くにあった外階段へ放り投げた。少女が踊り場に着地するのと同時に、ワイヤーガンで鉛を撃ち、もう逃げれない様に手すりこに巻き付けた。

 ジタバタとして抜け出そうとしているが、女子高校生の体重にも耐えれる程に頑丈なうえ、簡単に解くのは無理だ。


 撃ち終わったワイヤーガンは適当に放り投げ、プリンセスは改めて暴力団員に体を向ける。


 腰にいつも装備されているトンファーを構え、戦闘態勢に。


「ぶつかり合う前に一つ尋ねます。何故、あの子を?」


「俺達の組の金を取りやがったんだよ!!」


 思わずトンファーを落とし、カランっと金属音が商店街に響く。キッと少女を睨むプリンセスに、表情は見えないもののその威圧を感じ取って萎縮する少女。


 これでは、どっちが悪党なのかよく分からなくなってきた。


「では、こうしましょう」


「ほう、どうしましょう?」


「組の名前と住所、盗られたお金の金額を教えて頂けば、後で私の方からその分返金を──」


「ふざけろ!!それじゃあ、俺達の面子が丸潰れなんだよ。こんなガキ相手に、盗まれたって知った日には他の組に笑いもんだ!」


 それはもうどうしようもない気がする。そんな先の事まで、プリンセスに投げ掛けられても何も出来ない。そもそも、少女相手にお金を盗られるセキュリティが原因かと思われる。


「ガキを寄越せ」


「お断りします」


 プリンセスが拒否するのと同時に、団員が両側から襲い掛かって来るが、落としていたトンファーを足で掬い上げてキャッチ。そのまま容赦無く、2人をトンファーで後頭部へ叩き付けて気絶させる。


 不安定にトンファーを持っていたのを、簡単に持ち直ししていると団員が後ろから羽交締めでプリンセスを捕まえた。

 チャンスと見て、正面から数人向かって来る。

 ここは冷静に周りの状況を見て判断する。


 プリンセスは足裏を地面にくっ付けて、上半身だけで前方に投げ飛ばす。ついでに、向かって来た団員も蹴散らせた。


 ワイヤーガンを周辺にあったゴミ箱に向けて撃ち込み、巻き戻す事によって背後から他の団員をぶっ飛ばす。


 壁を蹴り、その勢いで1人膝蹴りで蹴り飛ばし、団子になっていた団員も巻き込んで地面に沈める。

 数人掛かりでは太刀打ち出来ないと団員達も理解し、今度は10人近くの人数で飛び掛かって来た。

 瞬時に両手に持つ二つのトンファーを組み合わせ、棒術武器として組み上げる。


 両手で大きく振り回して、襲う者全て一撃で薙ぎ払う。更に地面に突き立て、両脚を絡めてその場でポールダンスをするかの動きで頭を掴み、壁へと投げ飛ばす。


 まだまだプリンセスの猛攻は止まらない。


「踊り明かしましょう!皆さん!」


 目に映る者に向け、腹を穿ち、後頭部を叩き、足裏に引っ付けては投げ飛ばしたり。身軽に飛び跳ねては集団戦闘で優位に立ち回っている。


 残り5人というところで、プリンセスは動きを止めてスーツに着いた土埃を振り払う仕草をした後、優しく微笑んだ。


「貴方方、全員を倒す事は容易です。ですが、そうなっては通行人のお邪魔となりますので、争い事はこの辺にしましょうか」


「小娘の癖して余裕のつもりか!?」


「では、どうやってこの倒れている方々を運ぶのですか?」


 プリンセスは、倒れている団員の1人を足裏に引っ付けて、ポイっと雑に目の前に放り出した。そんな舐められた態度をされて、黙っている訳もなく残り5人が一斉に突撃して来た。


 先頭の人に対しては、最小限の動きで横に避けから足で引っ掛けて転ばす。その後ろから続いて来た2人目も、転んだ先頭に躓いて転倒。


 やって来る3人目4人目は、武器をトンファーに戻して投擲。顔面に直撃して堪らず崩れ落ちる。


 最後の5人目は、プリンセスも飛び出して首に脚を絡めさせて締め上げる攻撃と、それによってスカートの中で視界を奪われて防御にもなる。プリンセスは、頭の上に片肘を着き、もう片方の手でスマホを操作していた。


 ──あの子の関する情報を今の内に集め、後はダ・ヴィンチに任せるとしましょうか。


 抵抗は続く。流石に、スカートの中でモゴモゴとされてはこそばゆい。スカートを捲ると、絡める脚を引き剥がそうとしながら、怒っている。

 周りも見ると、人が集まってきている。少し目立ち過ぎた。


 潮時だ。


 押し倒しながらスマホを仕舞い込み、少女の所までひとっ飛び。ワイヤーガンを回収して、少女の懐に弄り始める。

 数は少ないものの、札束が複数発見。そのまま暴力団員の人達に放り投げた。


「盗まれたお金はそれで全部ですよね?ちゃんとお返ししましたので、私達はこの辺で。ご機嫌よう」


 少女を傍に抱えて、夜の空へと逃走するのであった。

怪盗ヒーローメモ

スーツの下に服を着込めれない為、どんな場所だろうと緊急事態だろうが、着る際はいつも一度下着姿になってからスーツを着用している。

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