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第4話 時代はハイテクなんですよ!!

 その日の夜。警備が万全といったところの博物館へ、予告状通りに侵入していた。

 今のシャルは女子高生に在らず。今は、怪盗ヒーロープリンセス。


 プリンセスは、電子制御室にまず向かう為に警備の人に見つからない様、細心の注意を払って少しずつ足を進ませていた。

 次の曲がり角を進めば、巡回している警備と接触する。それを避ける為、プリンセスは手袋とローファーの吸着機能を使って壁を歩き、天井に張り付く。


 過ぎて行くのを見届けた後、音も無く床に着地して再度進み始める。


 何とも楽勝なものだ。赤外線センサーを頼りにしている分、警備員が殆ど居らず、少し目の届かない場所に移動しただけで簡単に突破出来る始末。

 プリンセスもあまり人の事を言えないが、機械に頼り過ぎるのも些か危ない。


「着きましたね。此処ですか。では、ダ・ヴィンチ手筈通りお願いします」


 最初の目的地である電子制御室前に辿り着き、扉のロックをさせているコントロールパネルに目を移す。

 改造に改造を重ねた特別なスマートフォン。怪盗七つ道具以上に、様々な機能をここまでか、と言わんばかりにふんだんに詰め込んだ代物。

 その改造スマホの側面から、コードを引っ張り出してコントロールパネルに繋ぐ。


 その後は、セキュリティ内に忍び込んだダ・ヴィンチが、扉のロックを解除するまで待機する。予定では一分未満。


 ピッとロックが解除された音が鳴り、電子制御室の扉が開かれた。


 中へ入り、此処もまたダ・ヴィンチの活躍によって博物館内の電源を全て落とした。

 さて、後はスピード勝負。如何に素早くお宝の前まで辿り着くか。


 プリンセスが深く被っているフードから、様々な情報がウィンドウとして視覚化され、更に視界が昼間の様に明るくなって良好となる。

 このフード、黒地の布製だがヘッドアップディスプレイが備わっているフードディスプレイなのだ。暗視ゴーグルの機能もあって、このフードだけで色々と完結している。


 電子制御室から出てみると、何が起きたのか分からない警備員達が慌ただしく駆け回っている様子が見える。あまり悠長にしていると、すぐに此処へ少数とは言え警備員がやって来る。


 プリンセスは、ちゃちゃっと最短距離でレインボーティアラが展示されている場所まで走って行く。途中、警備員とも出会したが、暗闇の中こちらに気付かずだった。気付かれそうになっても、天井にでも張り付いておけば簡単にやり過ごせる。


 ようやくと言う程でもないが、お宝がある目の前まで辿り着いた。館内の電源も電子制御室で全て落としている為、赤外線センサーも消えて難なくここまで近付けれた。


 手を伸ばせはすぐ届く距離。


 ショーケースを外してレインボーティアラを手に取る。

 警報も当然鳴っていない。


 博物館に侵入して、お宝であるレインボーティアラを手にするまでの時間は20分も掛かっているかどうか。あまりにも簡単過ぎる。それはとても良い事なのだが、少し心配もする。


 そんな不信感を抱きつつも、その場を後にして脱出しようとした、その時だった。


 ガシャんと大きな音と共に、レインボーティアラが展示されていた場所を中心に下から鉄の棒が飛び出し、檻と化してプリンセスを閉じ込めた。


 同時に、館内の電力が戻ったのか明かりも煌々と点いて、暗闇に潜んでいたプリンセスの姿を露わにした。


「どうだプリンセス!」


「ご機嫌よう、國枝警部」


 いつの間にか、プリンセスの周りを鉄の檻だけでは留まらず大人数の警察官達も取り囲んでいた。プリンセスの目の前に、いつも現れる國枝警部もまた居た。


「あの大量の赤外線センサーは囮とは。中々やりますね」


 鉄の檻に触れると、バチっと静電気なんて生易しいくらいの電気が指に走り、手袋が焼き焦げていた。この檻、電気が流れている。しかもかなりの高電圧。


「さぁ、観念しろ怪盗ヒーロープリンセス!!」


「ふゅー!國枝警部カッコいい!!」


「今夜は赤飯だ!!」


 國枝警部と、その部下である人と逮捕を確信した事で喜びを分かち合うのを見て、プリンセスはパチパチと拍手をしてその努力を讃える。


「お見事です!久し振りに、わっくわくのドッキドキで胸が高鳴ってます!ですが一手、遅かったですね」


 プリンセスの体に変化が訪れる。ノイズ混じりとなり、最終的にはその姿を全員の目の前で消え去った。代わりにパピヨンドローン1機が残っていた。


 國枝警部も含め、何が何だか分からないと言った様子で動揺していた。


「今夜は、月が良く綺麗にお見えになっております。私より、月を追い掛けては?」


 プリンセスの声がした。声のした方向、この展示室の出入り口へ振り返ると、窓の外を眺めて余裕といった感じてプリンセスが居た。


「なっ!?一体どうやって!?」


「簡単なお話しですよ。鉄の檻で囲まれる直前、天井に逃げただけです。國枝警部達が見ていた私は、ただのホログラム」


「つ、捕まえろ!!」


 國枝警部の合図で、警察の大群が猛威を振るいながらプリンセスへ目掛けて走って来る。

 スルリ、ヒラリと軽やかな身のこなしで警察官を避け、掻い潜っては圧倒的な警察の包囲網を突破した。


 それでも追い掛ける者達の執念は凄まじい。引き離したと思ったら、すぐに追い付いたり、通気口からいきなり現れて来たりと。怪盗や泥棒より上手く隠れている事に、プリンセスはいなしながらも感心していた。


 警察との鬼ごっこもクライマックスに差し掛かる。


 プリンセスは屋根の上まで登って、此処から逃げ果せようとするも、國枝警部達も負けじとよじ登って来ている。

 ちゃんと登って来るまで、プリンセスは盗み出したレインボーティアラを被って、可愛くポージングを決めて自撮りしていた。


「頑張って下さい、國枝警部!もう少しですよー!」


「言われんでも頑張っとる!舐めやがって!!」


「そんな事はありませんよ。寧ろその意志の強さは、尊敬に値するものです」


 泥棒に褒められても嬉しくないと、國枝警部は思う。寧ろ皮肉にも聞こえて、余計に煮え滾る思いでいっぱいになる。

 相手は自分よりずっと年下の女性。このまま終わってしまったら、警察官としてのプライドがズタズタ。


 何があろうと絶対に捕まえる。その意志が國枝警部を動かす。


「そこを動くな!!」


 猪突猛進。一直線にプリンセスへ向かって来るが、それをジャンプで避ける。そして、レインボーティアラを國枝警部の頭に被せ、そのまま背中を蹴り飛ばす。


 綺麗に着地したが、その着地した一瞬の隙を突いて警官1人がプリンセスを抱き締める形で後ろから捕まえた。


「國枝警部!捕まえました!!」


「よくやった影野!!」


 國枝警部の部下である影野がプリンセスを捕まえた。

 プリンセスももがき、脱出しようとするがやはり相手は大人の男性。しかも訓練されている警察官。そう簡単に抜け出せない。


 そこでプリンセスは、女性が男性に対して出来るやり方で抜け出す方法を考えた。


「はわっ!あのすみません、その、口にするのはとても恥ずかしいのですが…えっと、胸に手が当たっているのですが…」


「え嘘!?」


 影野は条件反射で拘束していた両腕を離し、プリンセスは自由となり、足払いで影野を転ばせては蹴り飛ばす。


 男性はいつだってそうだ。不意に「当たっている」などと言えば、すぐさま手を離してくれる。偶に離さない強気な相手もいるが、その場合は踵で蹴り付けて強引に離れてもらう。


 こういう事が出来るのは、女性だけの特権である。


「さて、國枝警部さん。ちゃんとレインボーティアラはお返ししました。今宵も満足しましたので、私はこの辺でおいとましますね」


「待て!逃さんぞ!!」


 國枝警部は諦めず、手錠を投げて捕まえようとするが、プリンセスの回し蹴りで容易く弾かれてしまった。

 國枝警部の最後の抵抗は、無惨にも全く通用せず、プリンセスはそれを見て少し笑っていた。


「ではこれにて、失礼しますね」


 プリンセスは後ろ向きで屋根から飛び降り、そのまま夜の街へと消えて行った。

 國枝警部は只々その様子を見る事しかなかった。

怪盗ヒーローメモ

プリンセスが着用、使用しているスーツや道具は、全て映画やドラマのものを参考にして作成されている。

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