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初デートで彼女に捨てられ、他の男に彼女を寝取られた(視点:松井 和樹)。


 俺の名前は松井まつい 和樹かずき


 今宵こよいは初めて出来た彼女との初デート。


 彼女の名前は木上きのうえ 遊花ゆうか


 遊花との待ち合わせが17時だったけど4時間経っても現れるそぶりは無い。


 時刻は、まもなく21時。


 場所は鹿児島中央駅、若き薩摩さつま群像前ぐんぞうまえ

 

 何度、電話しても出ない……LINEに既読すらつかない。


 そして、やっと遊花から電話がかかってきたが


「……別れよう」


 いきなり別れを切り出された。


「そうか」


 なぜだろう……肩の荷が下りたような気がした。


「和樹とは、あわないなって……」


 『どこが?』と聞き返すか……


「そうか」


 いや、野暮だな。


「和樹の趣味なんだけどさ……」


 別れる理由は俺の趣味か。


「俺の……趣味?」


 一拍おいて


「私、アイドルオタクとか無理!」


 理由が告げられる。


「そうか」


 アイドルオタク……世間一般的には、そうかもな。


「この間、和樹の家に行った時? 壁に貼っていた、アイドルのポスター……マジ引くわー!」


 侮蔑ぶべつを含んだ声音でまくし立てる遊花。


 そういえば遊花が余所余所よそよそしくなったのは俺の家に遊びに来て以降だ。


 自室にっていたポスターを見てから俺に対する態度が急変、最初は視線恐怖症なのかと思ってたが……アイドルが嫌いだったからだとはな。


 あのときから遊花は俺への返事が適当になり、今日のデートの打ち合わせだってどこか上の空だったな。


「私、アンタがあんなキモいの好きな人だって思わなかった。マジ、もう無理」


 電話が切られる。


「……」


 今度はLINEでメッセージが送られてきた。


[ってかLINEのアイコンがアイドルとか、どうかしてるw]


 そうか?


[アイドルにガチ恋とか、正気?]


 なんか一方的に決めつけているけど……


「……」


 俺のアイドルに対する姿勢スタンスなんか聞く耳を持たないだろうな。


[じゃあね、もう2度と話しかけないで!]


 それきり、遊花からの連絡が途絶えた。


 俺は携帯スマホを拾い画面を見る。


 遊花から、ブロックされていた。


「……」


 ふと思うところがあり、俺は学級クラスLINEを開いていた。


 【速報:腐女子JK田神、振られる!】


「?」


 確か田神たがみの彼氏、曽根そねだよな。


『そしてドルヲタ松井の彼女、寝取ったぜ!』


 なぜか人の彼女を寝取ったと自慢じまんする曽根。


『よくやった!』


 なぜか曽根を称賛する同級生達クラスメイトたち


 もしかして


「私、もう一度、恋できる自信ないよ……」


 この声……


「田神?」


 田神たがみ 茉莉まり


 だとしたら


「田神……早まるな!」


 止めないと。


「え……?」


 間に合った……


「ま、松井……くん?」


 そこにいたのは俺の同級生クラスメイト田神たがみ 茉莉まり、少し長めの黒髪に黒縁くろぶちメガネが特徴とくちょうの地味子。


「松井くん、何でここに?」


 安心させるため、俺はニコニコと田神に微笑ほほえむ。


「付き合って」


 その表情『えーと……私、松井くんとは面識ないけど?』か……そうだな、田神とまともに話すの初めてだな。


「外、寒いだろ……あたたかい所で少し話さない?」


 近くには大衆食堂ファミレスなどがある。


「待ち合わせ中だから!」


 初対面だからか警戒されているな。


 まあ田神とは面識も接点もないし……ってか改めて俺の服装ファション、季節外れもいいところだな。


「振られたん、曽根そね 海人かいとに?」


 核心をついてみる。


「どうして、それを?」


 俺は目を伏せて何か考え、溜息ためいきをついた後に、ポケットから携帯スマホを取り出す。


 『携帯スマホケース、めちゃくちゃデコってる!』……やったの俺じゃないけどな。


 サッサと携帯スマホを操作した後、ほいっ、と田神に携帯スマホの画面を見せる。


 それは


「LINE?」


「そう、学級クラスのグループLINE」


 さっき見ていた学級クラスのグループLINE。


学級クラスのグループLINE……そんなのあったんだ」


 『初知はつしりなんですが。』……え。


本当マジ?」


 グループ名が『学級ライン』だからてっきり田神も入っていると思っていたけど。


 でも田神が知らないってことは……そういう事?


「ここ読んでみて」


 どんな反応するかな。


「ん、【速報:腐女子JK田神、振られる!】……はあ」


 案外、落ち着いているな。


「曽根はグループLINEで田神をさらし者にしてる」


 『何で?』……俺にも分からないけど


「田神……真実を知りたいか?」


 真実というよりも俺の推測だけど……学級クラスのグループLINEで田神が振られたことを曽根がさらしてる事、それと俺がここに現れた理由。


 『知りたい!』……こくん、とうなずく田神。


「曽根海人は浮気してた。クラスメイトの別の女子と」


 しかも相手は……おっと、冷静にならないとな。


「え。じゃあ私が腐女子だから別れるっていうのは……」


 俺は目を伏せて言う。


「建前だ……田神と別れる。実際には、クラスの一軍トップカーストと付き合ってるよ。寝取ってやったぜって、LINEグループで自慢してる」


 話す俺の語気が、つい怒気をおびる。


「寝取られたの……俺の彼女なんだ」


 『うん、それは怒っていいと思う!』か……ありがとう田上。


「もう同級生クラスメイト全員ぜんいん、俺達が振られたこと、寝取られたこと知ってる。」


 何で俺達、公開私刑されているのかな?


「今から一緒に殴りに行こう!」


 スゲー昔の曲、知ってんな……俺は首を横に振る。


「俺……いいこと思いついた」


 そう言って俺達は近くの大衆食堂ファミレスに入った。



次話、書き下ろしです。



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