5話~幼女姿のドラゴンが仲間になりました~
人は陸に生まれ、蒼に憧れる。
「カア?」(今、なんて?)
現在、自分こと望月大和は耳にした――いや、耳に入ってきた内容を疑っている最中だった。なぜなら――
「わらわがついていってやると言っておるのじゃ。文句はなかろう?」
自分の目の前にいる幼女の見た目をした馬鹿ドラゴンが、また訳の分からないことを言っていたからだ。
「カア、カア」(いや、文句っていうか、迷惑なんだけど)
「迷惑、じゃと……⁉」
「カア」(うん、迷惑)
自分のストレートな発言に肩を落とすドラゴン。すると、急に「ふふふ」とか怪しい笑い声を上げながら自分の方を睨んできた。――大抵、こういう顔をしてるやつは碌なことを言わないのは分かってる。ただし、分かっていても行動が出来るかどうかは別問題だ。なぜなら今現在、自分の体は金縛りにあったように動かないのだから。まあ、その原因は目の前にいるドラゴンが無意識に発している重圧の類なんだろうけど。
「迷惑……そうか、迷惑か。じゃが、人間の言葉には「信念」というものがあるらしいのう?」
ああ、さっき言い忘れたが、大抵の場合、こういう時は碌な出来事も起きないのもお約束だったな。……あえて先に言おう、ダレカタスケテ。
「わらわは「信念」とやらに基づいて、おぬしが首を縦に振るまでどこまでもつきまとってやろう」
はい、面と向かってストーカー発言されました、はい。正直、迷惑を通り越して身の危険すら感じるんだが、気のせいだろうか? ――ぜひ、いや、間違いなく気のせいであってくれ。つか、信念にするんならもっと別のことにしてくれ。
結局、その後もなんとかこのドラゴンがついてこないようにあの手この手と策を弄してみたものの、大した成果――というか、ドラゴンが首を横に振るという結果は得られず――
「カア」(分かったから、もう好きにしてくれ)
苦節一時間を経て、最終的に自分の方が根負けしたのだった。
それから三十分後。
森から出てきた自分と幼女な見た目のドラゴンは、自分が昨日立ち寄った町へと向かっていた。
自分はドラゴンの肩に乗りながらぼんやりと考え事をし、ドラゴンの方は幼女の姿のまま、周囲の景色をワクワクした様子で見渡していた。
「カア、カア」(なあ、聞きたいことがあるんだけど)
「なんじゃ、わざわざわらわに尋ねることなのか?」
楽しみを妨害された様子のドラゴンが面倒くさそうに自分の方を見る。
見た目らしく頬を可愛らしく膨らませたドラゴンだが、そんなことは自分には関係ない。こっちは余計な枷を外すために精一杯なのだ。――まあ、枷が外れたところで雀の涙程度のステータスに代わりは無いのだが、それでも今後のステータスの伸びしろを潰されてはたまったものではない。――もう一度言うが、自分の選んだ種族の関係上、雀の涙程度のステータスしかないのだから。
「カア」(実は――)
ドラゴンがわずかにでもこちらに興味を持ったのをいいことに、そのまま自分は自身のステータスにかかっているデバフである「メグマレタモノ」について尋ねる。
自分の説明を聞いて首を傾げるドラゴン。どうやら、ドラゴンの持つ「龍族の叡智」とやらでも――
「そもそも烏は肉じゃろう?」
「カア?」(ふぇ?)
分からないらしい――って、烏が肉食? え、いや……え?
ドラゴンの口から告げられた内容に困惑する自分。いや、確かにほかの鳥類の雛や犬猫の子供を連れ去るみたいなのは聞いたことがあるが……
「奴らは何でもついばんでおるからのう、勘違いするのも仕方はないことじゃ。じゃが、主に食すのは肉じゃぞ」
「カア」(まじ?)
つまり自分は、この余計なデバフを解除するために、未来のある、幼い子供たちを食べなければいけないかもしれないということなのか……? 嘘だ、嘘だと言ってくれ。
思わず、わずかな希望にすがるようにドラゴンの瞳を覗き込んでしまう自分。だがドラゴンの方は――
「まじじゃ。……おぬし、わらわに「常識がうんたら~」とか言っていた割には抜けておるのう?まあ、その「メグマレタモノ」とやらが消えるまではわらわが守ってやろう」
にやにやしながら自分の方を見ていた。その間違いなく小バカにしているであろう瞳は紫紺のように透き通っており、子供っぽく輝いていた。
「カア……」(腹立つ……)
思わず現実でわなわなと手が震えてしまう感覚を覚える自分。
だがこいつのとった行動は、中身がこの阿保ドラゴン出なければ、仕草だけで下手をすれば黙って許してしまいそう――というか、尊さに撃ち抜かれてしまいそうなほどに可愛い。
このドラゴンが取っている人型は、将来成長すれば間違いなく「美女」と言える「原石」だ。だからこそ――
(こんな阿呆が中身だと思いたくない……!)
「……何やら失礼なことを思われとる気がするんじゃが、気のせいか?」
「カア」(気のせいじゃね?)
意外にも鋭いドラゴンの台詞に適当に相槌を打つ自分。すると、ドラゴンが不意に前方を指さした。
「そうか、ならば良い。――ほれ、もう町が見えてきたぞ?」
ドラゴンの指さした方向へと視線を向ける自分。そこにあったのは、昨日自分が立ち寄った巨大な鐘のある町だった。
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