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1話~ゲームスタート~

人は陸に生まれ、蒼に憧れる。

 フリー・ライフ・オンライン。略称「FLO」。

 その正式サービスとなったある年の八月。以前からVRかどうかを問わず様々なMMO系RPGをプレイしてきた自分・望月大和は、初のVRMMORPGであるFLOことフリー・ライフ・オンラインにログインするために細かな配線を整えている最中だった。


「ケーブル接続OK。ヘッドセット稼働確認OK。PC問題無し」


 前情報にはなるが、FLOはベータプレイヤーの間では「第二の生き方」と呼ばれており、今までのMMORPG系ではありえなかったような()()()()()()()()()()という、誰が予想したであろう濃密なキャラクターエディットが楽しめる作品でもある。

 選べる種にもかなり力を入れているらしく、先ほど述べた人族に加え、人種の派生である獣人族や魔人族、エルフ族やドワーフ族などのいわゆる「亜人族」に加え、ゲーム中で「家畜」とされている牛や豚、鶏。さらにはフェンリルやドラゴンなどの「魔獣」やスライムなどの「魔物」など、実に色とりどりのキャラクターが制作できるのだ。

 そしてここからがFLOの真骨頂ともいえる部分であり、ベータ時からプレイヤーたちを騒がしてきた()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という機能。

 これは文字通り()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という機能である。だがこれはそこが全てではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という、ある意味「RPGゲームとしての魅力を捨てた」とも言える機能なのだ。つまるところ、従来のゲームのようにレベルを上げてのゴリ押しが不可能といえる機能だ。なぜなら個体ごとに先天的に上限値が決まっているからだ。


「ようこそ、フリー・ライフ・オンラインの世界へ。私はナズナ。この世界――ペトルデシアを見守る神です」


 配線等を終えVRメットを装着する。すると目の前に真っ白な空間が広がり、自分はいつの間にかこの世界の神を名乗る人物と接触していた。

 その見た目は、間違いなく桃太郎に出てくるような、黄色を基調とした縞柄の下着を身に着け頭部に小さいながらも角が生えた鬼。どうやら鬼は女性らしく、その下着は下半身だけでなく胸の部分にも巻かれており、その下には女性であることを強調する2つの膨らみがあった。


「この姿に疑問を持ったでしょう。ですが、ペトルデシアでは、あなたたちの世界で言う「鬼」が世界の神なのです」


 まるでこちらの心の声を呼んだかのような台詞を口にした鬼の姿をした神・ナズナ。すると急に、目の前に様々な内容の書かれたウインドウが広がった。


(……さっき同意したばかりだろうが!)


 そのウインドウの内容に、小さな怒りを覚えながら同意する。2重で規約に同意させるとか、意味あるのか?

 その直後、ウインドウが一度消えたかと思うと、再度出現する。

 自分がその内容を見て戸惑っていると――


「焦らずに決めてください。これはあなたの能力の限界を決める質問――あ、善人でも悪人でも限界が高くなるわけではないので」


 ナズナが自分の心を読むように注意事項を口にする。さすがは神様、ここでプレイヤーが考えるような内容は全て読んでいるらしい。なお、この辺はベータ版をプレイしたプレイヤーからもいくらか上がっていた情報なので、今更驚くこともない。


(ま、むしろそんなことでステータスの上限が変わられたら困るけどな)


 嘲笑うような鼻息と共に、自分は目の前に浮かんでいるウインドウを眺める。すると、ある種族の項目が目に留まった。それは「烏族」という、種族名だけですべてが完結しているような種族だった。


 ――鴉族。

 分類は「鳥」でありながら、人種系列と変わらない知能を持ち、その知能と暗闇のような体から、一部の種族からは「死神の使者」と呼ばれる。

 そのため一部の国家では害獣の扱いとされている。

 ステータス INT、DEX、LUKが伸びやすい。

 スキル(いずれも初期レベル表記)

 烏の頭脳 人種同様の思考を出来る。ただしNPCレベル(なお現実の人間と変わらない)。

 漆黒の加護 物理・魔法攻撃威力半減。ただしダメージ値二百まで。それ以上は二倍のダメージ。

 死神の加護 即死系スキル無効。ただし発動には条件あり。条件は――――。

 闇の使者 闇属性系魔法効果をすべて二分にぶ増しにする。



(前情報では人族以外ほぼ外れとのことだったが……きちんとレベリングをして戦い方の研究をすれば十分に戦えるんじゃないか?)


 烏族の説明に一通り目を通しながらそう思う。

 前情報ではあるが、FLOにおける闇属性魔法というのは、敵へのデバフや自身へのバフを得意としているらしい。例としては、敵に防御力低下のバフをかけたり、自身へ攻撃力を増加させるバフをかけるなどだ。

 一見して「闇属性最高じゃない?」と思った面々もいるだろう。だが烏族含め、人種以外が「外れ」とされたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からである。

 いくら上限値がランダム形式で決まるとは言っても、素のステータスで差がありすぎるのだ。――大げさではあるが、人種系列とそれ以外の種族の場合、意味通り「雲泥の差がある」といえばいいだろう。

 そして闇属性魔法はかなり癖の強いものが多く、基本的に対象は単体。多くても3体までであり、現状確認されている攻撃系闇魔法は「ダークバレット」と呼ばれる、わずか三発の弾丸を放つだけの魔法だ。そしてその威力は、至近距離で放ってもデコピンをされた程度の威力しかない。


(だが、さすが最底辺の不遇種族。中途半端な性能のスキルはともかく、ステータスが雀の涙程度しかない)


 ちなみに、そんな中でも特に外れと言われたのが「烏族」「小人族」の2種族と「家畜」に分類される種族である。

 これらは先ほど述べた通り、ステータスが低いという特徴に加え、烏族は不遇扱いの闇魔法。小人族は魔法を使えない。家畜は魔法使用不可、スキル無しという所業である。

 これでは不遇職――いや「不遇種」に就く人間はいないのでは?と思うだろう。だがベータで家畜種に就いたらしき面々からの情報がかなりの数上がっていた。……まあ、そういうことだ。

 だが自分はなぜか烏族のスキルに惹かれるものがあったらしく、現状において今後変更できない大事な項目を勢いだけで決めてしまう。


「烏族……本当にこれでよろしいですか?」


 自分が烏族の項目からOKをタッチすると、何処かで聞いたことのあるような台詞が「はい」「いいえ」の選択肢と共にウインドウ上に表示される。

 本当は烏ではなくまともな人族系列になろうとしていたのだが、なぜか運命に近い感覚を覚えてしまった自分は「はい」を選択してしまう。


「烏族の――(名前を入してください)」


「はい」の選択肢を選んだあと、プレイヤー名を登録する場面になる。だが大した名前を考えていなかった自分は適当に「シナノ」と名付けてしまう。


「信濃。現在の長野県辺りを指す言葉ですね。ちなみに、信濃は武田信玄の根拠地でもあり、大和型三番艦を改造した装甲空母であり――」


 すると、どういう訳か、神であるナズナのスイッチが入ったらしく、しばらくの間うんちくを聞かされる。頭から密度濃すぎだよ。

 やがて、うんちくが終わったらしきナズナが咳ばらいをし本題へと戻り、いよいよゲームの世界へ案内してくれる――


「では、これで準備は完了です。ここからはダウンロードが終了するまで私の世間話にお付き合いください」


 ――というわけではなかったらしく、ナズナが信濃という装甲空母に関するうんちくを再び話し始める。おかしいな、自分が買ったのはアプリゲーじゃない普通のカセットタイプのなんだが。

 その後ナズナの世間話という名のうんちくをひたすら聞かされた自分は、彼女が口にした「では、今からペトルデシアへと案内致します」という台詞に、わずかに前のめりになる。

 そんな自分にわずかに苦笑を零すナズナ。だがそれを視認した頃にはゲーム世界へと飛ばされ始めたらしく、光の粒子となって消え去った。

シナノ「鳥じゃねえ、烏だっ!」

今話作業BGM VisualArts/SummerPockets Original SoundTrackより「日射しの暇」「宿題は8月32日に」の2曲


pixiv、アルファ、なろう様同時で「My Diary」、アルファポリス様のみで「WORLD CREATE」を連載中です!


なろう様作品一覧→https://mypage.syosetu.com/mypage/novellist/userid/1620560/


アルファポリス様→https://www.alphapolis.co.jp/novel/51413550/969403698

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