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コード・ストーリー・オンライン  作者: トカイナカ
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第4話

 「うーん、難しいな」

 始まりの街の中のとある宿屋の一室、そこには膨大な矢の山が積み上げられている、しかしよく見ると、どの矢も少し曲がっていたり(やじり)の部分が歪んでいる。

 錬金スキルを身につけてから二日間、俺はひたすら矢を作る練習をしていた。

 これがかなり難しく、現状の成功率は10本に1本。

 「何が問題なんだろうなー」

 手順にこれといった間違いは無い、スキルレベルの方も何度も練習していたおかげで3まで上がった。

 「おっと、もうこんな時間か」

 時計はいつの間にか午後5時を指していた。一回ログアウトして洗濯物を取り込まないとな。


 「たっだいまー!」

 「お帰りー」

 勢いよくドアが開く音と供に雫が帰宅する。

 「やっと終わったー、明日から休みだー!」

 例のごとく雫がソファーにダイブする。

 「そういえば塾の夏期講習は今日までだったか」

 雫が通う塾は基本夏は休みなのだが、成績が一定以下だと1週間の夏期講習を受けることになるらしい。

 「いやー、これでようやく私もCSOデビューできるよ」

 「やるのは良いけど宿題もちゃんとやってからにしろよ」

 「う゛っ」

 親戚の兄さんは雫の分のCSOの本体とソフト一式も送ってくれたのだが、こいつに渡すと勉強そっちのけでドはまりしそうだったので今まで俺が管理していたのだ。

 「わっ、分かってるって。それより、明日はちゃんとCSOを案内してよっ」

 「はいはい、わかったよ」


 「さてと、じゃあまずは中央広場に向かわないとな」

 CSOにログインすると、俺は昨日ログアウトした宿屋の部屋にいた。

 俺のように一度CSOにログインしたことのあるプレイヤーは、再びログインした際は前回ログアウトした位置からスタートする、だが雫は今回が初めてのログインなので始まりの街の中央広場からのスタートになるのだ。

 「まあ、まだキャラメイクしてる頃だろうし、のんびり行くか」

 宿屋を出て中央広場広場までの道を歩く、こうして見るとあまりのリアリティに改めて驚く、このゲームがここまでの人気を持つのも納得だ。

 「おいなんだよこの剣は!すぐに折れちまったぞ!」

 何やら怒鳴り声が聞こえ辺りを見ると、一人の男性プレイヤーが屋台にいるフードをかぶった女性に怒声を浴びせていた。

 「ですからこちらは事前に説明をしましたし、その上で購入したのはお客様の方で・・・」

 「うるせぇ!いいから金払え!」

 屋台にいる女性の方はどうやらプレイヤーのようだが、いったいどうしたのだろうか。

 「あの、いったいどうしたのでしょうか」

 「えっ、!?」

 「なっ、お前いつの間に!?」

 話しかけたらなぜか驚かれた、『隠密』は使っていないはずなんだが。

 「いえ、通りかかったら何やらもめていたので話しかけただけなのですが、いったいどうしたのですか」

 「ええっと・・・じつは・・・」

 「お前は関係ねぇだろ!引っ込んでろ!」

 訳を話そうとする女性と怒鳴り散らす男性、これは女性の方から聞いた方が良さそうだな。 

 「すみませんがいまはこちらの女性に話を聞いているのでお静かにしていただけないでしょうか」

 「なっ・・・!」

 俺が今ので引くと思っていたのか、男は唖然とする。

 またしゃべり出す前に話を聞いてしまおう。

 「えっと、とりあえず何があったのか聞いてもいいですか?」

 「はっ、はい、実はですね・・・」

 女性の話によるとこうだ、この女性は最近屋台を出すようになった『錬金術師』のプレイヤーで、CSOを始めてから日が浅く、練習で作ったやや品質の低い剣を格安で販売していたらしい。

 この男性は先日その剣を購入したらしく、その際女性はNPCが作る物より品質低いことはちゃんと説明したらしい。

 そして今、その剣が折れたせいでボスに負けたから剣の代金とそれまでに使ったアイテム代を弁償しろと言っているらしい。

 「・・・この場合、こちらの女性は事前に説明をしていた訳ですし、こちらの女性が弁償する必要は無いと思いますが」

 「あぁ!だからお前は関係ねぇだろうが!」

 このままじゃいつまでも終わりそうにないな・・・しょうがない。

 「いい加減にしたらどうだ、他人に責任を押しつけて、恥ずかしくはないのか?」

 「なっ!」

 あまりのも豹変ぶりに驚いたのか、男がくちをパクパクさせる。だが、言われた意味に気付いたのか、見る見るうちに顔を赤くさせる。

 「上等だゴラァ!だったらオレと決闘して勝ったら見逃してやるよ!」

 「はぁ、見逃すも何もそちらに責任があると思うんだが・・・いいよ乗ってやるよ」

 <プレイヤー、アグナから決闘を申し込まれました。受理しますか?>

 はい ←

 <了解、決闘開始まで10秒。9,8,7,・・・>

 突如周囲の風景が街並みから森に変わる。

 「言っておくが、オレのレベルは12だレベル9のお前なんて一ひねりだ!」

 俺はレベルを教えた覚えはないのだが、鑑定的なスキルでも持っているのだろうか。

 「はっ、やれるもんならやってみろ」

 <・・・2,1,0,決闘開始>

 決闘の開始と供に後ろ斜め上へ跳躍する、男は踏み込みながら剣を横に振るうが空振りに終わる。

 「『ウォーターボール』」

 俺はそのまま後ろの木に飛び乗り、男の顔面に向かって水の玉をぶつける。

 「うわっ!めっ目が」

 男は目に水が入ったらしく目をこする。

 「『隠密』、『アサルト・アロー』」

 そのすきに俺は距離を取り『隠密』を発動、男の認識から外れ『アサルト・アロー』を放つ。

 「どっどこに、ぐあ!?」

 通常の4倍の威力を持つ矢が男に命中するが、まだ倒れないようだ。

 「どこにいやがる!出てこい!」

 「出てこいと言われて出てくる馬鹿がいるか。『アサルト・アロー』、『アサルト・アロー』、『アサルト・アロー』」

 位置を悟られないように移動しながら『アサルト・アロー』を連射する。

 「ぎゃっ!?、ぐあっ!?、ごふぁ!」

 全弾命中、後一発も撃てば勝てそうだな。

 「ふざけやがって、『ワイルド・スラッシュ』!」

 「なっ!」

 男が振り返りながら横薙ぎに斬撃を繰り出し周囲の木々が切り倒される。

 それは俺が乗っていた木も例外ではなく、俺は地面に落とされてしまう。

 「ヘッヘッ、見つけたぞ」

 どうやら見つかってしまった様だ、男は好機とばかりにこちらに向かってくる。

 「『アイスランス・アロー』!」

 俺はすぐさま魔矢を生成し、男の足下に向かって放つ。

 「ッ、クソッ!」

 慌てて撃ったせいで狙いが少しずれてしまったが『アイスランス・アロー』は範囲攻撃なので問題は無い。氷の槍は男を貫き、その場にとどめる。

 「とどめだ『強射』」

 「ガッ!」

 残りわずかだった男のHPは全損し、男は光の粒子となって消えた。

 <プレイヤー、ハルカの勝利を確認。フィールドへと帰還します>

 周囲の風景が街並みへと戻る、そこにはいつの間にやら人混みが出来ていた。

 「あっあの、ありがとうございました」

 「いえ、やりたくてやったことですし」

 女性がお礼を言ってくるが、今回は自分で首を突っ込んだだけだし、礼を言われる筋合いはない。ちなみに男は「おっ、覚えとけよー!」といって走り去ったそうだ。

 「そっ、その、出来ればこの後お茶でも・・・」

 「あー!もうこんな時間!?急がないと、ではまた!」

 「えっ、えー!?」

 やばい、雫のこと完全に忘れてた。

 焦った俺は全速力で中央広場へと向かったのだった。

 



 

 

 

 

 

 最近肩が痛い。

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