第3話
『ブモォォ!?』
「うーん、だめかー」
頭の中に流れるメッセージを読んでつぶやく。
街を出てから30分、オークメイジを20匹ほど倒したのだが、未だに『錬金のスキルブック』はドロップしない。
おかげでレベルは9まで上がった、だから幸運のステータス値も上昇しているはずなのだが、ドロップするのは『オーク肉(中)』『魔法の杖』『魔石(C級)』後たまに『赤魔法のスキルブック』『青魔法のスキルブック』
だけである。
「おい、そっち行ったぞ!」
「おう!」
少し離れたところから声が聞こえる。『隠密』を維持しながら近付くと、男二人組がオークメイジと戦っていた。
『ブォォ!』
オークメイジが赤魔法『ファイヤーボール』を放つ。
「はっ!」
大剣を装備した男がそれを防ぐ。
そのすきにもう一人の男が槍でオークメイジの胸部を穿つ。
『ブギャァァー!』
それによってHPが全損したらしく、オークメイジは光の粒子となって消える。
するとメッセージを確認したのか槍の男が叫ぶ。
「よっしゃあ!『赤魔法のスキルブック』ゲットだ!」
「おおやっとか!」
男二人組が喜びの声を上げながら街の方へと向かっていく、それを見て俺は1つの考えが頭に浮かんだ。
「もしかして、オークメイジの使う魔法とレアドロップは対応しているのか?」
さっきのオークメイジは赤魔法の『ファイヤーボール』を使い、『赤魔法のスキルブック』をドロップした。
つまり、『錬金のスキルブック』を手に入れるには、『錬金』がつかえるオークメイジを倒す必要があると言うことになる。
「でも、そんなのどうやって見分ければ良いんだよ」
俺の戦い方は『隠密』と『弓術』を使って、遠距離から一方的に仕留めるという物だ。
だが、相手がどんな魔法を使うのかを見分けるには、相手に認識されなければならない。
「いや、そういえば」
昨日俺がHPポーションを買った道具屋は、今日通った住宅街にあった。
『錬金』スキルでは矢の他にも各種ポーションも作ることが出来る。つまり・・・
「こいつらの巣に行けば良いのか?」
「ここがそうなのか?」
近くにある最も高い木俺はそれを見下ろす。
そこには木で出来た塀に囲まれ、その中にはあばら屋が乱雑に建てられている、巣というよりかは集落と言った感じだ。
日中は出払っているのか、建物の数に対してオーク達の数は少ない。
「つまりは狙い目ってことか」
魔矢を弓につがえる、ここから集落までは目測で約30メートル。
「いけ、『強射』」
『ブゴォ!?』
矢をに当たったオークの魔物(遠目なので種類は判別出来ない)が一撃で倒れる。
<ハイオークを倒しました>
<オーク肉(中)を獲得しました>
<ハイオークの牙を獲得しました>
<魔石(C級)を獲得しました>
どうやら今のはハイオークという種類らしい、魔石から考えるにオークメイジの物理版だろうか。
「まっ、どっちでもいいか」
集落の方を見ると、今の叫び声を聞いたオーク達が集まる。
最初からオークメイジに当たるとは思っていない、一射目の目的はオーク達を一カ所に集めることだ。
「『バースト・アロー』」
上に向かって放った魔矢が放物線を描いて集まったオーク達に着弾し、爆発した。
スキルブックで獲得した『赤魔法』とレベル3まで上がった『弓術』の合わせ技、『バースト・アロー』。
魔矢を使っているときのみ使用可能な技で、威力は『赤魔法』のスキルレベルと『弓術』のスキルレベルの合計で変化する。
今ので20匹ほど集まったオークのうち、10匹のオークと2匹のハイオークが死んだらしい、残りは8匹。
「『アサルト・アロー』」
今度は矢を弓につがえ、下方に向かって一直線に放つ。
放たれた矢は一匹のオークに命中し、その直線上にいたオークをまとめて貫いた。
弓術レベル3『アサルト・アロー』、発射時相手がこちらを認識していない場合、通常攻撃の4倍の威力を発揮する技だ。
今ので倒した4匹のオークのうち3体がオークメイジだったが、『錬金のスキルブック』は落とさなかったようだ。残り4匹。
「終わりだ、『アイスランス・アロー』」
放った魔矢は『バースト・アロー』同様地面に着弾し、そこを中心とした半径5メートルの範囲に無数の氷の槍が出現する。
その槍はオーク達を無慈悲に貫き、光の粒子と変えた。
『アイスランス・アロー』、効果はご覧の通りで『バースト・アロー』の青魔法版だ。
頭の中にメッセージが流れ、その中にお目当ての物を発見して思わず笑いをこぼす。
<錬金のスキルブックを獲得しました>
カツカレー美味しい