第1話
「さて、こんなもんかな」
目の前の画面には俺、黒川 遥と全く同じ顔立ちの男が映っている。
違うところと言えば、目と髪の色が日本人ではあり得ないような白髪赤目である事だろうか。
コード・ストーリー・オンライン。今年の春に発売されたばかりのVRMMOゲームで、ゲームの世界観としては王道物の剣と魔法の世界だが、五感の再現クオリティが高いと話題で、その人気から7月になった今でも品薄状態が続いている。
本来であればただの高校生に過ぎない俺が手に入れられるモノではないのだが、親戚の兄さんがそのゲーム会社に勤めており、夏休みに是非遊んでみてほしいと送られてきた次第である。
『キャラメイクを終了します、よろしいですか』
・はい ←
・いいえ
「はい」
『了解しました。ようこそ、コード・ストーリー・オンラインへ!』
直後、目の前が真っ白になり思わず目をつむる。
光が収まり目を開けると、そこにはヨーロッパの様な街並みが広がっていた。街の中は俺と同じ駆け出しのプレイヤーや、一見プレイヤーと見分けのつかないNPCが営む屋台でにぎわっていた。
「すごいな、これは」
そよ風が体をなでる感覚、街道の屋台から漂う串焼き肉の匂い、それら全てが現実の物とまるで遜色がない。
『ようこそコード・ストーリー・オンラインへ、ステータスを表示します』
「うおっ!?」
いきなり画面が現われたので驚いてしまった。
画面には、今の俺のステータスが表示されている。
ハルカ
職業:弓使い
レベル:1
HP:30/30
MP:10/10
筋力:12
耐久:7
俊敏:14
幸運:10
スキル
弓術:LV:1
隠密:LV:1
これが現在の俺のステータスだ。スキルのチョイスは、「相手に気付かれずに遠くから攻撃できれば強いんじゃね?」というアイデアからだ。
「さてと、まずはアイテムをそろえないとな」
個人的には外のフィールドも早く見てみたいが、街の外には魔物が存在する。
俺はまだレベル1であり、HPが心もとないので道具屋に寄ってHPポーションを買う。
「よし、準備完了」
街道を南に進み街の外へと出る、どうやら最初の街周辺は草原のフィールドらしく見晴らしが良い、レベル上げをしているのか魔物だけでなく所々にプレイヤーも見られる。
「まあ、物は試しだな」
この辺りに出現する魔物は角の生えた兎である、まず始めに『隠密』スキルを発動させ、角兎(仮)の背後に立つ。
距離は5メートルほど、弓は使ったことがないが、『弓術』スキルを信じるとしよう。
「いけっ!」
『ギャッ!?』
突然背後から襲ってきた矢に角兎が驚きの声を上げる。
一撃では仕留められなかった様だが、角兎は辺りをキョロキョロ見渡すだけでこちらに気付いていないようだ。
「なら・・もういっちょ」
『!?』
今度は絶命したようで、角兎は困惑した様子のまま光の粒子となって消えた。
<ラビットホーンを倒しました>
<レベルが上がりました>
<ラビットホーンの毛皮を獲得>
<ラビットホーンの角を獲得>
<ラビットホーンの肉を獲得>
<魔石(E級)を獲得>
頭の中にメッセージが流れる。どうやら『隠密』と『弓術』の組み合わせは中々強いらしい。
それを確認した俺は、その後数時間の間兎狩りに没頭した。