陽呼子、特に何もない日
陽呼子は遅く目が覚めた。
今朝は、なぜか、流湾、鮫郎、佳夏とあともう一人知らない人と一緒にパーティーに参加する夢を見た。
今日は特にすることがない。
春休みで学校もないし、今日はバンドの練習もない。
バイトもないし、その他にもすることは特になかった。
今は家から出る気も起きない。
陽呼子は、スマホを開いた。
すると、流湾からメッセージが届いていた。
『今、実家に帰っているんだけど、昨日、偶然、鮫郎に会った!鮫郎のせいで海まで走ったら、超きつかった! 本当、鮫郎ってやつは・・』
その文章の後に、川沿いを走る写真が貼られていた。
陽呼子はそのメッセージに
『川沿いをランニング、いいね!』
と返して、ヒヨコスタンプを押した。
陽呼子は、次に動画サイトを見ていた。
陽呼子は最近、ゲーム実況をみることが好きである。
好きなゲーム実況者の動画がある。
その動画を陽呼子はクリックした。
ゲーム実況動画がスタートした。
「今日は、『ベイエリアファンタジー』を実況していきたいと思います!」
陽呼子の知らないゲームである。
ジンベエザメのキャラが海の怪物を倒していくというゲームのようで、陽呼子はその実況をみて、感動した。
「なんて、うまい実況なんだろう。とてもおもしろい。私、バンドのライブで歌の紹介とかをする時、とんでもなく話が下手だから。こんなに流暢に話せたらいいなぁ‥
だって、ジンベエザメが変な顔をして、ペンギンを威嚇させるだけのとてもくだらないゲームをこんなにおもしろく実況できるんだから!」
そんな調子で、陽呼子はゲーム実況動画をいくつか見た。
次に陽呼子は、好きな男性アイドルの動画を見ていた。
「やっぱ、ダンスはかっこいい!」
陽呼子はロックミュージックが好きだが、男性アイドルも好きである。
何よりかっこよかった。
「もし、流湾くんがこんなにかっこよかったら・・すぐに付き合いたいのに・・」
と心の中では思っていた。
絶対に言わないけど・・
そうやって、動画を見ているうちに時間は過ぎていた。
「やばい! 動画を見すぎた!」
そう思った頃には、動画を見始めて3時間くらい経っていた。
陽呼子は、夕飯のために買い物に行かなければならない。
冷蔵庫の中はほぼ空だった。
「あぁ・・動かないと・・」
「本当、家から出る時が嫌いだなぁ。」
陽呼子は、自分から体を動かさないと一生、家の中にこもってしまいそうであった。
「まぁ・・そんなこと言ってもしかたないし、今日は休日だし、少しずつ、外に出る準備を始めよう。そういうことで・・次が最後の動画にしようっと!」
「私、意志、弱っ!」
「いつまで、動画をみているの! 」
陽呼子は、小学2年生の海風に言った。
海風は陽呼子の言葉に返した。
「あっと、ちょっと・・」
動画を見ることをやめない海風に陽呼子は言った。
「ほら、お父さんと買い物に行って来てよ。」
「う・・うん・・分かった・・」
海風はやっと動画を見るのをやめた。
「お~い。海風、まだかぁ~。」
海風のお父さんが呼んでいた。
「すぐ、行くよ!」
海風は返した。
「そうだ、海風! ついでに川沿いを散歩しないか?
陽呼子も来るか?」
そんなこんなで、家族で川沿いを散歩することになった。
なんだか、春の風が懐かしく感じた―
(おわり)
読んでくださった方、
本当にありがとうございました!!