2つの顔を持つ男 第4話
慎二郎が部屋に入ると、そこにはパソコンに目を向けている明日香の姿が。
「どうだった?」
その問いに対して、彼女はパソコンから目を離さずに答える。彼女は表向きはバーの看板娘だが、裏稼業では慎二郎の参謀役兼情報収集が役目だ。
「佐伯陽一、確かに伍菱商事に居たわ。」
「居る、じゃなくて、居たという事は・・・」
「正解、3年前に横領で懲戒解雇されてる。どうやら、女遊びが過ぎて会社の金に手を付けたようね。」
「って事は、今は無職でプータロー・・・いや、強請りタカリが職業か。碌な生き方、してないねえ。」と言いながら、彼は机の上の缶ビールを取って飲む。
「それ、あたしのなんだけど・・・」と、不機嫌な表情の明日香。
「まだ、冷蔵庫にあるだろ?で、職業以外のこいつの情報は?」
「えーっとね・・・佐伯陽一、歳は31歳。両親は幼い時に事故で亡くなり、高校迄は祖父母に育てられたらしいわ。上京後に祖父母も亡くなり、今は天涯孤独の身ね。」
「天涯孤独・・・言い方を変えれば、失くす物のない人間ってヤツか。」と、慎二郎。
「そうね。金も仕事もない、係累も居ない、あるのは自分の体1つ。失くす物のない人間程、厄介なヤツは居ないわよ。」と、明日香は煙草を銜えながら呟く。
「まあな・・・ただ、こうとも言える。仮に居なくなっても、誰も困らないし探さない。つまり、始末をするのは簡単って訳さ。」
「なるほど・・・天の邪鬼で捻くれ者のあんたらしい考え方だわ。」
「お褒めいただき、光栄だね。」
「褒めてねーわよ。で、天の邪鬼の捻くれ者はどんな方法でこいつを始末する気?」
「単純だが確実な方法がある。ま、楽しみにしてな。」と、慎二郎は不敵な笑みを浮かべた。