忘れられた初恋
『お前なんて好きじゃない!大っ嫌いだ!!』
花火の音にも負けないくらい大きな声ではっきりと私の耳に伝わった彼女の声…
忘れもしない。
あれは小学5年の夏。
これは私の初めての恋の話。
ーー時は流れて現在ーー
「うっし、じゃあホームルーム始めっぞー」
気だるそうに教室には行ってきたのは私の担任の田口。いつもだるだるのネクタイをしてシワシワのシャツを着て寝癖も少しついている。これでも教師のなかではなかなかの偉さらしいから驚きだ。
「起立ー礼ー」
高校生になった私はクラス委員長を渋々請け負っていた。
今日もやる気なしの号令で何気ない1日が始まろうとしていた。
本来ならこの後に田口が出席を取らなくてはならないが、田口はめんどくさがりなのでいつも取らずに連絡事項を伝えてすぐ職員室に戻ってしまう。
が、今日は少し違った。
「今日は転校生がきてまーす。女の子でーす。」
転校生っと言う言葉よりも、その後の女の子と言う言葉にクラスがおおおおおっと反応した。特に男子が。
「はいはい、静かにー。んじゃあ入ってきてー。」
田口が廊下に向かってそう呼び掛けるとゆっくりと教室の扉が開いた。
おおおおおおおおお!!!!かーーわーーーいーーー!!
『(びくっ)』
男子達が一斉に声をあげるので転校生は入る前から緊張してしまった。
「えっ!!!」
私もビックリして席を立ち上がった。
彼女は忘れもしない…
髪は長くなり胸の辺りまで伸ばしていて、肌も白すぎず、黒すぎ、健康的な色、顔立ちも大人びてて、まさに清楚!
しかしあの頃の面影がしっかりある。
彼女だ!!なんでここに!?
動揺を隠しきれずおどおどしている間に転校生は黒板に自分の名前を書き終えていた。
『み、皆さん初めまして。〝転校生〟です。よろしくお願いします。』
間違いない!!彼女だ!!
私の初恋の彼女だ!!!
「おーい。委員長ーいつまで突っ立ってるんだー?」
「あぁぁ、すみません」
田口に注意されやっと我に帰った後彼女と目があった。私は小さく手を振ったが彼女の方はきょとんとしていた。
あれ??もしかしてわかんないのかな?
私もあの頃と全然見た目が違うからわかんなかったのかな?
「委員長ー」
「あ、はい」
「お前ホームルーム終わったら校舎案内してやってー。俺たるいからさー。1限の俺の授業でなくていいからー。たのんだー」
「はぁ…わかりました」
クラスの男子達からブーイングが飛び交うなか案内役を指名された。
「んじゃあー〝転校生〟の席はーっと…あの委員長の後ろの席でー」
一部の男子からまたブーイングがあがった。
「はい、ホームルーム以上ねー」
そう言い残し田口が教室を出た。
途端にクラスのみんなが転校生の回りに集まって質問攻めにしていた。
私もその輪の後ろの方にはいった。
「〝転校生〟ちゃんって可愛いよねー!どこから来たのー?」
「部活はー?何かするの?」
「なんで転校してきたの?」
怒濤の質問攻めに丁寧に答えてる姿をみてあの頃の優しいイメージは変わってないんだなーっと思った。
一通りの質問が終わり区切りがいいところで私も輪に参加した。
「久しぶりだね〝初恋の相手〟さん!
『……えっと。誰ですか?』
「え?!ほ、ほら!小学校同じの〝私〟だよー!
『…ごめんなさい。覚えてないです』
こうして小学の時に終わったと思われてた私の初恋が高校2年の春に動き出した。
続く