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死人、出会う

「おらっ入れ!」


フラムは手足を拘束され、縄で繋がれて引きずられながら牢屋の前まで連れて行かれそこに向かって蹴り飛ばされてぶち込まれた。

ちなみにアスを奪おうとしてアスに触った魔族が毒によって倒れてしまったので幸いにもアスはフラムの腰に刺さったままだ。


「ったく、扱い悪いなぁもう」


魔族が牢屋の鍵を閉め、見回りにでも戻ったのか姿が見えなくなってからフラムは口を開いた


「捕まえた不審者に対して優しくするような阿呆がおるわけなかろうに」

「まぁそれもそうか。さてと、どうやって逃げようか」


そう呟き、これからどうしようかと考え始めた時、


「ここから出られるんですか?」


不意にアス以外の誰かから声がかけられた。


「ん?誰だ?」


声のする方に振り向くと、傷だらけのスレンダーな体を丸めて体育座りをしている銀髪ロングの女の子が期待の眼差しを向けてこちらを見ていた。


「あ、失礼しました。私、エルフ族のフィリアと申します。ところでそちらはエルフではないようですが…。もしかしてエルフ以外の種族も襲われているのですか!?」

「俺はフラムだ。襲われてるとかなんとかってのはよく知らん。ここには…まぁその色々とあって成り行きで来ちゃったみたいな感じだ。なんだお前誘拐でもされてきたのか?」

「…はい。実は先日突然エルフの村に魔族が現れて…村で暴れまわるようなことはなかったんですが村の人達を何人か連れ去り始めまして。その内の一人が私です…」

「そんなことがあったのか。魔族もひどいことするなぁ。一緒に連れられてきたお仲間さんはどうしたんだ?別の牢屋か?」

「いえ、同じ牢屋だったんですけど一日に一人ずつ何処かへ連れて行かれて…結局誰も帰ってきませんでした。私も明日には連れて行かれちゃうみたいです」


そう言ってフィリアはその顔に影を落とした。うつむいているフィリアの顔はよく見えないがその顔には確かに悔しさと不安と悲しみが広がり、目には涙が浮かんでいるように見えるのは気のせいではないだろう。


「そうか…」


フラムはかけるべき言葉が思い当たらず相槌を返すにとどまった。


「それでですね。さっき脱獄しようみたいなことをおっしゃっていたのでできれば私も連れて行ってほしいと思いまして。私は村に帰りたいんです!こんなところで魔族に殺されるのは嫌なんです!お願いです…」


フィリアはそう言うと、泣きながらフラムの前で土下座を始めた。

女の子の土下座なんて見ていて気分のいいもんじゃないんだけどな…


「とりあえず顔を上げろよ。土下座なんてしなくても目の前の人間を見捨てて自分だけ逃げるなんてことをするほど心まで腐ってるつもりはねーよ。俺がだいたいのことはやってやれると思うけどお前も少しは手伝ってくれよ?」


フラムが協力の意を伝えると、フィリアの顔が少しだけ明るくなった。


「ありがとうございます…!もちろん出来る限りの協力はさせていただきます!」


「さてと…じゃあ俺の手首辺りを切れる方法何かないか?あるんなら切って欲しいんだけど」

「はい?…え!?そんなこと出来ませんよ!命の恩人候補のフラムさんにそんなこと!私体臭がすこーし酷いくらいでそんな殺人衝動に襲われたりしてませんからお気遣いなく!」


フィリアがあわあわと両手を振る。


「はぁ…やっぱり臭いよな俺…この臭い何とかするためにこの森に来たのになんでこんなところにいるんだ…」

「いえっ!そんな、大丈夫です!臭いません!私、我慢できます!」


フィリアは手を胸の前辺りでグッっとやって大丈夫アピールをしてくる

でも我慢って言っちゃってる時点でもうね…


「はぁ…もういいよどーせ俺は臭いですよ。それより早くやっちゃって。別に死のうってんじゃないから、ほれ一思いにずばっと」


フラムはもう諦めてとっとと切ってもらうことにした


「すみません…。じゃあ良いんですね!行きますよ!【風刃】!」


フィリアがそう叫ぶとフィリアの指先に風の渦のようなものが生まれた。フィリアが指をフラムの手にめがけて振ると、その風の渦は斬撃のような形になり、そのままフラムの腕を切り裂いた。手錠のついた手首が切り落とされると同時に、ブシュッとフラムの血が飛び散った


「ひゃっ!?」


フィリアが可愛い悲鳴を上げ、仰け反る。人を傷つけるのに慣れていないのだろう。そしてすぐにフラムの手を自分が切断したことを思い出し、すぐにフラムの方を見た。

するとフィリアが切り裂いたはずのフラムの腕は何もなかったかのようにフラムの体とつながっていた。しかし飛び散っている血と床に転がっている手首が腕を切ったという事実を裏付けている。


「あれ?なんで?あれ?」

「あーそういえば言ってなかったな。んーまぁフィリアとは戦うことになんないだろうし教えてもいっか。あのなフィリア、俺はゾンビだ。だから大抵の傷は勝手に治る」

「…えーと、ゾンビってあのゾンビですか!?あのなんか体がドロドロしててとてつもない悪臭が体からする魔物のゾンビなんですか!?」

「……ああ、その臭くて汚いゾンビだよ」


やっぱりゾンビって汚物扱いなんだな…と肩を落としながらフラムはそう答えた。


「でもフラムさん、体も普通だし動きも別に遅くないですよね?まぁ確かに臭いはしますし人語を話せるゾンビもたまにいるって聞きますけどフラムさん、ゾンビには見えませんよ?」

「これは簡単に言うと神様のおかげ、っていうか簡単に言わなくても神様のおかげなんだけど。まぁそのことについては追求すんな。説明がめんどくさい」

「なんじゃ主が特別なのは理由があったのか?ワシ聞いとらんぞ」

「いや言っただろ。お前が信じなかっただけで」


そう言ってもアスは覚えがないようで刀の上で?が踊っているようだった。

そんくらい覚えとけアンポンタン幼女


「あのーさっきから誰とお話なさってるんでしょう?この部屋には私達二人しかいないはずなのですが」

「ん?これだよこれ。ほらアス。たまには人型になれよ。フィリアと顔合わせくらいしとけ、脱獄仲間なんだから」


アスを掲げて声の主に出てくるように言う。


「ぜーったいに嫌じゃ。主のあの臭いはもう一生嗅ぎたくない」

「あーそーですかい。悪かったな臭くて。フィリア、こいつは魔剣だ。この世界では魔剣が喋るのは常識の範疇なんだろ?」

「確かに話には聞きますけど魔剣なんて始めて見ました…。すごいんですねフラムさん…」

「すごいっていうか落ちてたのを拾っただけだからなぁ…あ、そうだ。足の錠も外しとかないとな」


フラムは自由になった手でアスを握り、自分の両足を切断しようとその刃を振り下ろした。

しかしその刃が足を切断することはなく、骨にあたって止まってしまった。


「…おいアス。生意気はこのナマクラ具合をどうにかしてから言ったらどうだ?」

「じゃーかーらー!ワシはよく切れなくてもいーんじゃーー!毒で殺すための武器なんだから問題ないんじゃー!」


結局足の方もフィリアに切ってもらうハメになった。ほんともう細かいところに手が届かない魔剣だなまったく。


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