死人、迷う
煽っていたら拗ねて一言も喋らなくなってしまったアスタロトを抱えて歩き出す。
アスタロトの機嫌が治るまで待っているのもアホらしいのでとりあえずまっすぐ進んでいるがやっぱり不安だ。
「おいアスタロトちゃん機嫌直せって、なぁ。せめてこの道があってるかだけでも教えてくれよ。迷っちゃうぞこれ」
「………………」
「おーいアスタロトちゃんってばもう」
「あーもう!ちゃん付けはやめろというておるじゃろ!戯け!」
「お、やっと返事してくれたな。で、道はあってるんだよな?つーか人になれるんだったら自分で歩けやおい」
「剣の一本くらい持っていかんか、そんくらい甲斐性見せろ!。で、道じゃな?ん?んー…、あー間違っとるなこりゃ」
「おおい!ちゃんと言えよ!」
「ワシを怒らせた主がわるいー!むしゃくしゃしすぎて外なんて見とらんかったわ!」
「あーもうこのクソロリババァ!戻る道わかんねぇのか!」
「クソまでつけるんじゃないわ!もうそれ普通に悪口じゃろ!?道など知らん!」
「魔剣はなんでもできるみたいなこと言ってなかったか!?」
賑やかな二人組であった
完全に迷ってしまった。迷子になった時はその場から動くなとよく言うがあれは探してくれる人がいることが前提なのであって当然フラムたちのことを探してくれる者などこの世界には一人もいない。なのでフラム達は適当に歩き回っていた。
あー無駄に疲れる。
4時間ほど彷徨っていると先に人影が見えた。
「道が聞けるぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」
フラムは当然全速力でその人影に向かった。
近づくとその見た目から人族の冒険者らしいということがわかる
その人は急接近してくる何かに驚き、警戒していたようだが人間だとわかると警戒をゆるめた。まぁ本当は人間じゃないんだけどね
「すいませぇん!」
「ん?なんかようkくっさ!」
人を見ていきなり臭いとか失礼な人だぜまったく。しかし相手の態度云々より大事なことがあるのでそぐに質問を投げかける
「タリスの森ってどっちの方か分かりますか?」
「タリス?タリスならこの道をずっと行って分かれ道を右だ」
鼻をつまみながらも教えてくれた。意外と近そう!
「ありがとうございます!」
「おう。ところでお前なんでそんなに臭いんだ?ゾンビにでも襲われたのか?」
「そうなんですよー気を抜いていたら襲われちゃってハハハ」
俺がゾンビだとは口が裂けても言えない。そんなことを口走ればここで討伐されそう
「そうか。まぁ気をつけろよ」
「はい!ありがとうございます」
お礼をいうとフラムは言われた方向に走りだした
今日中に森の近くまで行っておこう
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「それにしても今のやつの臭いはひどかったな…。まるで本物のゾンビみたいだ。よっぽどゾンビに苦戦したんだろうな…。」
ゾンビはあんなに早く動かない、という常識が刷り込まれている冒険者にはまさか今のが正真正銘本物のゾンビであるとは考えもしていなかった。
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暫く走ると分かれ道に出たので右に進み、もう少し走ると森が見えてきたのでここらへんで寝ることにする
「おーいアスちゃーん」
さっき走りながらコイツと話し合った結果、アスタロトとか長いのでアス、と略称で呼ぶことにした。アスちゃんはちゃん付けを断固として嫌がり続けたけど俺がムリを通した。女の子をちゃん付けとかやってみたかったんだよね。
「なんじゃ主よ」
「俺のスキルに【潜地】ってあったじゃん?あれってどんなスキルだかわかる?」
「漢字が読めんのか主は。そのまんまじゃ」
「地面に潜れるってこと?」
「そーじゃ」
「やっぱそうなんだ。でも使い方が分かんないんだよね。他のスキルは常駐型っぽいからスキルの発動とかしてないし」
「…今までも度々思っておったがお主今までどうやって生きてきたんじゃ…。」
「あれ?話してなかったっけ?俺転生者だよ?」
「はぁ?寝言は寝ていえ戯け。この世界に来る転生者なんて勇者くらいのもんじゃろうが。ゾンビとかいう魔物が転生者なわけないじゃろーが。」
信じてもらえなかった。もうこの剣主を敬う気無いよね絶対。
「…まぁいいや。で、どう使うんだよ?」
「スキル名を頭のなかで思い浮かべれば使えるぞ。基本的に起動型のスキルを使うときは魔力を使うんじゃがまぁ土に潜る程度なら大したことないじゃろ」
「へー簡単なんだな。そんじゃあ早速」
(【潜地】)
スキルの名前を頭で思い浮かべると体がズブっと土に吸い込まれた。そして体が土にちょうど入るくらいのところで沈下は止まった。
地面の中は真っ暗だがひんやりとしていてとても快適だった。特に意識をしていなくても体の表面に薄い膜が張ってあるような感覚がして目や口を開けてもそこに土が入ってくることもない。更にこのスキルを使用している間は土の中を泳ぐようにして移動できた。移動速度は地上を歩くときの半分くらいしか出なかったが。
そういえばゾンビくんも最初にあった時は土から出てきたな。ゾンビはみんなこのスキルを持っているんだろうか
「なんていうか…ゾンビっていうよりモグラだなこれ」
自分が本当にゾンビなのか疑問に思い始めたフラムであった
結構地中の居心地が良かったのでこっちで寝ることにした。ゾンビとしてこれが正解な気がする。アスに聞くと「ワシも潜る!」と言ってきたのでアスを腰に刺したまま地中に潜る。一応俺の手の触れているものなら一緒に地中に潜れるようだが寝ている間に手が離れるとアスタが生き埋めになるので人化するのは止めておいた。まぁアスも人になる気はなかったらしいが。
アスは俺のスキルを見た時以来、一度も人になっていない。
なんでも「主は臭いからの!剣のままだとその臭いを嗅がなくて済むが人になってしまうとそういうわけにもいかんからのう」らしい。
…いくら俺が鋼のメンタルだからってナマイキでも結構可愛いと思ってしまった幼女に臭い臭い言われたらさすがに傷つくんですよ?
匂い消しを手に入れることをより早く入手しようと心に決め、フラムはその日を終えた。




