死人、スキルが増える
アスタロトは森に伸びていた蔓を腰に巻き付けてそこに刺しておくことにした。そのまま刺すと蔓が毒でやられてしまうため、鞘が必要だったがアスタロトにそのことを伝えるとなんか鞘が出てきた。
さてと、とりあえず魔物がいないのでは訓練もできない。だとすればもうこの森にとどまっている理由はないかな。想定外の拾い物もしたしもう十分だろう。
「よしアスタロト。森を出るぞー」
「なんじゃ行きたいところでもあるのか?」
「別に無いけどここにいる意味もないしな。適当にいろんな街を見て回ろうかと。まぁこの世界の地理なんて知らないから適当にふらつくだけなんだけどな。」
「目的のない旅か。それも良いがいつかは目的ができると張り合いが出ていいとは思うがな。道なら問題ない。ワシが案内してやる。500年前の地図しか頭に入っておらんがの。山とか森とかがどこにあるかぐらいはわかるぞ。」
そう言ってアスタロトは道案内を始めた。なんとなく頼りにならないガイドだがまぁ俺の知識よりは当てになるだろう
森を出て体力をつけるために走りながらアシタロトのいう方向に向かっていると小さな村が見えてきた。地球の外国の田舎みたいな感じの普通の村だ。
「ほう。こんなところに村ができておったのか。森の近くなんて魔物にいつ襲われるかわかったもんじゃないのに、対策でも建てられたのかのう。500年とは長いのう…」
「お婆ちゃんの昔話は良いから。ちょうど日もそろそろ落ちるしあそこの村で今日は寝るか」
そう決めて村に向かって走った。
「お婆ちゃんとは何じゃ!ワシはまだピチピチじゃ!」とか何処かから聞こえた気もしたが、おそらく気のせいだろう。
村には柵があり、出入り口らしきところには門番っぽいのがいた。
「お勤めご苦労様。村で休みたいんだけど入ってもいい?」
「ん?ああそれは構わんが…お前妙に臭うな?ゾンビでも倒してきたのか?」
「まぁそんなとこだ。俺も臭くてかなわん」
どうやらゾンビを討伐しに行った冒険者か何かと勘違いしているらしいがまぁ訂正するとめんどくさいことになりそうなのでそのままにしておいた。人族のところでは人間名乗ってもバレなそうだな。
「そうか。ほら通れ。雑貨屋で匂い消しでも買ってさっさとその臭いをなんとかしろ」
門番は臭いに顔をしかめながら村に入れてくれた。
「ありがとう。そうするよ」
そう言ってフラムは村に入った。
すれ違う村人たちが皆フラムの臭いに顔をしかめるが、フラムはそんなことは気にしていない。
そんなことよりもフラムはさっきの門番との会話で一つ気になる点があった。門番の口にした匂い消し、というものだ。
名前からして間違いなくこの臭いをどうにかできるものだろう。
早速村の中で雑貨屋を探しだし匂い消しというものを買おうとした時、フラムはある重要なことに気づいた。
「俺、一文無しじゃん」
そう、この世界にきてからやったことといえばゾンビくんの話を聞いたことと森に行って剣を拾ったことくらいでそこにお金を得る機会などまったくなかった。
「なぁ…お金ってどう稼げばいいと思う?」
「どうもこうもないじゃろう。働け」
「やっぱそうなりますよねぇーバイトでもするか…」
「そもそも主なんでいきなり金がほしいとか言い出したんじゃ?主は食事もしないし金などいらんと思うがのう」
「いやさっきの門番が匂い消しがどうのって言ってただろ?あれどう考えても今俺に一番必要なもんじゃん?それ買うためにはお金いるじゃん?おわかり?」
「匂い消しくらい自分で作れるぞ?」
「…え?マジで?」
「マジじゃ。作り方とかはワシがよう知っておる。材料さえ集めればできるぞ!」
ドヤッと聞こえてきそうな得意げな口調でアスタロトはそう言った。
「そんなものあんなら早く言えよー!よっしゃそんなら明日作りに行くぞ!」
ようやくこの臭いから開放される!それだけで気分が高揚してくるフラムであった。
夜まで暇なので村の中をうろついていると、やけに武装した集団によくすれ違う気がした。後から聞いた話では、この村はアスタロトが刺さっていたあの森に向かう冒険者の拠点として作られたものであるため、村には常にあの森に住む魔物程度ならどうとでもなるレベルの戦力が存在しており、魔物に襲われることへの心配はないそうだ。
村をふらついていても、お金があるわけでもないので買い食いはできないし、かといって目的なくふらついていてもこのひどい匂いを村に撒き散らすだけだということに気づいたフラムは今夜の寝床を探し始めた。
臭いで住民の皆様に迷惑をかけるわけにもいかないので村の端っこの誰も居ないようなところに決め、道の上で夜を明かし、次の朝が来た。
ついに今日から匂い消しをゲットするために動き出すんだ!この臭いとももう少しでお別れだ!
「おはよう御座いますアスタロト様!私めは何をしたらよろしいでしょうか!」
「匂い消しはポルタの実とルリの実をすりつぶして出た液を混ぜあわせて、水で薄めればできる。ポルタはそこら中に生えているんじゃがルリは森の奥深くにしか生えていなくてな。この近くだとタリスの森が一番近いはずじゃからそこに行ってみよ」
「サーイエッサー!!」
こうしてフラムは村を出て、匂い消しを作る旅に出た。
アスタロトのガイドで森に向かって進みながらそこら辺に生えているポルタの実を摘んでいく。朝、村を出るときに採取に行くと行ったら門番が麻袋をくれたのでそれにぽいぽいと投げ入れていく。ポルタの実は節分の時に使う豆くらいの小ささなのでたくさんとっておいたほうがいいかな。
三時間ほど走ると目的の森についた。
目的地についたため、足を止めると、ピローン♪とどこからか電子音のようなものが聞こえて『スキル、【速度倍加】を習得しました』と聞こえてきた。
「うん?何だ今の?」
「おお、主スキルを習得しおったか!スキルは良いぞーどんどん覚えていけ!」
「そういえばこの世界そんなんあったな…。俺が今なんのスキル持ってるかとかわかるか?」
「できるぞーそれくらい。魔剣はなんでもできるでの!」
そういうとアスタロトが突然光りだした。そしてそのまま光が視界を埋め尽くしていく
そして光が治まり、目を開けるとそこには一人の幼女がいた。薄い紫色の髪をしており、その髪は頭の両端で結んであった。俗にいうツインテールだ。
「……ん?」
「ほれ、はよう手を出さんか」
「もしかして…アスタロトさん?」
「それ以外に誰だと言うんじゃ。」
そう言いながらアスタロトさんは俺の手を握って目を閉じた。
するとじわっと手のところが暖かくなる。
「わかったぞ主よ!お主が持っておるスキルは【速度倍加】、【言語翻訳】【潜地】の3つじゃな!」
「お、おう。さんきゅー」
戸惑いながらも言われたスキルについて考えてみる。
【速度倍加】はまぁ走るスピードが上がるとかそんな感じだろう。
この世界で言葉に困らなかったのは【言語翻訳】のおかげだったのか。あの幼女がつけてくれたんだろうな。【潜地】はよく分からんからまぁ放置で
「なるほど…で、だ」
「ん?」
「アスタロト。なんだそれは」
「何って人化じゃが?魔剣なんだから当然じゃろう?こうしないと鑑定できんからな。それにしても主、ほんとに臭いのう」
顔を顰めながらアスタロトはそう言った。
「余計なお世話だアホ。それにしてももっと妖艶なお姉さんって感じのイメージだったのになお前の話し方…。まさか本当はロリババァだったとはな」
「そっちこそ余計なお世話じゃ!ロリババァではないわい!よく見てみろ!色気ムンムンじゃろ!」
「えぇ…どう見ても10歳くらいの幼女じゃねぇか…いや大丈夫だぞ俺は幼女も好きだぞ」
「うるさいキモい!成長しなかったものはしょうがないじゃろこの変態汚物ご主人!」
「汚物はひどくねぇ!?」
「うるさい臭いもう戻る!」
そう叫ぶとアスタロトは剣に戻った。
「今度からはアスタロトちゃんって呼んでやるな!」
アスタロトちゃんは何も言わなかったがただ少し周りの植物が急速に枯れ始めてしまった。この子怒らせると生態系が壊れそうで怖いな…




