フラムとフィリア
「んっ……」
フラムの意識が回復する。頭が何か柔らかいものに乗ってる感触がする。何だ?
フラムが目を開けると上から見下ろすフィリアと目が合った
膝枕されているようだった
「あ!フラムさん!もう大丈夫ですか?」
あぁ……一言聞いただけで分かる。本物のフィリアだ。
そう思うと嬉しくて、嬉しくて、涙が溢れてきた
「わっ!どうしたんですか!膝枕嫌でした!?」
「いや、ただただ嬉しくて……くそ、女の子に涙なんか見せるもんじゃないのにな……止まらねぇや……」
「なんだ……『こんな女の膝で寝るなんて〜』って泣かれちゃったのかと思いましたよ」
フィリアはそう言って微笑む
「んなわけねぇだろ……。その程度の奴のこと、こんなに必死になって助けたりしねぇよ」
「ふふっ、嬉しかったです。目が覚めた時にフラムさんが目の前に居てくれて。倒れたのはビックリしましたけどね。龍王様が魔力切れだろうって」
「メルデスが?」
体を起こして周囲を見渡す
すると1匹の巨大な龍の姿が近くに見える
その龍はこちらの様子に気付くとニヤニヤしながらこちらに歩いてくる
「おう、起きたかネボスケ。」
「……んだよ根に持ってんのか?」
「ハッハッハ!まぁお前はやること全部やってから寝っこけてんだから俺が何を言える訳でもねぇけどな」
「……戦争はどうなった?」
「もう終わったよ龍族の勝ちだ。両軍とも頭を失ってんだ。当然だろ?残った魔族幹部の処理は少し手こずったがそんくらいだ。」
ちなみに死兵達はフラムが意識を失うと同時に【冥王】の効果が切れ、ただの死体に戻ったらしい
「さてと、俺はそろそろ行くぜ。これでも龍王なんでな。戦後は忙しいんだよ。今夜にはここを出るからお前らもそれまでには合流しろよ」
「ああ、サンキューな」
それだけいうとメルデスは何処かへ飛んでいった
「フィリア」
フラムは改めてフィリアに向き直る
「はい?」
「あの時の返事をするぞ」
「あの時?なんの……」
「好きだフィリア。」
「あっ……」
「好きだよ。お前がいっつも俺のことを守ってくれて嬉しかった。安心した。
お前の笑顔がすごい眩しくて可愛いと思った。この子と一緒にいたいと思った。
その笑顔も、その綺麗な心も、お前の何もかもを全力で守りたいと、そう思った。
……一度は俺の力が足りなくて、お前の大切な仲間を失わせてしまった。本当に、今更何を言っても無駄なのは分かってるけど言わせてくれ、すまなかった。
もう同じ失敗はしない。ずっとお前を守っていきたい。
だからもう1度俺にお前を守らせてくれないか?そしてもう1度俺のことも守ってくれないか?」
フィリアは顔を真っ赤に染めて、一筋の涙が頬に流れ落ちている
「私で良いんですか?ほんとに?」
「当たり前だ。お前がいい。こっちこそ、俺は魔物でゾンビだぞ?そんな俺でもいいのか?」
「フラムさんはフラムさんです!種族がなんだとか今更気にすると思いますか?」
「そうだな……。それで、どうだ?」
「勿論オーケーです!よろしくお願いします!」
その言葉を聞くとフラムはフィリアを思いっきり抱きしめた
「ふぇっ!?ちょ、フラムさん!?」
「ありがとう、ありがとうな……」
「……それはこっちのセリフです。助けていただいてありがとうございました。告白のこと、ちゃんと覚えててくれてありがとうございました。その他にもたくさん。何度お礼を言えばいいか分かりません」
そう言ってフィリアは抱きしめ返してくる
「一緒に生きよう」
「はい!」
その後2人はお互いの存在を確認する様に、また、もう絶対に離さないと言うように抱きしめ合い続けた
「主?そろそろ行かないと置いていかれるぞ?」
アスが人化してフラムの肩を揺さぶりながらそう告げる
気がつくと日が暮れていた
「はっ!?やべっ!フィリア、行くぞ!」
「う、うん!」
『おいメルデス!今どこだ!』
フラムは【念話】でメルデスと連絡を取る
『フラムか。おせぇぞ。今飛ぶから俺が飛んでるところまで来い』
『りょーかい』
フラムは念話を切ると、フィリアの手を握る
(【獣化】)
フラムのスキルにより、背中に翼が生える
「へっ?何ですかそれ?」
「しっかり捕まってろよ」
そういうとフラムは日の沈んだ空に飛び立つ
「フラムさんが白髪に翼って似合ってませんよ!なんか天使みたいです」
「それメルデスにも言われたんだけど、どんな印象なんだよ俺……」
「うーん、白より黒の方が似合う人?」
「なんだそりゃ」
そう軽口を叩きながらフラム達はメルデス達のいるところに向かう
「気持ちいいですね!」
フィリアは久しぶりの外の空気を存分に味わっているようだ
「そうだな」
フラムはそうやって嬉しそうに、楽しそうにしている彼女を見ているのが嬉しかった
「あ!フラムさん来たよお兄!…ん?あれフラムさんだよね?」
「奴め。ついに空まで飛びやがったか」
アイラとレクサスがフラムを見つけ、フラムの姿に呆れる
「おう、今日はお疲れ様」
フラムは彼らの元に向かいながら彼らを労う
「今回一番の功労者が何言ってんだ。めぼしい奴らは皆お前が片付けたって聞いたぞ?」
「あー、まぁ全部俺にとって必要だったからな。まぁ勇者はお前らに任せても良かったんだけど不安だったから」
「おまっ!あんま舐めんなよ!」
「マナフにボコられてたくせに」
「ぐっ……」
レクサスは言葉を詰まらせる
まぁ俺フラムも少し前はマナフにボコられていたが
「フラムさん。この人達は?」
飛んでいる途中でフラムにおぶられたフィリアがフラムの背中から尋ねる
「ああ、龍族のレクサスとアイラだ。そこのメルデスの子供で龍族の姫と王子(笑)だよ。こいつらにメルデスを紹介してもらった」
「フラム?なんで俺の紹介の時だけニヤニヤしてやがる?」
「気のせいだろ?なぁアイラ?」
「はい。フラムさんは決してお兄のことを王子(笑)だなんて言ってません」
「お前らぁ!」
レクサスは涙目で抗議の声を張り上げる。意外とメンタル弱いのこいつ?
「ほら、フィリアも自己紹介しろよ」
「あっ、そうですね。フィリアと言います!アイラさん、レクサスさん、この度はありがとうございました!」
フィリアは自分の救出に一役買ってくれたらしい2人に頭を下げ、頭を上げると2人に笑顔を振りまく
その笑顔に撃ち抜かれたのか、レクサスの頬が赤く染まり
「……結婚してください」
そう徐ろにフィリアに頭を下げる
「おい王子(笑)。死にたいのかお前?」
フラムは【威圧】を発動させる
「ひっ!?スミマセンデシタ!」
「ほらお前ら!もう出発すんぞ!」
メルデスがじれったそうに声をかけてくる
「おう、待たせたか?わりぃな。じゃあ行こうか。アイラ、乗っていいか?」
「自分で飛ばないんですか?」
「あれはスキルだから魔力使うんだよ。また倒れたくはない」
「ああ、そうなんですね。ならどうぞ」
了解も取れたのでフラムとフィリアはアイラの背中に乗る
そして龍族の軍団は自分達の住処に戻るべく、移動を開始した
ーあれから5年が過ぎたー
「タケル!もう朝だよ!ほら起きて!メルデスさんが呼んでるよ!」
「んにゃ……もう少しだけ……」
「タケル〜〜〜〜〜っ!!」
「うわっ!ちょ、まっ!うえぇ、寒う……」
「起きて!早く朝ごはん食べて出発!」
フィリアに布団を引っぺがされ、フラム、いやタケルはもぞもぞと布団から起き上がる
あれからすぐにフラムはフィリアと結婚した。
メルデスが龍族の里に家を用意してくれたため、今はそこに2人に加えてアスとレヴァの4人で住んでいる
ギンとシロは完全にペット扱いだった。里の子供たちの人気者だ。
ゾンビは基本的に死なず、また、墓地から勝手に生まれるので生殖能力は無く、子供は作れない。それでも俺達は十分過ぎるほど幸せだった
結婚してからフィリアには2つ、お願いをした。
一つ目は敬語をやめてもらった。
別に敬語が嫌いな訳では無いが、このような関係になっても敬語のまんまというのは何だか距離感が感じられると思ったからだ。
そして二つ目、フィリアには日本で生きていた時の本名である『タケル』という名前で呼んでもらうことにした。
メルデスや他の龍族達は相変わらず俺の事を『フラム』と呼ぶので、まぁフィリアだけが使う俺のあだ名のようになっていたが、やはり十数年間呼ばれ続けられた名前で呼ばれた方がしっくりくるし、特別な感じがしてなんか良い
フラムはあの戦争以降、神だの悪魔だの鬼だの色々な呼び名が付けられたが最終的に『冥王』と呼ばれている。
スキルのせいでもあるのだが、この呼び名が付けられた理由の一つに俺がこの世界を統治する者の一人となったから、というものがある
三種族の戦争によって人族と魔族は戦力の大半を失い、フラムの存在も相まって龍族の絶対的な支配権が確立した。
そのため龍族は三種族まとめて統治することに決めた。
しかし、全てを龍族で決める訳では無い。そうすれば反乱が起きるのは目に見えている。
最早フラムにとってその程度を鎮圧するのは容易いが、そのような恐怖政治では良くないだろう
フラムは日本の憲法を必死に思い出し、更に自分達で話し合って色々な要素を混ぜ合わせてこの世界での法律を作った
自分達、というのはフラム、メルデス、人族の国ベラルカ王国の国王カラマイン、そして魔族の幹部サレオスだ。サレオスは戦争に参加していたらしいが、奇跡的に生き延び、魔王とマナフ亡き今、魔族の長となっている。
ちなみに魔族は相変わらず邪神を信仰しているらしいが信仰するだけなら自由だ。宗教の自由だ。
ただし、邪神の現界をしようとする者には処罰を与えている。この世界を滅ぼすような行為を許すわけには行かない
このそれぞれの種族の長プラス冥王の話し合いによって物事が決められ、政が成されていく。
最初はぎくしゃくした関係が続いたが、今では互いに和解し、あれ以来戦争も起こっていない。各種族の交流も広まり、小さないざこざはある程度起きたが、すぐにそれもなくなった。
この世界は一つの戦争で平和を手にいれたのだ
フラムはフィリアの作った朝ごはんを食べ、着替えていつもの会議場に向かう。
「おう、おせぇぞフラム」
「そうですよ。もっとこの会議に出席するものとしての責任を……」
メルデスとサレオスに窘められる
「すまなかった。もうカラマインもいるのか。俺が最後だったか、悪い悪い」
「悪いと思ってる顔じゃねぇぞそれは?……まぁいい、今日の会議を始めよう」
「ああ、今日の議題は?」
「今日はな……………」
この世界は平和だ。フラムが初めて来た頃とはまるで違う。
自分の愛する人の生きるこの世界の平和がいつまでも続くように、ゾンビとしての永遠の命を使ってこの平和を守って行こう。
この平和を守って、フィリアとの幸せを噛み締めて生きて行こう
そう決心して、フラムは今日も会議に臨んだ
この話を持って、「ゾンビに転生した俺はどうやらチートみたいです」を完結とさせて頂きます!
最後までお付き合い下さり、ありがとうございましたm(_ _)m




