死人vsマナフ 再び
ピローン♪
『スキル、【勇者】を習得しました』
そのスキルを習得した途端、体が軽くなった気がする
恐らく身体強化系のスキルなのだろう
「さてっと、神様の依頼1つクリアだな」
『おい。こっちは終わったぞー。そっちは大丈夫か?』
レクサスに【念話】で問いかける
『終わったなら早く来いよ!死ぬ!死ぬ!』
『大変そうだな』
『呑気な事言ってねぇで早く!』
『はいはい今行くよ』
フラムは念話を切ると戦場を見渡す
フラムの兵たちは人族魔族の兵たちと引き続き戦いを続けている
ギンとシロもこれに加わって生き残っている魔族と人族を殲滅している
メルデスは魔王と激戦を繰り広げている。戦闘の余波がこちらまで届いてくるほどだ
若干メルデスが押され気味ではあるがまだ持つだろう
そして最後に三匹の龍と1人の魔族が戦っている所に目を向ける
3匹とも致命傷は負っていないが、3対1であるにもかかわらず見るからに不利な状況だった。
レクサス達の元へ急行するために地面を蹴る
「うおっ!?」
いつもと同じように踏み出したのにその速度は今までとは比べ物にならないほど出ており、危うくレクサス達を通り過ぎる所だった。
「何だこれ?【勇者】のせいか?」
【勇者】
自分の身体能力を全体的に2倍に上がるというスキルだ
人族の身で魔王に対抗するためのスキルだったがそれを人族など軽く凌駕する身体能力を保持していたフラムが手に入れた
元が大きければ倍にした後の数もそれだけ大きくなる
フラムは勇者を喰ったあの瞬間、神がかった身体能力を手に入れたのだ
それをいきなり制御できるかは別問題だが
「思いっきり走ると止まれねぇなこれ……」
小走り程度の感覚で十分だった
「じゃあこんなもんかな?おりゃ!」
フラムは地を蹴りジャンプする
【跳躍】を使わずともそのジャンプ力は相当なものになっており、レクサス達の元へと届く
「お、いい感じ。おいレクサス!ちょっとだけ俺の足場になれ!」
「はぁ!?ちょっとは休ませろよ……龍使いが荒いな、ったく」
「ちょっとだけだから頼む!あー落ちる落ちる!ほら!俺が落ちる前に受け止めて!」
「あーもうわかったよ!わかったから手早く済ませろ!」
「ほいきた。アイラとじいちゃんはもう下に行ってそこら辺の雑兵の相手をするなり休むなりしてていいぞ」
「分かりました!フラムさん、お気を付けて!」
「おう、おつかれ」
アイラ達を労うとフラムはマナフと睨み合う
「先程はよくもやってくれたな……。2度目はないぞ、次は必ず殺す。死ぬ気でかかってこい」
「いつまで自分が上だと思ってんだ。」
そう言うとともにレクサスに乗っていたフラムの姿が消える
「なっ!?何処に消えた!?」
その直後、マナフは頭上から強い殺気を感じ、反射的に剣を振る
キィン!と剣同士がぶつかり合う音がする
頭上にいたのはフラムだった。
いつの間に、どうやって頭上に来たのか獣化したマナフですら理解出来なかった
「落ちろ」
先ほどと同じように、いや、それ以上の力でマナフはフラムによって吹き飛ばされ、地面に叩き付けられた
「もういいぞレクサス。サンキューな」
フラムはそういうと飛び降りる
「なんだアイツ……。飛び降りんのが好きなのか?」
レクサスは地上へとダイブしたフラムを見てそう呟くと、体を休めるべく戦場を離れた
地面に叩きつけられたマナフは立ち上がると、現状を分析する
(奴は前と比べて明らかに強くなっている。いや、なりすぎていると言ってもいい。悔しいが奴の言うとおり認識を改める必要があるか)
そうこう考えているうちにフラムも地上に降りてきた
が、着地はせずに頭から落ちた。
グチャッと音がしてフラムの肉体はバラバラにはじけ飛ぶ
しかしすぐに肉体が再生を始め、元通りのフラムに戻った。
「流石ゾンビだ。それらしい着地の仕方をする」
「いやーいくらやってもきれいに着地出来ねぇんだよね」
もちろん百メートル以上上空から飛び降りてまともに着地できるはずがない
「まぁいいや。マナフ、借りは返すぞ」
アスをマナフに向けてそう言い放つ
「来い。強者よ」
フラムのリベンジが始まる
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「【激震】!」
「【魔炎】!」
二人の王の戦いは苛烈を極めていた
「見た目が変わっても相変わらずつぇぇなぁお前は。いや、前よりも強くねぇか?」
「ほう、分かるか?この身体、なかなか良いぞ。このように精霊を使役することもできるし、なっ!」
魔王が【聖篭】でメルデスの動きを封じる
魔族は例外なく聖属性魔法を使うことが出来ない。もともと適正がない種族なのだ
しかし、魔王は精霊の力を借りることで、聖属性魔法を発動させることができるようになっていた
「ふん、小賢しい。【龍波】!」
メルデスはすぐにスキルでその巨大な体から衝撃波を放ち、聖篭を破壊する
しかし一瞬確かにメルデスの動きが止められたのは覆しようのない事実だ
そしてその一瞬があれば魔王がメルデスに肉薄するなど容易いことだった
「精霊よ!」
魔王は精霊の力によって【龍波】を受け止めると
「【魔覇】!」
魔王がメルデスに拳を当てて、スキルを発動させる。
すると魔王の手から黒い波動が放たれる
ドォォン!!
爆音とともにメルデスは吹き飛ばされた
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フラムは急に上がった身体能力に身体を慣らしながらマナフと戦っていた
今のフラムの剣戟は勇者のものすら上回る速さだ。勇者のものですら完全には対応できていなかったマナフは完全に後手に回っていた
(くそっ!何だコイツは!少し前は【獣化】前の俺と同等だっただろうが!成長するにも程があるだろう!)
そう心のなかで愚痴をこぼしながら、マナフは致命傷になるアスだけに集中して剣戟を受けていた。
あの剣の力は一度【獣化】前の自分を殺されてよくわかっている。
だからこそあの剣だけは自分の身を傷つけさせてはいけないとマナフは知っている
しかし、レヴァによる斬撃までは手が回らなかった。少しずつ、だが確実にマナフはダメージを蓄積していく。このままでは敗北は時間の問題だった。
その時、大きな影がフラムとマナフを覆う
「なんだ!?」
マナフは思わず上を見上げる
「おいおい……。」
フラムも上を見て唖然としている
上から振ってきたのは龍王メルデスだった
メルデスめ。大口叩いておいてこのザマかよ全く
はぁ。まぁとりあえずとっとと避けなきゃな。潰される
………あ、俺別に避ける必要無いか
いいこと考えた
フラムは次の瞬間マナフの後ろに回り込んだ
上のメルデスとアスを握る手に気を取られていたマナフはそのスピードについていけない
フラムはマナフの肩に手を乗せて
【呪縛】
と呟いた
マナフは既にそのスキルの発動条件を満たすほどには傷ついていたのだ
「なっ!貴様!」
マナフは一瞬のうちに黒い靄に囚われたのに気づくと声を荒げる
もうメルデスの巨体はすぐそこにまで迫ってきていた
「龍族のケツに殺される気分はどうだよマナフさん?」
フラムはあの時の仕打ちにだいぶ恨みを持っていたようだ。フィリアを目の前で奪った奴を許せるはずがない。アスで今殺してもいいのだが、なるべく醜い死を与えたかった
「貴様ァァァァァァ!!」
マナフが叫ぶがもう何をやっても無駄だった。
マナフと言えど、龍王の質量には抗う事はできず、フラムは落下するメルデスの下敷きとなって潰れた




