死人、神に会う
夢を見た。この世界に送りだされた、あの空間のような何もない場所。そこにフラムは立っていた。目の前には初老の爺さんが立っていて、向かい合う形になっている
「少年よ、私が神だ」
……何こいつ
「あの……もしかして中二病患者の方ですか?」
「違うわいっ!本物じゃ!」
目の前の爺に顔を赤くして怒鳴られた
「何?本物なの?証拠は?」
フラムはめんどくさそうに受け答えする
「……まぁ信じなくても良い。少し話、というか頼みを聞いてくれんか」
「嫌だって言っても夢の中から抜け出せるわけもないしいいよ話せよ。頼みを聞くかどうかは別問題だけどな」
「それは何より。ではまず勇者のことについて話そう。」
「勇者?人族が召喚したって聞いたがそれがどうかしたのか?」
「あの勇者はな、何百年も前は普通に人族として生きていたのじゃ。だがあ奴には勇者としてふさわしすぎるほどの素質があった。じゃから魔王への対抗策としてその魂を弄んでしまった。儂の傀儡としてその精神を作り変えた。これは儂の最大の罪じゃ。」
「それはまた神様ってのは自己中なもんだな?」
「……そうじゃな。その自己中な神から二つのお願いじゃ」
「はぁ。なんだよ、言ってみろ」
「一つは勇者の救出じゃ。あれはもう十分以上に頑張った。この状況を作った儂が言うのも何だが儂はもうあ奴を開放してやりたい。今度の召喚で最期にしてやりたい。だからあ奴の魂を喰ってはくれんか?お主の【魂喰】で喰った魂はスキルと魔力をフラムに吐き出してそのまま輪廻の中に組み込まれる。儂はあ奴にはもう別の人生を楽しく過ごしてもらいたい。その手助けをお主にはして欲しい。」
なるほど、つまり勇者を殺して喰えと。まぁスキル美味しそうだしやってもいいんだけど機会があるか怪しいな
「まぁ時間があったらな」
「ふむ、まぁ今はそれで構わぬ。それで二つ目の頼みだ。戦争が終わった後、お前には魔王への抑止力として存在し続けてもらいたい。勇者のようにな」
「……俺の精神までどうこうする気じゃないよな?」
「当たり前じゃろ。あれを作り出したことは後悔しておると言っておる。あんなことは二度とやらん。一個人で魔王と魔族幹部に対抗できる力を持つものがいれば魔王も行動を起こすのに躊躇することになるじゃろう。ラファエルから聞いたぞ?魔王と事を交える気だと。ならばそのついでじゃついで」
「あのロリめ………。でもそれはお願いされなくても気づいたらそうなってるんじゃないか?」
「まぁそうなんじゃが一応の。戦争で盛大に暴れてくれればそれでいい。」
「そうか。もともと暴れまわってやるつもりだから問題ない。ところで魔王は何をやろうとしているんだ?それを知っているから止めるんだろ?」
「魔王というものは常に世界征服を狙っておる。それ自体は構わないのじゃ。どの種族も他種族を下し、自分たちの土地と地位を得るために戦っておるからの。しかし魔王はその後が違う。魔王の本当の目的は魔族以外のものを奴隷化し、それらの命を使った魔力で邪神を召喚することにある。奴らは邪神を崇拝しているからの。それは不味いのじゃ。神の力を持っているものが現世に降り立つなど、世界がどうなるかわかったものではない。それだけは阻止せねばならん。」
「つまり魔王が人族や龍族の虐殺しないようにすればいいんだな?」
「そうじゃ。頼んだぞ少年」
「できるだけな。用事はそれだけか?ならそろそろここから出してくれ」
「わかった。それではな」
爺がそういうとフラムの意識は霞んでいき、その世界から離脱した
目を開けるともうそこは昨日眠りについたアイラたちの部屋だった。
「なんか重い……」
腹に何かが乗っている感触がある
顔を上げて腹に乗っている物体を確認すると、それはレクサスの足だった
「起きろゴラァッ!!」
フラムは自分の腹の上にあった足を掴むと上にぶん投げる
「うおっ!?何すんだお前っ!?ちょっ、受け止めてくれっ!」
投げられて目を覚ましたレクサスは空中で足をバタバタさせるが誰も助けようとはしない
ドスンッ
レクサスは布団の敷かれていない床のところに落ちた
「いってぇ……。お前このやろうッ!」
レクサスは抗議してくる
「それはこっちのセリフだ馬鹿野郎!俺の体に足を乗っけて寝るんじゃねぇ!」
「あ……。マジ?」
「マジじゃなかったら朝っぱらから人なんか投げねぇ」
「マジでも普通投げねぇよ………。でもまぁ、すまんかった」
「よろしい」
今度やったら寝る前に【呪縛】してやろうかと思うフラムであった。一応フラムは止めてもらっている側なのだが。
その後は特に何かが起きるわけでもなく、戦争準備を終えた龍族は戦争に参加するべく人族と魔族に悟られないように密かに里を抜け出した
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人族が魔族の領域に向けて兵を動かしている
その数は20万は下らないだろう。大軍勢だった
先頭を進むのは勇者だ。ユニコーンに跨り、堂々と進んでいく。その姿は神々しさすら感じさせる
「そろそろ魔族の支配下の地に着く。皆心の準備は良いか!」
そう叫ぶのは軍団長のアルトリスだ。
「「「「「「「「「「「おお!」」」」」」」」」」」
軍の士気は十分に昂っているようだった。勇者がいるのも大きいし、今回は新兵器も持ってきている
勝てると、自分たちの脅威がこの戦いで一つ消えると、そう皆が確信していた
「よし、行くぞ!我に続け!」
アルトリスのその声によって人族の軍勢は魔族の地に足を踏み入れていく
「来たようですね」
「ああ、そうだな」
そう話しているのはマナフと魔族幹部の一人、サレオスだ
「さて、じゃあ俺らも行こうか。お前ら、作戦通りの配置に付け」
「「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」」
魔族たちは返事をするとそれぞれの持場へと散らばっていく
人族が踏み入れた地のすぐ先には森が広がっていた。とても大きな森のようで横を見てもどこまで森が続いているのか視認することすら出来ない。迂回することはほぼ不可能のようだった
「仕方ない!森に入るぞ!皆注意しろ!」
アルトリスの注意に従い、兵たちは気を引き締めて森に入っていく
1時間ほど歩き進んだが、魔族からの奇襲はなかった
そしてそのまま何事もなく、森を抜けた
「ふん!魔族め、人族の大軍に恐れおののいたか?」
アルトリスがそう呟く。実際そう考えてもおかしくないだろう。1番襲われやすそうな所で何も無かったのだから
「よし!一時休憩とする!森の中で気を張っていて疲れもあるだろう。少し気を休めてから再び出発するぞ!」
人族の軍隊は足を止めてそれぞれ休息を取り始める
そしてアルトリスも腰を下ろして休息を取ろうとしたその時
「「「「「【魔弾】!」」」」」
「なっ!?」
休息を取ろうと腰を下ろした人族に全方向から魔弾が放たれる
完全に囲まれていた
そしてそれとともに複数の何かが羽ばたいてこちらに飛んで来る音が聞こえる
それらは一瞬で戦場と化したこの地の上空で止まり、その中の銀髪の髪に真っ黒な肌をした魔族がニヤリと笑みを浮かべながら叫ぶ
「さぁ始めようか人間共!」
魔王と魔族幹部の到着により、戦争の火蓋が今、切って落とされた




