死人vs龍王
(【魔弾】)
フラムが大量の魔弾をメルデスに向かって放つ
「ふんっ!」
しかしメルデスはその魔弾の猛攻をその巨大な腕を振っただけで霧散させてしまった。その凄まじい風圧が離れたところにいるフラムにまで及ぶ
「うおっ、やっぱこれくらいの攻撃は効かないか……」
(【超速】)
遠距離での攻撃を諦めたフラムはいつも通り【超速】を使用して距離を詰め、接近戦に挑む。
その速度は龍族の飛行を上回るほどだ
「フン、甘いわ」
それを見たメルデスは地面を強く踏む
すると物凄い轟音と共に
地面が割れた
「何っ!?」
メルデスのスキルの1つ、【地割】だった
突然足場が無くなったフラムはそのまま割れ目に落ちていく
「呆気ないものだな」
しかしフラムはすぐに割れ目から飛び出して来る。【跳躍】を使ったのだ
「なんだまだやるのか?」
「当然ですよ。魔王を倒そうって奴がそんなに諦めいいわけないでしょう?」
「はっ、そりゃそうか。ほら行くぞ!【火雨】」
訓練場の上空一帯に炎の粒が無数に現れ、そしてそれらは一斉に地に向かって降り注ぐ
「少し前の俺ならこれは防げなかっただろうな……。【反射】」
フラムがスキル名を呟くとフラムに当たった火の雨が全て当たる直前に弾かれる。
「ほう………。遠距離攻撃は跳ね返すのか?それでは俺のブレスも使えんな」
「ああ、だから殴り合いましょうよ王様」
「それしかないようだな。それにしても貴様、腰の刀は抜かないのか?」
「これから仲間になるかもしれない人を殺すわけにはいきませんから」
そう言うとメルデスは顔を顰める
「舐めるなよ若造。持てる力をすべて出しきらずに俺を倒そうというのか?力を制御しなければいけないのは俺の方だろう?」
「………それが今の俺がやらなければいけないことならばどんな無理なことでもどんなに卑怯なことでも行います。今はあなたを殺さずに勝負に勝つことが俺のすべきことです」
「ふん、後でどうなっても知らんぞ?」
「はい。もちろんです」
アスが力を制御できていたら俺も喜んで剣を握るのだが、そうでない以上あの剣でかすり傷を与えただけで、これから協力関係になろうという種族の王を殺してしまう事になる。それでは本末転倒なのだ。
「では行きますよ。【暗幕】」
フラムから黒い瘴気が吹き出し、周囲にいるものの視界を覆い尽くす
「このような小細工!」
メルデスは翼でその瘴気を吹き飛ばす
しかし視界が完全に戻った頃にはフラムが既に背後に回り込んでその拳を振りかざしていた。
「見えておるぞ!」
メルデスは後ろに振り向くと同時に尻尾を振って飛びかかってきたフラムを薙ぎ払う。
しかし
「残念でした!」
フラムの声がメルデスの体が向いていた方から聞こえてくる
薙ぎ払ったはずのフラムはその姿を虚空に消滅させていた
「吹き飛べやあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
フラムは【豪腕】によって強化された膂力でメルデスの腹をぶん殴る
【豪腕】はもともと自分の魔力量に応じて膂力を上昇させるスキルだ
最初の頃と比べて、フラムの魔力は格段に上がっている。スキルを覚える度にそれに応じて魔力が上がっているようだった
フラムは現在36のスキルを習得している。この世界では10個もスキルを持っていればすごい方、と前に誰かに聞いた気がする。なのでフラムのスキル量は異常だった。そして魔力量もそれにともなってこの世界では異常なほどある。
そんなフラムが【豪腕】により放ったパンチはメルデスの巨体をいとも簡単に吹き飛ばした。
「ぐぅっ!?」
メルデスが予想外の痛みにうめき声を上げる
「まだだ!」
フラムは地を蹴り、吹き飛ばして訓練場の壁に叩きつけたメルデスに急接近し、その体に触れる
(【呪縛】)
前にマナフに使われたスキルだ
このスキルは対象に一定以上のダメージが入っていることが発動条件となっているのだが、フラムはそれに足るダメージを一発でメルデスに与えていた
メルデスの体が黒い靄に覆われ、それがメルデスを拘束する
フラムは動けないメルデスの肩に飛び乗り、レヴァを腰から抜くとメルデスの首にその刃を添える
「俺の勝ちです」
「ああ……。俺の負けだ」
こうしてこれからの世界の動きが決まるであろう戦いの決着が着いた
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アイラは空いた口が塞がらなかった
比喩などではない。本当に口を開けたまま呆然と立ち尽くしていた
「お父さんが、負けた?」
フラムが強いのは知っている。一緒に魔宮を攻略した時に自分たちとの格の違いはよくわかった
でも父は龍族最強の王なのだ。世界でも指折りの強者だそうで、いくら本気を出していなかったと言ってもそこら辺の人に負けるほど弱くはない。しかしフラムも剣を使っていなかったのだからフラムも本気ではなかっただろう
父が負けた。その事実はアイラに驚きと尊敬と羨望と興奮と恐怖と、色々な感情をアイラに抱かせることとなった。
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「ハッハッハッ!まさか負けるとはな!」
【呪縛】から開放され、フラムの【再生】によって傷も完全に癒えたメルデスは豪快に笑いながら再び自分の敗北を認める
ちなみに【再生】は大まかに言うと対象をあるべき姿に戻す、というスキルらしい。使ってみるとすぐにメルデスの傷は修復された
「どうですか?俺に協力してくれますか?」
「ああ、もちろんだ!俺もこんなにつぇぇ奴とはつながっておきてぇしな。まぁそもそもさっきの会議で戦争に参戦するのは決まってたんだがな」
……………………あれ?
「あの…………。それじゃあ俺達が今戦った意味って…………」
「俺の子供が連れてきた男がどんなやつか見てみたかっただけだ!」
………………王ってもしかして結構暇なんじゃないか?
メルデスが部下に訓練場の後片付けを命じ、俺はメルデスに連れられて王宮の会議室のようなところに連れて行かれる
「ちょっと待ってろ。今皆連れてくるからよ」
そうしてメルデスは部屋から出ていく
すこし待っているとぞろぞろと10人前後の大人たちが現れた
そしてその人達は順に用意された関に腰をおろし、フラムのことをジロジロと見てくる
「メルデス様、この者が戦争の協力者ですか?」
その内の一人がメルデスに問いかける
「ああそうだ。まぁ形としては俺らがそいつに加担するって感じだけどな」
「この者は信用できるのですかな?」
「問題ないだろ。アイラとレクサスと仲いいみたいだから裏切りはないだろうし、腕は俺と同等以上に立つからそっちの心配もない。だいたい俺はさっきそいつに負けてるしな」
メルデスがそういうと部屋の中はざわざわと騒がしくなる。
王が負けるということはそれだけ重要な事なのだ
「うるせぇぞお前ら。あんまり客人の前で恥を見せんじゃねぇ」
王の一言で再び部屋に静寂が訪れる
「じゃあこいつを戦争に連れて行くってことでいいか?何か異論があるやつは?」
特に手を挙げる者もおらず、会議は終了した。
部屋から出るとアイラが部屋の前で待っていた
「あ、お父さん、フラムさん。お疲れ様です」
「おう」
フラムが返事をする
「結局どうなったんですか?」
「連れて行ってもらえることになったよ。ありがとうなアイラ」
「い、いえ!私は何もしてませんから!」
「アイラとレクサスがいなかったらメルデスに会うのも苦労しただろうしな。感謝してるよ」
「それは………どういたしましてです。あれ?ところでお父さんを呼び捨てにしてますけど何かあったんですか?」
「ああ、なんかメルデスが負けた相手に敬語を使われるなんて納得いかねぇ!やめろ!ってうるさいからな……まぁ俺も敬語使い慣れてるわけじゃないからこっちのほうがいいんだけどさ」
「当たり前だ!自分に勝った相手にいつまでもへこへこされていて気分がいいわけ無いだろうが!逆効果だ貴様の敬語は!」
「わかったよもう使わないって」
「それならばよい!あ、そうだ貴様今日から出発するまで俺ん家の子供部屋で寝ろ」
「お父さん!?」
アイラが狼狽する。若干頬が赤らんでいる気もするが気のせいだろう
「なんだ?寝床がそこしかないのだから仕方ないだろう?家には客間なんてないぞ?」
メルデスにはフラムがゾンビだということは伝えていないので土の中で寝れるとかそういうことは知らなかった。まぁフラムとしても土の中と布団、どっちがいいかと聞かれれば布団で寝たいので何も言わないが
「まぁそれはそうなんですが………。はぁ、分かりましたよもう。フラムさん、改めてよろしくお願いしますね」
「おう、よろしくな」
そうして龍兄妹とフラムはその日から一緒に川の字で寝ることとなった
アイラがどうしてもと言うので真ん中はレクサスになった。やっぱりアイラも年頃の女の子なのだろう。
その日はレクサスの寝相の悪さのせいで度々起こされ、満足に睡眠をとることができなかったのだが
ちなみにアイラはレクサスと自分の間に抱きまくらを置いて壁を作って寝ていた。
俺もアレ欲しい




