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勇者、喚ばれる

今回は人族の話です。主人公達は出てきません

その日、人族の中心都市であるアルデリアの城内は混乱に溢れかえっていた


「おい!魔王が復活したというのは本当なのか!?」


そう叫ぶのは人族の国ベラルカ王国の大臣、シャラムである


「はっ!先程魔王の物としか考えられない魔力を検知いたしました!その方向に望遠鏡を向けたところ、あのマナフが黒き少女に跪いているのが確認されました。あの男が頭を下げるのは魔王だけです!」


「くそっ!忌々しい!これではあの時の苦労が水の泡ではないか!」


魔王を一度殺したのは龍族と人族の連合軍によるものだった。放っておけばお互いの領土が侵食されかねないと判断した両種族は一時的に手を結んだのだ。


「いかが致しますか?」


「すぐに緊急会議を開く!各貴族達に通達しろ!」


「了解しました!」





すぐに国の主要人物が会議室に集められ、緊急会議が開かれた。


「さて、皆集まったようなので会議を始める。議題は、皆察しているとは思うが復活した魔王への対処についてだ。」


「前と同じように龍族と手を組んで討伐、ではいかんのか?」


「貴殿、人族と龍族が今どういう状況なのか分かっていっているのか?」


「………そうでしたな。申し訳ない。気が動転していたようだ」


人族は龍族に数ヶ月前に領土侵攻のために戦争を挑んでいた。そのため、今人族は龍族と手を組める状況にないのだ。


「ならばどうする?現状魔王と魔族の幹部たちの軍勢に勝てる手段を我々は持ち合わせていないんだぞ!」


その難題に誰もが口を閉ざしてしまった

静寂が場を支配してから何分がたっただろう。


「……確か古い文献で先代魔王をどうやって滅ぼしたかが記されていた気がする。」


呟いたのはマール、という若手貴族だ。マール一族は数百年続いている由緒ある家であり、国の中でも最長の歴史を持つ貴族なのだが、過去に失態を犯して没落させられた者がいて、それ以降影を潜めてしまっていた。

しかし今代の当主はその卓越した政治力により、数か月前に再び主要貴族の一席を占めるまでに家を復権させていた。

故に過去の記録や資料がマール家の書庫には大量に保管されているのだ


「なんだと!その方法は分かるかマール卿!」


「はい。確か……今から500年ほど前に勇者がこの地に召喚されたそうです。その時代の人族はその勇者の力を借りて先代魔王の討伐を実行したと書いてあったかとふと思い出しまして」


「勇者の召喚か……やり方は分かるか?」


「申し訳ありませんが調べてみないと分かりません」


「そうか……。ならば調べてみてはくれないだろうかマール卿?」


「承りましたシャラム殿」


「皆もとりあえず勇者召喚の方法を模索する、という方針でよろしいかな?異議のある者はおるか?」


誰も手を上げるものはいなかった。


「それでは方法が見つかってから再び話し合おう。では今回はここまでとする」


そうして会議は終わった





「あった…この本だ」


会議から三日後、自邸に戻っていたマールはようやく彼の書庫からその本を見つけ出した

ホコリまみれになっていたのでホコリを払い、中に目を通していく。



『勇者を召喚するには膨大な魔力によって作り出す召喚陣に王族の血を垂らす。これにより召喚の儀が完了する』と記されているのを発見する



これが勇者召喚の方法だった

マールはこのことがわかるやいなやアルデリアに舞い戻り、すぐにその旨をシャラムに伝える




すぐにシャラムによって国中の魔力量に秀でた召喚士たちが王城にかき集められた。

召喚士達は冒険者ばかりで普段王城などという場所に呼ばれることはなく、戸惑いを見せているものも多かったが、予定通り儀式は行われる



「「「「「「「「「【召喚】」」」」」」」」」



20人の召喚士達がその魔力を合わせ、巨大な魔法陣を作り上げる。召喚術というものは【召喚】スキルによって作り出された魔法陣に媒体となるものを置く。するとその媒体に応じて召喚獣が出てくるというものだ。基本的には召喚獣は召喚者に対して従順だが、分不相応なものを召喚してしまうとそれは殆どの場合において召喚者の言うことを聞かない。


「陛下。血を陣の中央にお垂らしください」


シャラムが短剣をベラルカ王国国王、カラマイン王に差し出す

今回の召喚の媒体は王族の血なのだ


「うむ」


カラマインはそれを受け取ると魔法陣の中央に歩いていき、指先を傷つけて血を出すと、それを魔法陣に垂らした。

するとすぐに魔法陣が光り輝き始める


「むぅっ!」


カラマインは焦ってその場から離れ、魔法陣の外に出る

カラマインが魔法陣を出てすぐに魔法陣の放つ光が一層強くなり、直後、その場にいるものたちの全員の視界を白く染めた。


光が収まり、視界が戻ってきたので魔法陣の様子を確認する

そこには先程まではいなかった金髪の剣士が立っていた



「……私が呼び出されたということは再び魔王が姿を現したということなのか?」



その剣士はそうポツリと呟く


「貴方様が勇者なのですか?」


シャラムが尋ねる


「勇者召喚の儀式をしたのだろう?ならば召喚されるのは勇者に決まっているではないか。私が勇者アルロスだ」


その言葉を聞いたシャラムと主要貴族たちは一斉に勇者に跪く


「勇者様。先日魔王が復活してしまい、私どもではこれに対処する手立てがございません。どうかお力をおかしいただきたく、勇者様の召喚に踏み切った次第です。」


「ああ、私も呼ばれたからにはそれに見合うだけの仕事をしよう。私も魔王という存在には憎しみしか感じない」


「そうですか!お力をお貸しいただけますか!ありがとうございます!私どもの戦争準備がまだ済んでいませんのでそれが済むまで城内にてお寛ぎになられてください。部屋を用意しておりますので。」


「そうか。それではしばらく世話になろう」


「おい!勇者様をお連れしろ!」


「はっ」


シャラムは使用人を呼び出すと勇者を案内させる


「勇者の召喚は成功した!戦争の準備を始めよ!」


カラマインがそう命令する


「「「「「御意!!」」」」」


貴族たちとその場にいた使用人達はその場で跪き忠誠を示すと、命令を実行すべく動き出した



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



アルロスは元々人間だった。どこにでもいる、ただの村人の子供だった

しかしアルロスには他の人間と違う点が一つだけあった。

生まれつき、人間の中でも聖属性の適正が並外れて高かったのだ。


それが不幸だった。


神は現世に直接的な干渉ができない。

現世では魔王が暴虐の限りを尽くしていた。このままでは自分の管理する世界が終わってしまう

神ができるのはせいぜい人間の夢に現れお告げを与えることくらいだ。そう、現世(・・)にはその程度にしか影響できない

神は熱心な信者の1人の夢に現れ、ただ一言



『アルロスという名の少年を殺せ』



そう命じたのだ

その信者はその言葉を忠実に実行した。アルロスはそのお告げから5日後、何者かに暗殺されその生涯を終らされた。

神はアルロスの魂を回収し、そしてその魂を勇者のものとして作り替えた。肉体も勇者のために神が作った


その結果、肉体は魔王との戦闘に耐え、打ち勝てるように強靭にされ、その精神はただ魔王の討伐のみを考えるように魔王への憎しみを増幅された、アルロスという名の元人間の勇者が誕生した。

アルロスという名の人間は神によって強制的に人間を辞めさせられたのだ。



魔王がこの世界の中で大きな力を握りすぎないように調整するための存在。それが勇者。


ただ魔王のためだけに神によって作られた兵器であり装置。それが勇者。



神は人族の夢に現れ勇者の召喚方法を伝え、人族はそれを実行した。

その、勇者の兵器としての機能は十二分に発揮され、先代魔王は勇者によって倒された。

その後、魔王を倒した後再び神の手の中に戻り、そこで数百年の時を過ごし、兵器としての自分が必要になる時までずっと眠っていた。神によってアルロスの時間は止められていたため、肉体の老化もない。

そしてついに先程の召喚の儀式により神の元を離れ、現世に舞い戻ってきた


「魔王よ……再び貴様は我が聖剣によって断罪してくれよう」


アルロスはその装置としての役割を果たすべく、魔王への憎しみを募らせていくのだった。その感情が作られたものだとは知らずに

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