死人vsマナフ
鬱展開があります。苦手な方はご注意ください
「おらぁっ!!」
フラムはマナフに急接近し、レヴァを振るう
「ふん。」
マナフは冷静に突進してくるフラムを見ながら、何も無い空間に手を伸ばす。
するとそこに剣が現れ、マナフはそれを握る
そしてその剣でそれを受けようとするが、剣が触れ合った瞬間自分の剣が熱で溶けたのに敏感に反応し、1歩身を引いて躱す。
「この剣に傷を付けるとはな。これでもなかなかの名剣なのだが」
「この剣と比べられる程ではねぇだろ。なんたってこっちは魔剣だしな」
「ほう。魔剣とはなかなか良いものを持っているではないか。では今度はこちらから行こうか」
お返しとばかりに今度はマナフがフラムに向かって突っ込んで来る
(レヴァで受ければその剣は今度こそ真っ二つだ!)
フラムはレヴァでその斬撃を受けるために構える
「ふっ!」
しかしマナフの剣はレヴァを避けるように振るわれ、フラムの脇腹を切り裂いた
しかし、フラムは動じない。受けるために構えていたレヴァをそのまま攻撃に回した。頭を屈めて躱されるが、その一瞬の隙を見逃さずにフラムはマナフを蹴り飛ばした。
マナフは近くの岩に叩きつけられる
「マナフ様!?」
雑魚魔族達も自分達のリーダーがダメージを受けるとは思わなかったのだろう
しかしマナフは何事も無かったように起き上がり、笑い始めた
「クハハハハハ! 俺が蹴り飛ばされるなんて何年ぶりに体験しただろうか! いいぞゾンビ! お前は実にいい!」
ビクッ!
「…俺がゾンビだと何故知っている?」
カミラは何かする前に殺したので情報がこっちまで来てるはずはないのだ
「なんだやはりそうだったのか」
「カマかけられたっ!」
「まぁカミラからもそうかもしれないとは言われていたしさっき切った脇腹も既に治っているようだしな。ほぼ確信していたがな。さて、そうなれば剣では貴様を殺せなさそうだ。別の方法で倒すとしよう」
マナフは何も無い空間に剣をしまう
「【炎弾】」
マナフの背後に大量の火の玉が出現する。その数は百は下らないだろう
「くっそ! またこのパターンかよ!【水弾】!」
フラムはまた相殺させようと【水弾】を使う。
大量の炎弾と水弾の打ち合いが始まった。
しかしマナフの方が生み出せる弾の数が多いようだ。フラムは致命傷になりそうなものだけを選んで水弾で相殺させていく。
しかし止めきれなかった炎弾がフラムの肌を掠め、フラムの肌を焼けただれさせる。
「くそっ! 数が多すぎる!」
「お前、なかなかの魔力を持っているようだな? いいぞ、久しぶりの高揚感だ。もっと俺を楽しませろイレギュラー!」
「うるせえ! 俺は楽しくねぇんだよさっさとくたばれ!」
(【暗幕】)
フラムの体から黒い靄が吹き出し、周囲の者の視界を黒に染める。
「こんなものでどうにかなると思うな!」
マナフがその漆黒の羽を羽ばたかせる
その風圧によりフラムの出した黒い靄は跡形もなく消え去った。
しかし、そこにフラムの姿はなかった
「む? どこへ消えた?」
その時、マナフは強い殺気を感じ、思わず冷や汗をかく
殺気の放たれている方に振り向くと後ろに回りこんでいたフラムがアスを振るっているのが目に入ってきた
「ちっ!」
すかさずマナフは剣を再び握り、それを受け止めようとする
「その剣邪魔だァ!」
フラムは左手のアスを握りながら右手で腰に刺さっているレヴァを抜く
そして抜刀術のようにそのままレヴァを振り上げマナフの剣を切り落とすと、遮るものの無くなったアスの斬撃をマナフに当てるべくアスを振り下ろす
そしてその斬撃はマナフの胸を浅く切り裂いた
「っしゃぁ! 俺の勝ちだマナフ! さっさとくたばりやがれ!」
フラムはその場を離れながらそう叫んだ。とっさに二本の魔剣を同時に扱ったが、意外となんとかなるもんだ。
「何を言っているんだアイツは…。この程度の傷で死ぬほどヤワではないんだが…。ッ!? 全身が熱いっ! これはまさか毒か!? くそっ油断した! 仕方ない! 【獣化】!」
マナフがスキルを発動させる。するとマナフの体がドクンッっと脈動する
「何だ…?」
何が起きているのか分からなかったが危険を感じたフラムは再びマナフに近づき、レヴァで手足を落とそうとする。
しかし、振ったレヴァはマナフに届くことは無かった。
手足を切り落とすためにマナフに向けられたレヴァは、マナフに剣身を掴まれて止められていた。
「何っ!? レヴァを素手で止めるだと!?」
レヴァは剣を一瞬で焼き切れるほどの温度があるはずだった。それを目の前で素手を使って止められたのだ。フラムが困惑するのは必然だった。
「ふむ…この剣なかなかの温度だな。【獣化】を使った上でまだ熱いと感じるとは」
「平気そうな顔をしながら言うんじゃねぇよクソネコ。だいたい毒はどうした毒は」
「猫ではない。獅子だ。毒は【獣化】の効果で消えている。」
「なんだそりゃチートかよ」
「何度でも死ねるお前が言うなよゾンビ」
そう。マナフの顔は獅子のように変化し、その体は燃えるような赤で染まっている。
【獣化】は発動するときまでに受けたダメージを全て回復し、自分の姿を獣に変えるというものだった
「俺が何と呼ばれているか知っているかイレギュラー? 『炎獣』マナフ。それが俺の通り名だ」
バァン!
マナフの拳がフラムの肩を貫く
「!? ああああああああああああっっっっっっ!!!!!!!」
フラムの反応速度を超える速さで撃ち抜かれ、その左腕はボトリと地面に落ちる。
この世界に来て初めての猛烈な痛みを感じる。
「この俺を一度殺すとは貴様はやはりすばらしいぞイレギュラー。だがもう終わりだ。いい憑代も見つけたしな。早く魔王様の復活を成し遂げよう。お前は少し寝ていろ。俺を楽しませた礼だ。命は残しておいてやる」
マナフが痛みに苦しむフラムに手を伸ばす。
「な、何を…」
「【呪縛】」
するとフラムの体の周りに黒い靄が現れ、それがフラムを拘束する
【呪縛】。先程フラムも習得していたスキルで、使用者が触れている者を対象として拘束し、同時に対象のスキルを無効化するスキルだ。
「くそっ。離せ! 離せよクソっ。くたばりやがれクソがぁ!」
フラムがどれだけ暴れても最早それを解くことは不可能だった。
「おい。儀式の準備は済んでいるか?」
マナフはフラムを無視し、部下に問いかける
「はっ。滞りなく。」
「そうか。じゃあこいつはしばらく転がしておくからその間に済ませるぞ」
フラムは放置された。必死にもがいて拘束を解こうとするが、拘束は解ける気配すらない。
そしてマナフはエルフ達のもとへと向かう。
「何する気だ! やめろ!」
フラムはマナフが何をしようとしているのかを察知し、必死に叫ぶ
しかしマナフは気にした様子もなく、フラムの予想通りエルフの虐殺を始めた。
それは本当に一瞬だった。圧倒的な力で一瞬でエルフを駆逐したのだ。
村長、サイロス、アルク……知っている者たちが次々とその生命を終わらせていく
「アルク……サイロス……皆死んでいく……。くそ、やめろぉ! やめろぉ! やめろよぉ!」
フラムは必死に泣き叫び続ける。しかし蹂躙は続けられた。
「ガウッ!」
ギンがマナフを止めようと飛びかかる
しかし
「邪魔だぞ犬。黙っていれば死なずに済むのだからおとなしくしていろ」
マナフの裏拳により吹き飛ばされ、岩に叩きつけられて気を失ってしまった。
そして、虐殺は終わり、最後の一人の気を失ったままのフィリアを残して全てのエルフは死んでしまった。
マナフはフィリアを担ぐと、その場を離れ、部下たちのもとへ向かった
そしてフィリアをそっと地面に寝かせる
「おい。あれの魔力を回収しておけ」
「はっ」
部下達が何かの札のような物を懐から取り出し、死体となったエルフたちの額に付ける。
すると札がぽうっと光を放ち、数十秒経つとその光は収まった。
「完了しました」
「よし。持って来い」
「はっ」
死んだエルフと同数の札がマナフのもとへと届けられる
「それではこれより魔王様復活の儀を執り行う。」
マナフはそう宣言すると、集めた札をバッと空中に投げる。すると札はマナフの周りを取り囲むように浮き、再び光り始めた
「行くぞ、【魂捕縛】」
そのスキルが使用されると、札の光が強くなるのと同時に突然空間が割れ、そこから一つの黒い球体が姿を現す。その球体は黒く淀んだ瘴気を吐き出し続けている。
その時、フィリアの瞼が動いた。
「ん…あれ、私何をして…」
重いまぶたを開けるとそこにはボロボロの姿で拘束されているフラムと黒い球体を手の上に浮かべている獅子の顔をした魔族の姿があった。
「フラムさん!?」
「フィリア逃げろぉぉぉぉぉ!!!」
フラムが全力で叫び、自分が危険な状況にいることを理解したフィリアは咄嗟に体を起こそうとする。
しかし
「ちっ。取り押さえろ」
というマナフの指示によりフィリアは数人の魔族に取り押さえられてしまった
「【入魂】」
マナフのスキルにより黒い球体がフィリアの体の中に入っていく
その時、自分の運命を悟ったフィリアが顔をフラムの方に向け、小さく唇を動かし、言葉を発した。
「------」
フラムはその言葉を何故か聞くことが出来た。あんなに小さい声だったのに何故か鮮明にフラムの耳に入ってきたのだ。
そしてそれを聞いたフラムの目からは涙がこぼれた
もう既に声をだすことも出来なかった。ただただ目の前の状況を見ていることしかできなかった
そして黒い球体がフィリアの中に入るとフィリアの肌は黒く変色し始め、それは儀式が成功したことの証だった




