死人、足止めを食らう
「久しぶりね。イレギュラーさん?キマイラを2匹まとめて片付けるなんて流石ね。」
「…エルフといればいつかは見つかると思ってたがこんなに早くとはな。お前何でこんなところにいる?」
魔族は訝しそうな目をフラムに向ける
「…まだ分からないの?鈍い坊やね。観光目的でこんな所にいると思うの?エルフを追ってきたに決まってるじゃない」
「えぇーやっぱりそうなの?見つかるの早すぎ…」
「今から襲撃する村に見張りの1人や2人置いておいても不思議じゃないでしょうに。」
「確かに!」
「…あなた、おつむの方は弱いみたいね」
馬鹿にすんな!そりゃ事実かも知んないけど!
「ちなみにここら辺一帯は既に魔族によって包囲されてるわ。抵抗は無駄だと思うけど?大人しく殺されなさい」
「それ、はいそうですかって首を差し出すやつこの世にいないと思うぞ?」
……ん?包囲されてるってことは、もしかしてエルフの奴らやばくね?フィリアの守りは硬いし村長もある程度戦えそうだったから少しは持つだろうけどなるべく早く戻らないとじゃね?
「悪い!急用ができた!じゃあな!」
「あははっ!行かせるわけないでしょう?今あなたを足止めするのが私の仕事なんだから」
デスヨネー
フィリア達、死ぬなよ…?
ちらっと一瞬サイロスの方を見て目で合図する
その意味を理解したサイロスは頷くと急いでエルフの元へと走り出した
まぁすぐに魔族にはバレてしまったようだが
「あの子もキマイラ一匹倒せるだけの力があるみたいだからあまり行かせたくはないのだけどね…」
「邪魔はさせねぇよ」
「でしょうね。坊やがそんなに甘い人だとは思ってないわ」
よく分かってるじゃないか
「さて、俺も早く合流したいんでな。さっさと戦おうか」
「…随分と好戦的になったものね?前は一目散に逃げたしてたのに」
「まぁ前は逃げるのが目的だったからな。でも今はお前を倒していち早くフィリア達と合流するのが目的だ」
フラムはすっとアスを抜く。やはり大事な局面では使い慣れてる方を握りたくなるものだ。
「それでは魔族幹部、カミラがお相手するわ。あなたの名前は?」
「フラムだ。行くぞ魔族」
「マスター私は!?私も使ってよ!」
「…機会があったらな」
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サイロスは全力で仲間の元へと向かっていた。自分たちは魔族に包囲されているとあの魔族は言っていた。これではエルフの血が途絶えてしまう。皆が死んでしまう。
それだけは避けなければならない。
自分が加わることぐらいでは状況が好転し得ないことは理解している。それでもエルフの命運がかかっているときに仲間とともに戦えずに後から死体を見るだけ、というのは絶対に嫌だった。
「間に合えっ!聖霊様お願いします!」
サイロスの願いに応えるかのように彼の足が再び青く光り、サイロスは再び加速した。
10分ほど走り続けると、開けた場所に出た。そしてそこから見えたのは、魔族に襲われている仲間たちだ。今はまだ魔族の数が少なく、太刀打ちできているが魔族がここら一帯を取り囲んでいる仲間たちを呼び寄せてしまえば状況は一変し、すぐにでもエルフの敗北が決定するだろう。
「くそっ、最悪だ」
サイロスはクロスボウを構えると、仲間の頭の上を飛んでいる魔族に向けて放つ
「サイロス!?キマイラはどうしたの?フラムさんは?」
こちらに気づいたフィリアが質問を投げかけてくる。周りのエルフたちも突然のサイロスの参戦に喜んだ驚いたりと様々な表情を見せている
「キマイラは俺が一匹、フラム殿が二匹しっかり殺ったが直後あの場に魔族が現れて今はフラム殿がその魔族の相手をしておられる!あの魔族、顔に見覚えがある!おそらく幹部クラスの魔族だ!」
「そうですか…。フラムさん大丈夫でしょうか」
フィリアが不安そうに顔を俯かせる。フラムに会えなくなるのは嫌だ。あの人には多大な恩がある。全部しっかり返したい
「他人の心配をしている場合かエルフぅ!」
つい意識の集中を途切れさせたフィリアに魔族の【魔弾】が襲いかかる。
しかしその攻撃がフィリアに届くことはなかった
パァン!
フィリアに向けられた【魔弾】に横から【風弾】が当てられ、相殺された。
「なっ!?」
魔族は信じられないと言った様子だ。
魔族の放つ【魔弾】を【風弾】で相殺するなど聞いたことが無い。しかも今自分は【轟力】まで使っているというのに。
「ほっほっほ。魔族だ何だと言ってもまだまだ若造じゃの」
風弾を放ったのは村長だった。
自分では間に合わない、と悲惨な未来を想像していたサイロスはほっと胸を撫で下ろす
「さすが父さんだ。絶対俺より強いよなぁ。フラム殿に俺のこと村一番の実力者とか紹介したのは皮肉かなんかか?」
「あ、ありがとうございます村長。助かりました」
「サイロス。自分を卑下するな。お前はワシと肩を並べるほどには強いじゃろう?」
「そうだったらいいんだけどな」
サイロスは考えを改める気は無いようだ。
村長はフィリアに目を向ける
「フィリア。お前が望むことはフラム殿に自分の死体を見せることなのか?」
「…違います」
「だったらそうならないために集中しろ。あの方は大丈夫じゃ。心配するな。あの魔族の言うとおり今は自分の心配をするのだ」
「はい…すいませんでした」
ぐぅの音も出なかった。まさにその通りだ。戻ってきたフラムに自分の死体を見せるわけにも仲間の死体を見せるわけにもいかない。しかも守りだけならフィリアは村一番だと言われているしその自覚もある。そのフィリアの防壁が崩れればどうなるかは火を見るより明らかだった。
何をしているんだ私は
フィリアはパンっと頬を叩いて再び【精霊知覚】によって精霊の力による防壁で魔族に応戦する
自分はメリハリのつけられる方だと思っていたのにフラムのこととなるとどうも冷静でいられなくなってしまう。まったくどうしたんだろう私は。
しかし相手の魔族の数は徐々に増え始め、状況は悪くなる一方だった
「フラムさん、早く来てください…あまり持ちそうにありません…」
フィリアは集中しなければいけない頭では理解しつつも、今自分の一番信頼している人の名前を無意識に呟いているのだった




