死人、再会する
村を出る日の朝だと言うのにまったく緊張感のないやりとりを繰り広げていたフラム達だが、やるときはしっかりやるのだ。ただのお邪魔虫ではないのだ。
朝起きて、一悶着が片付いた後フラムは再び荷造りの手伝いをしていた。
魔剣二本も罰として強制労働させておいた。
アスは「なんでワシも…」とぼやいていたが、レヴァの暴走を止めるのを諦めたお前も同罪だ。連帯責任だ。
フラムは荷造りを進めながらある物を探していた。
帯だ。二本目の魔剣を手に入れてからこれまで、同時に持ち歩くようなことはしなかったので忘れていたが、剣を持ち歩くのにあって困ることは無いだろう。
「フィリアー。なんか帯みたいなものないか?刀が2本刺せるような」
「ん?帯ですか?うーん………。あ!お父さんが昔使っていた物が残っていればあると思いますがそれでもいいですか?」
「フィリアの父さんの?いいのか?形見だろ?」
フィリアの両親はフラムが穴に落ちる前に魔族の実験に使い潰されてしまっていたらしいとフィリアに聞いたことがある。その父さんの私物なら大切なものなんだろう
「いいんです。物は使ってなんぼですから。それにいくら形見とはいえ荷物には最低限の物しか入れられませんし、どうせ村に置いていくつもりでしたから。ちょっと待っていてください!」
そう言うとフィリアは元の家にひっこみ、ごそごそと5分くらい探し回った後帯を持って出てきた
「はい、これが父さんの帯です。大切にして下さいよ?」
「ああ、分かってる。フィリアにとって大切なものだもんな。ありがとう」
フィリアに感謝しつつフラムはその帯を締めた。これで2本の魔剣を持ち歩ける
そんなこんなで昼前には村人全員の荷物を詰み終え、昼食を取った後すぐに移動することとなった。
先頭にはサイロスと村長がいる
「よし!それではこれより村を出る!この地の精霊様たちに最後の感謝を!」
村長の掛け声によりエルフ達が精霊に祈りを捧げる
そしてそれが終わると列を作り、街道を歩き始めた。
その時後ろでバサバサっと羽音が聞こえてきたが特に誰も気に止めることもなく、村を離れていった
3時間ほど歩いた辺りで森に入ったので、一行は1度休憩を取ることにした。1種族としては少ないとはいえ、100人単位で人が動いているため進むスピードは当然遅くなる。だが体力の続く限り歩き続けた結果、魔物や魔族の襲撃などいざと言う時にもう動けません、ではお話にならない。なので適度に休息を取りながら進むという方針だ
歩き慣れていない村人には3時間の歩行は結構キツかったようで、皆足を叩いたりマッサージしたりしている。完全に気が抜けていた
その時
『ガアアアアァァァァァ!!』
と近くからどこかで聞いたような雄叫びが聞こえてきた
「なんだ?」
エルフが警戒を始めてすぐに声の主が姿を現した
「な、なぜこんな所にこいつがいる…?」
サイロスがぽつりとそう呟く。その顔には驚きとともに恐怖が混じっているような気がした
声の主はキマイラだった
「何故だ!キマイラは自然界には存在しないはずだ!こんな所にいるわけが無い!」
そういえばアスも前にそんなこと言ってたな…あいつ火吐くから相手したくないんだけどな…
「ほらお前らはさっさと逃げろ。俺がなんとかしてみるから」
フラムが前に出る、そもそもフラムはエルフを守るために同行しているからだ。フィリアやアルクの仲間が死ぬのを黙って見ているわけにも行かないしな。
しかし、不運は重なるものだ
『『ガァアアアアアア!!』』
「うわマジかよめんどくさ…」
なんと2匹目、3匹目のキマイラが姿を現してしまった。
エルフ達は一瞬のうちに混乱状態に陥った。
キマイラはそれ一匹で【轟力】未使用の魔族くらいには勝てるほど、能力は高いらしい。それが3匹だ。普通の村人達が恐慌状態に陥るのも無理はない
「もうだめだ!エルフは全滅だ!」
「こんな事ならやっぱり村を出るんじゃなかった…」
「精霊様、土地を投げ出して申し訳ございませんでした…どうかもう1度ご加護を…」
エルフ達が生存を諦めたかのような言葉を口々に発する
その時、
「しずまれぃっ!」
皆が諦めていたその時、村長の叱咤が飛んだ
「生きることをそう簡単に諦めるな!ここでするべき事は人生を諦めることではない!皆で力を合わせてこの状況を乗り切ることじゃ!皆で協力して互いを守れ!」
その言葉を聞き、若干ながらも落ち着きを取り戻したエルフ達は固まってキマイラに対抗しようとする
「村長よくやった」
「上から目線でものを言うな若造」
「じゃあ後は任せろ。あいつらどうにかしてみるからその間に少しでも逃げとけ。アス、レヴァ、お前らは剣になっとけ」
「了解じゃ主よ」
「おっけーマスター!」
2人は2本となり、フラムはその2本をさっき貰った帯に刺す
そしてレヴァを抜くと3匹のキマイラとにらみ合った
「ちょっと待てフラム殿。俺もやろう」
なんとサイロスも前に出てきた。
「なんだアレに勝てるのか?やるじゃん」
「勝てるかどうかは分からないが時間稼ぎくらいなら出来るだろう。足は引っ張らないようにする」
「よろしい。じゃあ1匹まかせた」
「私も援護します!」
フィリアも来た
「おう。いつも通り守りは任せた。あんまり前に出るんじゃないぞ」
「はい!」
フラムは再びキマイラに視線を向ける
「前の時は逃げたけどな…。今回はそういうわけにも行かないんでな。相手してもらうぞキマイラ共」
フラムの言葉を理解したのかしていないのか、キマイラは一斉にフラムに向かって炎を吐き出し、フラム、サイロスとキマイラの戦いが幕を開けた




