死人、狼狽える
何故かレヴァまで肩車をねだってきたので仕方なく2人とも肩に乗せてやる。【豪腕】によって腕力に補正がかかっているフラムにとってこれくらいは造作もない。
そうこうしてるうちに宴も終盤に差し掛かり、村長が再び宴の中心に来た。終了の合図でもするのだろう。
「さて皆。宴もそろそろ終わりにしよう。本当に2人が帰ってこれたこと、嬉しく思うておる。ところでじゃ。その戻ってきたフィリアから教えてもらったんじゃがの。そう遠くないうちに魔族がエルフを殲滅しにこの村に襲いかかるらしい。そこでじゃ。皆に決めてもらいたい。この村を出て魔族から逃げ惑う生活を送るのか、精霊様達の加護が強いこの地で迎え撃ち、無謀な戦を行うのかをじゃ」
宴で盛り上がっていた広場に突如として静寂が訪れた。
「お、おい。魔族が攻めてくるってのは確かなのか?」
「間違いないと思うぞ。魔族を尋問して聞き出したからな」
フラムが答える
静かだった広場がざわつき始める
「に、逃げよう!人数も実力も足りてないエルフじゃ魔族の軍勢になんて勝てるわけない!」
「しかし我々は精霊様の加護の強いこの地をずっと昔から守り続けてきたではないか!その地を捨てるというのか!」
「命より大事なものなんてないだろ!逃げよう!」
「でも村を出ても魔族から逃げ切れる保証はあるの?」
エルフ達の意見は二つに別れた
一つは村を出て別の所に逃げるというもの。確かに魔族にエルフが勝てる可能性は低いのでこの選択肢はいい案なのだが、不安要素として魔族に見つからないように村一つ分の人数を移動できるか、ということと逃げる先にアテがないということ。村を出ればこの人数を賄う食料を常に用意できる筈もない。魔族に怯え、物資も足りない生活を送り続けることになる。
二つ目はこの村に留まり、魔族に対抗するというもの。この地は精霊の加護が受けやすいため、この地での戦闘に限って言えばエルフは魔族にもある程度対抗できる戦力となる。しかし、人数の差は歴然であり、この選択肢を選べばジリ貧になることが予想できる
どちらを取るにしてもエルフには厳しい選択肢しか残されていないようだった。
「ふむ…見事に分かれたのう…。サイロス、お前はどう思う」
サイロスとは村長の息子の名前で、村一番の実力者でもあるらしい。
サイロスは少し考えた後
「俺はやっぱり村を出た方がいいと思う。村に残って魔族に対抗しても勝ち目は薄い。ってかほぼ全滅になると思う。だったらまだ皆が生き残れる可能性があるこっちの選択肢の方がいいと俺は思う」
と言った。
「うむ。ワシもそのように思っておった。この地を捨てることに反対のものも多いとは思うが、エルフ存続のためにここは逃げることに賛同してはくれんか?」
その後も話し合いは続いたが、最終的にはエルフ達は村長に従って逃げることを決断した
「フラムさーん!そっちの箱も積んでおいてください!」
「はいよっと」
フラムは準備ができるまで等にやることもないので準備の手伝いをした。
何と言っても【豪腕】は荷造りにも便利な優秀スキルですので、引っ越しの際はぜひフラム運送をよろしくお願いします!
フラムは言われたとおり並んでいる木箱をぽいぽいと馬車に詰め込んでいく。
村長が話し合いが終わった後、明日の昼には村を出るなどと言い出したので皆身支度のために忙しそうに動き回っている
だいたい村の半分くらいの家の荷物を積んだところで日が変わる時間になったので今日はここまでにしようと各自自宅に戻っていく。
「あーさすがに疲れたなぁ。今日はゆっくり寝よう。」
フラムはギンのところに行き、もたれかからせてもらう。最近、土の中よりギンの体に寄りかかって寝るほうが暖かくて気持ちが良いことに気がついた。なので今晩はギンと添い寝だ。
「ふぅ…やっぱギンは暖かいなぁ…」
フラムはギンに寄りかかるとともに、強烈な睡魔に襲われ、すぐに意識を落とした。
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「はい!それでは今晩のマスターへのいたずらは『うわっ!朝起きたら目の前に乱れた服を着た幼女が寝ている!』です!寝ぼけ眼でそんな幼女を見ればさすがのマスターも『もしかして俺、無意識で大変なことをしてしまった!?』と、一瞬でもそう誤解するに違いありません!その一瞬のために私はこの身を投げ出そうと思います!はい、それでは早速現地に向かいたいと思います!」
「…のう、レーヴァテインよ。本当にやるのか?言っておくが怒った時の主は怖いぞ?あ奴にこめかみをグリグリされ続ける地獄を味わったことがあるのかお前は?」
「大丈夫よアスタロト!だからあなたもやるのよ!」
「根拠が何一つないではないか!」
「細かいことは気にしないの!ほら行くわよ!」
「不安じゃのう…」
レヴァがアスをずるずると引きずってフラムのところまで連れて行く
しかし、そこにいたのはフラムだけではなかった。
「なんであそこでフィリアが寝てるの?」
そう、そこにはフラムの隣で眠っているフィリアの姿があったのだ。
「フィリアもいたずらかしら?よ、よし!私も行ってくるわ!あーもう!アスタロトが脅すから少し緊張してきちゃったじゃない!」
「あ、ちょ、おい待てレーヴァテイン、おーい!…あー、行っちゃったのじゃ…あのKYめ。…ワシ、しーらないっと」
アスはフラムと同じように近くにいたシロに寄りかかって睡眠を取った。起きて騒ぎになっていても我関せずを突き通そうとそう決めて。
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朝です。おはようございますフラムです
いきなりなんですが目の前のこの状況を誰か説明しろ
どうして俺の足を枕にしてフィリアが寝ているんだ?そしてどうしてレヴァが俺の隣で寝間着を着崩した状態でぐーすか寝てるんだ?
フラムが混乱して固まっていると足に乗っかっている顔が動き、ビクンッっと思わず反応してしまった。そのせいで「ん、ん?うぅ…ん」とフィリアが声を上げてその瞼を開ける。起こしてしまったみたいだ
「わりぃな。起こしちまったか?」
完全に開いたフィリアの目とフラムの目が合う。足の上に乗っているフィリアの顔を上から見下ろしている感じで
「うわっ!フラムさん!?」
ごつんっ
「うおっ!?」
フィリアがいきなり飛び起きたのでフラムの顔とぶつかってしまった
「あっフラムさんすいません!ぶつかっちゃったこともいつの間にか膝を借りていたことも!寝ている間にずるっと行っちゃったみたいです…」
「あぁそっか。まぁ気にすんな。俺も気にしてないから」
本当は少しドキドキしていたのだが
「そうですか、それでは気にしないことにします。それでですね。そこにいるレヴァちゃんのその格好について説明してもらえますか?」
ニコッ
…この笑顔はまずい。絶対に怒ってらっしゃる。
「いやこれはだな?俺は何も知らないぞ?うん。朝起きたらこうなってたんだ。うん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・女の子がそんなはしたない格好で男性の隣に寝るなんてことあるわけないじゃないですか!フラムさんがやったんでしょう!!ロリコン!変態!」
「ちょ、ちょっと待て!本人に聞けば分かるだろ!ほらレヴァ起きろ!そしてこの状況を説明しろ!」
「むにゃ…ん…マスターおはよ…」
「ほらレヴァ。なんでお前がこんなところにいるのか説明してみろ。」
「ん~?昨日の夜は緊張しちゃって寝るのが遅くなっちゃったんだからもうちょっと寝かして…」
そういうとレヴァは再び眠り始めてしまった。
「夜になんで緊張してたんでしょうねぇ…ふふ…ふふふ…ふ…ふ……………ふぇぇぇぇぇぇぇぇん!!フラムさんの馬鹿ぁあぁああああ!!」
フィリアは泣き出してどこかへ走り去ってしまった。
「あ、ちょっ、おい待てフィリア誤解だぁぁ!!」
後にレヴァが完全に目を覚ましていたずらだと証言するとようやく誤解が解け、レヴァのこめかみは1時間ほどぐりぐりされ続けるのだった。




