死人、到着する
何日か、ただギンの上で寝っ転がりながらたまに出てくる魔物を排除するだけの日々が続いた。
人族の村は途中何度も見かけたが、特に寄る理由もなくまた今は早くエルフの村に着きたかったので全てスルーしていた
その間にもフラムは黙々と魔法の習得に集中しており、2週間ほど経った頃には新たに水魔法と闇魔法を習得していた。
これらの魔法はだいたい3日で習得できたのに対し、最初に試していた炎魔法と後からやってみた聖魔法は5日かけても習得できなかった。きっとフラムはこの二つの魔法に適性がないんだろう。ゾンビの弱点だし。
まぁ普通は一つ一つの魔法に対して年単位の時間をかけて習得するものなのでただフラムの気が短すぎただけなのかもしれないが、というかどう考えても短すぎるのだが
この2週間の努力?の結果、フラムは
【速度倍加】【潜地】【言語翻訳】【超速】【豪腕】【風刃】【嵐刃】【風弾】【風爆】【烈風】【水刃】【水弾】【氷弾】【氷壁】【絶氷】【影化】【幻影】【魔弾】【暗幕】【魂喰】
と少し前とは比べ物にならない程の種類のスキルを手にしていた。まったく、神様さまさまだ。
水魔法も習得した、とフィリアに伝えた時はまた落ち込んでしまい、闇魔法の時はもう既に諦めていた。曰く「フラムさんはフラムさんだから仕方ない」ということらしい。よく分からない。
フラムが闇魔法を覚えた日から3日で一行はついにエルフの村に着いた。
ギン達に乗ってこの日数だったので歩いていたらどれだけかかっていたか分かったもんじゃない。下手したら帰ってきたら村人がいませんでしたーみたいなことになっていたかもしれない。見たところ村に特に被害が出ている様子はない
フラムはギンたちの頭を撫でてありがとうな、と感謝の言葉を述べた。
「帰ってこれた…ほんとに帰ってきた…ぐすっ…うわああああああああん!!」
フィリアとアルクが思わず涙を流していた。
魔族に攫われたのだ。まさか生きて帰ってこれるとは思ってなかったのだろう。
今まで泣くのを我慢でもしていたのか涙腺が決壊したかのようにわんわん泣き出した。
その泣き声を聞いた村人達が家から出てきた。そしてフィリア姉弟の姿を見ると驚きを隠せない顔で全員が固まる
30秒ほど辺りに沈黙が流れた後、誰かがポツリと呟いた
「フィリア?アルク?そうなのか?」
その声が聞こえたのか、少し感情が落ち着いてきたフィリア達は「はい!フィリアです!ただいまです!」「アルクだよ!」と自分達の生還を伝える
その瞬間、村に歓声が響き渡った
「フィリアだ!フィリアが帰ってきたぞ!アルクも一緒だ!」
「村長!村長はどこだ!まだ寝てんのかあのジジィこんな時に!たたき起こしてくる!」
「宴だぁ!今日の夜は宴だぁ!準備するぞ!」
瞬く間に大騒ぎになってしまった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「村長っ!」
結局村長が出てくるまで20分ほどかかった。だいぶ寝起きの悪い爺さんみたいだ。
「おお!フィリア!アルク!よく戻った!話を聞いた時はまさかと思ったが本当にまた会えるとは思っておらんかったぞ。よし!今夜は宴じゃ!戻って来た仲間を精一杯労おうぞ!」
「「「「「オオオオオオオオオ!!!!!」」」」」
エルフ達のテンションは最高潮だった
「してフィリアよ。色々と聞きたいことがあるんじゃが。まずそこにいる魔物達は何じゃ?」
「このワンちゃん達ですか?途中で拾ってここまで乗せてきてもらいました」
そう言ってギンの頭をなでなでする。ギンもいつも通りなでなでを受ける
「その魔物は神狼と言って自分より強いものかその仲間にしか絶対になびかないはずなんじゃかな…。フィリアいつの間にそんなに強くなったのじゃ?後そちらの魔物は?」
村長はフラムの方を見ながら再度フィリアに問いかける
ギン達と普通に接することが出来るのはフラムのお陰だろうと思ったフィリアは首を横にぶんぶん振った
「…へぇ。俺が魔物だって分かるのか。魔族ですら初見では人族だと誤解してたんだけどな」
「そんなの魔力を見れば分かるわい。それで、コヤツは何じゃフィリア?」
「この人は私とアルクを魔族から連れ出してくれた命の恩人のフラムさんです。横にいる二人の女の子はアスちゃんとレヴァちゃんで二人共魔剣です」
「ほう。この者が力を貸してくれたのか。礼を言うぞフラムとやら。魔剣を二本も持っているとは見上げたものじゃ。お主も今宵の宴楽しんでいってくれ」
魔物とバレたら何かしら自分に危害を加えに来るのではないかと言うフラムの心配は杞憂に終わったようだ。
「俺が言うのも何だが、良いのか?魔物なんかを信用して。魔物はエルフを襲うことだってあるんだろ?」
「当然そうじゃがの。仲間の恩人をどうこうしようという考えが浮かぶほどまだ耄碌はしてないつもりじゃぞ。」
エルフの村長はなかなか義理堅い様だった
フィリア達が元々住んでいた家の近所のおばさんのご厚意でフィリア達はお風呂に入らせてもらっていた。フラムは寝っ転がっているギンに寄りかかってうたた寝をしていた。魔剣達も一緒だ。3人と2匹は木陰で気持ちの良い風に吹かれながら夜までの時間を久しぶりにゆっくりと過ごした。
フィリアは風呂を出て、おばさんに礼を言うと村長を訪ねた。伝えなければならないことがあるからだ。
「村長。いらっしゃいますか?」
「なんじゃフィリア。何か用か?」
フィリアが村長の家の扉をノックすると中から村長が出てくる
「村長。魔族は近々この村に襲撃をかけるつもりです。奴らは私達を魔力減としか見ていません。魔族が来る前に別の場所へ逃げたほうがいいと思います」
「…そうか。実際に魔族と対面し、逃げ出してきたお前が言うのならば間違いないのだろうな」
「はい。村長には分かるでしょう?アルクの魔力がだいぶ減っているのを。」
「そうじゃな。昔の半分以下まで下がっておったわ」
「エルフは魔力がなくなるとその存在が消えてしまいます。死と同義です。父と母はそうなってしまったようでした。皆がそうならないように一刻も早く逃げるべきだと私は思います。」
「そうか。後で皆に聞いてみるとしようかの」
そういうと村長は家に戻っていった。
日が暮れたころ、村の広場に村人が集まった。そして
「それでは…フィリアとアルクが無事に戻ってきてくれたことを祝して、乾杯!」
「「「「「「乾杯!」」」」」」
村長の音頭で宴が始まった
「なーにーちゃん!にーちゃんがフィリアねぇちゃん達を助けてくれたんだろ!にーちゃんありがとう!」
「フラムお兄ちゃん肩車してー!」
「フラムさん魔物なんだって?俺。魔物と喋るの初めてだ!魔物ってどんな感じなの?」
「わー!ワンちゃん可愛い!ねぇ、触っても良い?」
宴が始まってすぐ、フラムは村の子供達に囲まれてしまった。子供ってのはほんと警戒心ってもんがないな…一応魔物だぞ俺。まぁ何かするつもりもないけどさそりゃ
「おう、どういたしましてだ」
肩車を要求してこた子を担ぎ上げ、ギンとシロには子どもたちと遊んでやるように促しながらそう応える。
「来たばっかりだというのに随分と懐かれておるのう主は」
「あたしも混ざってこようかな…マスターの肩車いいなぁ…」
魔剣二人がそんなことをぼやいていた




