死人、手懐ける
魔族は逃げない。逃げても無駄だとわかっているからだ。目の前の敵の圧倒的なスピードを先ほどの打ち合いで直に理解している。それ故に逃げることの無謀さも分かっていた。戻ってきたのは魔族にとって完全にミスだった
腕を切られた。いつの間に、どうやって切られたのか全くわからなかった。痛みに耐えられずに地面を転げまわる。本当に何なんだコイツは
目の前の絶望は口を開く
「簡単には死なせない」と
そしてそれは言葉そのままに実行されることになる
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魔族が転がっているところにフラムはゆっくりと歩いて行く。
「まず第一問目だクズ。お前はなんでこの森にこの子を狩りに来た?」
「命令されたからだ」
「誰に?何のために?」
「…命令なさったのはマナフ様だ。」
「もう一度聞くぞ?何のために?」
「…………」
「そうか」
フラムは躊躇なく魔族の左腕を切断する
「ああああああっ!」
「速く答えろよグズが。四肢全部失いてぇのか?あぁ?」
フラムが威圧するが魔物は聞く耳を持たず、フラムを睨みつけると残った脚で落ちている剣を握るとフラムの腕を切り落とした。
「ざまぁみろ化物が。油断してるからそうなる!」
魔族はしたり顔でフラムを見る。しかしその顔はすぐに驚愕に染められた。
切り落としたはずの腕が何事もなかったかのように再生していたのだ。
フラムの口角が釣り上がる
「ハハハハハッ!!何調子乗ってんのお前ェ!?お前が何をしようと俺には傷一つつけられねぇよ!さっさと情報洗いざらい吐いて死ね!」
フラムは既に魔族一人くらいなら圧倒できるレベルにチートなのだった
その姿は魔族から見ても悪魔としか言いようがなかった。あまりの豹変ぶりには仲間の4人もすらドン引きし、全員がフラムを怒らせるようなことは絶対にしないようにしようと固く心に誓うのだった。
約2時間程の拷問の末、フラムの体は返り血にまみれ、その結果魔族から幾つかのことが聞き出せた。何度か魔族が痛みで気絶してしまったためだいぶ時間を取られてしまった。ったくあのグズめ
ちなみに当の魔族は四肢を切断された痛みでもがき苦しみながらも出血死することも出来ず、うめき声を上げながら「殺してくれ、殺してくれ」とブツブツ言っていたのでお望み通りアスで殺っておいた。
魔族によると、現在の魔族のトップがさきほど出てきたマナフという奴だそうだ。
そして目的だが、魔王の復活というものらしかった。先代の魔王が勇者に倒されてから現在まで魔王は存在していなかったらしい。しかし、魔族の研究者が魔王の復活方法をついに確立した。魔族はその瞬間から自分たちの仕えるべき王を復活させるべく行動を開始した。
魔王の復活には多大な魔力が必要であった。魔族はその魔力を他の種族から採ろうと考えた。そしてエルフに目をつけた。
エルフは弱小種族であるため補充がしやすく、魔力の質も高い。そして使役している精霊も合わせて見れば、魔力量もそれなりである。
そのため、エルフの村から何人かを誘拐し、魔力を取り出す実験をした。結果は半分成功だったが、まだ試してないことが幾つかあった。しかし、実験途中に一緒に捕らえていた人族と一緒に実験動物に逃げられてしまった。
計算上、魔王の復活には捕らえていた二人を除いた村全員の魔力を使う必要がありそうだったので実験に使えるエルフは残っておらず、残りの実験は強力な魔物で代用しようとした。なのでこの魔族にこの森で一番強力な魔物を生け捕りにしてこい、と命令がくだされたのだった。もちろん魔族が派遣されたのはこの森だけではなく各地に飛ばされているため、この魔族を止めたところで実験は続くのだが。
「これさぁ…いつか魔族がエルフの村に攻めてくるってこと?」
「…やっぱりそうですよね。早く村に戻らないと皆が…」
フィリアが不安そうな顔をする
「そうだな。急がないとな」
魔族が村を襲うまでに村に着いておきたいな
「ガウゥ」
「どうした?」
助けた親子犬がフラムをじっと見て、一声鳴く。
自分達も付いて行きたいと、そう言っているかのような眼差しで
「なんだ?お前らも来るか?」
「ガウ」
「お手」
ポン
「おかわり」
ポン
「一周回ってワン」
クルッ、ワン!
「よし合格。ちゃんと俺の言うことがわかるみたいだな。そんじゃあ行くぞ!」
「マスター!連れて行くんならこの子たちにも名前つけてあげよ!」
「また俺がつけるのか…じゃあ親の方はギンで子の方はシロで、どう?」
「マスター、それあの子たちの毛の色そのまんまじゃん…」
皆からジト目を向けられる
「…うるせ、苦手なんだよこういうの考えんの」
結局二匹の名前はギンとシロになった。
気を取り直して移動を開始しようとするとギンがしゃがみ込み、ワンッっと吠える
「乗れってこと?」
「ワンッ!」
そういうことらしいのでフラム、フィリア、アルクがギン、魔剣幼女二人組がシロに乗った。
「よし、じゃあギン、シロ、頼む。エルフの村まで行きたいんだが。まぁとりあえずこの森を抜けてくれ。」
「「ワン!」」
二頭はわかった!とでも言う風に鳴き、森の中をかけ出した。
その速さは流石この森で最強の魔物だけあってなかなか速かった。前世で親との旅行の時に高速道路を走っている時を思い出す。60キロは出てるんじゃないだろうか。フラムはギンの背中をもふもふしながら前世のことを思い出していた。
その速さの御蔭で日が暮れる頃にはフラム達は森を抜けていた。
もう前に狩ったクマと兎は食べきってしまったので、またフラムが森に入って何か食料を調達しに行くことになった。
今回は風魔法の練習も兼ねているので魔剣共は留守番させておく。
森に入って暫く歩くと小川が見えてきた。
(【風爆】)
フラムがスキル名を念じると川の数メートル上に透明な玉のようなものが発生し、キュインッっという音とともに周りの空気を吸い込むと、次の瞬間
バァン!
物凄い音とともに透明な玉を中心にとてつもない衝撃波が半径20メートル程の範囲に広がった。地面はえぐれ、範囲内にいたフラムの内臓も衝撃波によってぐちゃぐちゃになったようだ。口から血が吹き出す。まぁすぐに治ったのだが。
「これは…威力強すぎ」
口から出た血を腕で拭いながらそう呟く。フラムはこの魔法で川の中の魚を何匹か殺せないかなー程度の感覚で打ったのだがぷかぷかと浮いている魚の死骸はぐちゃぐちゃになっており、とても食べられそうになかった。っていうか持ちにくそうだから持って帰りたくない。
その時、ドスン!と何かがフラムの近くに飛び降りてきた。
それはどう見てもカエルだった。ただやけにでかいが。
「確かカエルって食えるよな…?鶏肉みたいな味がするとか聞いたことある」
今日のおみやげはコイツにしようと決め、風魔法を行使する
(【風弾】)
するとフラムの人差し指の先に小さな空気の玉が生まれ、それをカエルに向けて飛び出すように念じるとヒュンッ!っと勢い良くその玉は飛んでいき、カエルの眉間をぶち抜いた。
「おーこれは使いやすい」
有用そうなスキルをまた一つ手に入れたフラムだった。




