死人、キレる
エルフ姉弟はクマと兎の肉を焼いて食べた後、疲れが溜まっていたのかすぐに眠ってしまった。
その夜もフラムは「風ぇ!こい!」をやっていた。地道な努力は重要なのである。
「何やってんのマスター。中二病?」
「よく覚えておけレヴァよ。儂らの主は痛いぞ」
「はいそこ新入りに嘘教えないでねー」
いくらこんな世界に来てしまったからといって、そんな病気にかかってはいないはずだ。そう信じたい
ピローン♪
『スキル【風刃】【嵐刃】【風弾】【風爆】【烈風】を習得しました』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・んん??????
おかしいな、今幻聴が聞こえた気が…疲れてんのかな…まぁ昨日は徹夜だしな…
「アス、一応なんだけど俺のスキル確認してみてくんね?」
「どうした主?まぁ別に構わんが」
前と同じように、アスは俺の手を握り目を閉じる。
10秒ほど経つと、アスは目を見開き、フラムをじっと見つめる
「主、どんな手を使った。なんで風魔法スキル全般を習得しておるのじゃ」
「あ、やっぱり?聞き間違いじゃなかった?」
「2日で魔法スキルを習得する者など聞いたことがないぞ…何者なんじゃ主は…」
まぁどうせ神様の仕業だろう。こんなチートの体くれたのになんで臭いはあれだったんですか神様
風魔法スキルを習得し終えてしまい、急にやることがなくなったので土の中で眠ることにした。魔剣二人はエルフたちのところで寝かせる。あーやっぱ寝心地最高。おやすみ。
朝起きて土の中から顔を出す。やっぱこれモグry
皆は昨日の肉の余りを朝ごはんとして食べていた。
昨日のこと一応伝えとくか
「フィリア。えっーとだな…。」
「?どうしましたフラムさん?」
「一昨日風魔法スキルの習得の仕方教わったじゃないか?」
「そうですね」
「あのな…そのスキル昨日の夜習得できちゃった」
「はい?」
「だから、できちゃった」
テヘペロッ
「はいいいいいいいいいいいい?????????」
フィリアの絶叫が森に響き渡った。
フィリアが消えてしまった焚き火の前で「風魔法スキルを2日って…私の1/365…あ、おっきいアリさんだ、フフフ」と体育座りをしながら蟻の観察を始めてしまった。思ったよりダメージを与えてしまったみたいだ。
「お姉ちゃん元気出して。フラムお兄ちゃんがすごすぎるだけだよ。村の人達も皆2.3年かかったって言ってたじゃん」
アルクがポンポンとフィリアの肩を叩きながら慰める。弟に慰められる姉ってどうなんだ…と思ったけど原因を創りだしてしまったのは俺なので黙っておく。
「そ、そうね。フラムさんだもんね。あの人がおかしいだけだもん。しょうがないよね」
胸の前で拳を握りしめ、気合を入れなおしている。立ち直ったみたいなので良かったのだが人のことを化物みたいに言うのはどうかと思う。
一通り片付け終わったので、一行は再び森を抜けるために移動を開始した。フラムは昨日と同じく襲ってくる魔物をボコボコにしている。【豪腕】ほんと便利。アルクが「また肩車して~」とねだってきたが、またフィリアに怒られそうなのでやめておいた。
「みんな伏せろ!」
「どうしたのフラム?」
「上空に魔族がいる」
フラムの警告通り、上空を背中に生えた翼でバサバサと飛ぶ魔族の姿が見えた。
「もしかして私達を追ってきたんですかね?どうしましょう…」
「とりあえず隠れていれば見つからないと思うし大丈夫だろ。」
そんなことを言っていた張本人が真っ先に見つかることになるのだが。
ワォォォォォォォン!!!!
身を隠しながら進んでいると突然森全体に魔物か何かの声が聞こえてきた。
「ちょっと見てくる」
フラムは声のした方に向かって気配をなるべく消しながら走った。
するとそこには先程飛んでいた魔族と、体長2メートル程の犬のような魔物が睨み合っているという光景があった。魔物のそばには子犬魔物がいる。子犬も1メートル程はあるようだ。
しばらく睨み合っていた両者だったがしばらくすると魔族の方から戦闘をしかけ、戦いになった。犬の方は最初こそ互角に戦っていたものの、魔族側が【轟力】を発動させたのか、動きが機敏になると次第に押され始め、ついに魔族の剣が犬の首に添えられる。
「貴様は実験材料にさせてもらう。安らかに眠れ」
この言葉を聞いた瞬間、フラムの中で何かが切れた音がした。
「おい。なんだそれは。詳しく聞かせろこら」
突如、魔族の肩に誰かの手が載せられる。
それは紛れも無くフラムの手であり、フラムは完全に切れていた。
「何だ貴様は。邪魔をするな」
「てめぇ、そんな可愛い親子犬を捕まえて実験材料にするだぁ?寝言は寝ていえこら」
フラムは昔から犬派だ。一度犬に噛み殺されていてもそれは変わらない。
「それはこちらのセリフだ。人間ごときが魔族に楯突くな」
魔族はそう言うと同時に剣をフラムに振り下ろす。【轟力】は発動されたままだったようでだいぶ力強く、そして速く振られている。しかし、フラムにその攻撃が当たることはない
(【超速】)
フラムはいつものスキルを発動させるとその剣を躱し、懐に潜り込む。そして魔族の鳩尾に思いっきり拳を叩き込む。
「がっ!?」
魔族は予想外の反撃に対応できず、体をくの字に曲げて吹き飛んでいく。
「大丈夫かお前?」
フラムが頭を撫でると犬の魔物は頭をフラムに擦り付けてきた。ふふ、可愛いやつめ。
フラムが犬をモフっているとさっき飛ばした魔族が戻ってきた。
「貴様そのスピードとその力。もしや報告にあったイレギュラーか?」
「俺がどう言われてるかなんて知らんわアホ」
ドガッドォン!
もふもふタイムを邪魔されて腹がたったのでもう一発くれてやった。
「やっぱりあの轟音の正体は主か」
「マスター自分で隠れてろって言いながら一番最初に見つかっちゃうんだからもう」
魔族を吹っ飛ばした後、アス達が森の中から現れる
「見てたのかよ」
「フラムさん犬好きだったんですねー可愛いですよねーもふもふ」
一応その親子犬は魔物なのだが、完全にペット扱いされていた。犬の方も特に嫌がることもなくもふもふされている。魔族と渡り合ってたし結構強いはずなのにプライドとか無いのかなぁ。まぁ可愛いからなんでも良いや。もふもふ
「おい貴様らぁ!俺を無視するなァ!その犬を寄こせ!」
ふっ飛ばした先からまた魔族が飛んできて何か言ってくる。
「あ?何いってんのお前?犬派の俺の目の前で犬を殺しかけて実験材料にするとかほざきやがったんだ。そっちこそ覚悟は出来てんだろうなァ?おいレヴァちょっとこっち来て剣になれ」
「なんかマスターが怖い…目が血走ってるよぉ…」
レヴァが少し引きつつもフラムのそばに来て剣化する。
フラムはレヴァを握るとチラッと魔族を見る。
魔族はその瞬間にとてつもない悪寒を感じ、思わず後ずさる
(なんなんだこいつは!?なぜ魔族の俺がこんなガキに恐怖を抱いている!?)
と混乱状態にあった魔族は隙だらけもいいとこだった。
ヒュンッ!
ドサッ
最初の音はフラムがレヴァを振った音。そして二つ目の音は魔族の右腕が地面に落ちる音だった。
断面は焼かれ止血されるが、痛みは止まらない。右腕を失った痛みが突如として魔族を襲う。
「ギャアァァァァァァアアアアッッッッッ!!」
魔族の絶叫が森に響き渡る
「すぐには殺さないさ。情報あらかた吐いてから死ね」
フラムのこの世界に来てから、いや前世を合わせても一番の冷徹な目が魔族を見据えた




