死人、目的を果たす
レヴァのいた部屋の奥にはどこかで見たような陣があった。攻略者のために設置された、外に出るための転移陣らしい。
「転移!」
フィリアがそう叫ぶと俺達は外の世界に転移した。
「あーひっさしぶりのシャバの空気だぜ!」
転移が完了すると、俺達は真っ青な空の下にいた。周りにはたくさんの木々。どこかの森だろう。
穴に落ちてから何日立っただろうか。ようやくフラムはおひさまを拝見することが出来た。
森のなかにいきなり飛ばされたわけで、目印も何も会ったもんじゃないので適当な方向に歩き始める。もちろん目的地はエルフの村だが方向が合っているかなんて知らない。
「主!あれ!ルリの実!」
しばらく歩いているとアスが急に大きな声を上げながらある場所に指を向ける。
「何!ここは天国か!」
アスが指差す方に目を向けると少し先の方に開けた場所があり、地面にはたくさんの植物が青い実をつけていた。
「うおおおおおおおおお!!」
フラムは全力ダッシュでそこへ向かって走る。
途中で猿型の魔物が上から襲ってきた。
「邪魔だどけやごらぁ!」
フラムは魔物を殴った!
魔物は吹き飛んだ!
地面が青に染まっている。見渡す限りルリの花が咲き、ポツポツと実をならせている個体も見られる。
ひゃっほう!
フラムは次から次へとルリのみを採取すると、ポイポイと麻袋に投げ入れていく。
ルリは水分の多い土壌を好む植物らしい。そのためルリの実のなる場所の近くにはたいてい清流が流れているものだと聞いた。今回も例に漏れずすぐ近くには小川が流れていた。
ポルタの実、ルリの実、水
三種の神器が今ここに揃った!
「アスさんおなしゃーす!」
俺は二つの実を川岸に置き、ナマイキ幼女に頭を下げた。
「うむ、それでは匂い消しを作ろう。ではまず主、この二つの実を絞って汁を出すのじゃ。ポルタの実3個に対してルリの実2個の配分で頼む。素手でやるでないぞ?主の臭いが移っては元も子もない」
「合点!」
フラムは着ていた上着を脱ぐと、それで実を包んだ。そしてフィリアが風魔法スキルで木を削りとって作ってくれた器のような物を下に置き、実をぐちゃっと握りつぶした。上着によってこしだされた汁が木の器に入っていく。赤いポルタと青いルリの汁が混ざり合い、汁の色は紫だ。
「こんなもんでいいか?」
器に汁が8割くらい入ったところでアスに声をかける
「十分じゃ。こっちへ持って来い」
「イェス、ボス!」
テンションが狂っているのはご愛嬌ってことで
「この液を水で薄める」
「薄める」
川の水を手ですくい取り、器に入れる。
「これで完成じゃ!」
「イェーイめっちゃ簡単!体にかければ良いのか?」
「その通りじゃ!早くぶっかけろ!」
「イエッサー!」
ばっしゃぁー!
フラムは器を頭の上でひっくり返し、その液体を自分にぶっかけた
「臭いはどうだ!」
アスが近寄ってクンカクンカする。
「問題ないぞ!あのヤバ過ぎる臭いはしない!」
「ほんと!?すごいじゃない!」
レヴァも近寄ってきてクンカクンカする。
「うん、いい匂いよマスター!」
レヴァはニパッとしながらそう言ってくれる。
「よっしゃぁぁぁぁぁ!臭くなくなったァ!」
この日、フラムは最大の悩みであった自分の体臭を克服したのであった。
あーもう俺の旅おわった
俺の目的は達成されたのであとはこいつらを村まで送り届けるだけだ。もう臭くもないし気分もいいのでアルクを肩車しながら森のなかを進む。アルクも高い目線で周りを見るのが楽しいらしく「すごい!高いよお兄ちゃん!」と肩の上ではしゃいでいる。
途中、魔物が襲ってきたりもしたが、アルクを担ぎながら殴り飛ばしたりしていた。アルクは楽しそうだったがフィリアに「うちの弟を危ない目にあわせないでください!」と怒られてしまった。
日がだいぶ落ちてきて今日中には森を抜けられそうにないので、今日はここで野営することにした。
そこら辺の木を切って薪にし、レヴァが火をつける。前に森で野営した時は火焚けなかったからなぁ。なんか野営!って感じ。
フラムは食事が必要なわけではないが、昼間出てきた魔物は全部殴り倒してしまったため、レヴァの試し切りができていなかった。なので試し切りついでに夕食に皆が食べる肉を調達してこようと、レヴァを握って夜の森に入っていった。アスが「ワシも持っていけ!」とか言っていたが、アスの毒を注入した肉をあいつらに食べさせるわけにもいかないので当然ハウスさせておいた。
レヴァを剣化させ、夜の森を歩く。しかしそう簡単に獲物が見つかるわけもなく、一時間ほどぶらぶらしても何もいなかった。
「どうしよ…。あ、食べ物で誘い出す作戦するか。ちょっともったいないけど」
ポルタの実は地球で言ういちじくのような実で、これは動物も食べそうだな、と思ったのでこれを囮にすることにした。
ポルタの実をぐしゃっとやって地面に置き、獲物が来るのを草陰に隠れて待ってみる。潰したのは匂いをすこしでも強く出すためだ。
しばらくすると向かい側の藪がガサガサっと揺れた。
そしてピョンっと兎みたいなのが飛び出してきた。体は1メートルくらいあるがどう見ても兎だ。
「マスター、私に魔力を流しながらあの兎に向かって振ってみて」
レヴァがそう囁いてきた。魔力は【超速】の発動時くらいにしか使わないし、今回はレヴァの試運転ということもあるので言われたとおり、魔力を流してブンッっと兎に向かって振る。
すると炎の斬撃が飛び、兎の体を焼き切る。
兎はキュウン!と断末魔を上げ、その場で果てた。
「何お前遠距離攻撃できたの!?すげぇな!」
「でしょ!もっと褒めてもいいのよ!」
人型に戻ったレヴァが胸を張ってドヤ顔をしてそんなことを言ったので、頭をなでながら「すごいぞ~」と言ってたらすごい嬉しそうな顔をされた。
とにかくレヴァはすごかった。さっきみたいに炎は飛ばせるわ炎精霊の加護をフラムに与えることである程度の熱を遮断するわ。動物を切っても途中で刃が止まることも当然なかった。でも途中で出てきたクマみたいな奴は炎の斬撃一発じゃ死ななかったし殺傷能力はアスのほうが高いのかもしれない。っていうかレヴァで生き物を切ると切断面がこんがり焼けて敵の止血をしてしまう。
「レーヴァテインちゃんは敵として立ちはだかったものにも優しさを向ける慈愛に満ちた魔剣なのよ!」
「いや敵だろ殺れよ」
この世界にきてだいぶ考えが物騒になったフラムだった。
結局フラムはクマ1匹と兎3羽を担いで皆のいるところへ戻った。




