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死人vs首なし

結局フラムはその夜、一睡もすることなくひたすら風魔法の練習を繰り返していた。ゾンビに睡眠不足なんて文字はありません。そのくらいで体に異常をきたすほどやわじゃありません。


エルフ姉弟が目を覚ますと洞窟探検を再開した。フラムは食事を行う必要がないが、他の二人はそういうわけにもいかない。特にアルクの方は衰弱していたこともありお腹が減っているようだ。さっきからお腹がぐーぐーと鳴っている。

なのでフラム達一行はとりあえず洞窟の中で食料探しを開始した。


洞窟の中で食べられそうなものは主に魔物の肉かそこら辺に生えているキノコだ。魔物の肉は肉が硬いし腐った肉の味がするらしい。フラムには味覚が無いので分からないが、まぁ簡単にいうと不味いという事だ。

なので洞窟内では基本的に外から食べ物を持ち込むか、生えているキノコ類を採取して食べるかになる。フラム達は魔族から逃げてきたわけで当然食料を持ってきているわけがない。つまり必然的にきのこ狩りをしよう!ということになる。


フラムは毒味係だ。なんせ毒キノコを食べても死なないからね

キノコは洞窟の中にはわりと頻繁に見かける。あ、第一キノコ発見

パクっ。もぐもぐ、ごっくん。どろどろ。


「フラムさん、どうですか?」

「うわーだめだこれ。なんかお腹の中が溶けてるような感覚がする」

「うわっ、えげつないですね…」


このようにキノコを見つけては食べ、大丈夫なものを二人に渡していった。そのおかげで特にお腹を壊したりお腹が溶けたり頭がおかしくなったりすることもなく、順調に道を進み、腹を満たしていった。時々骸骨が道の脇に落ちていることがあり、その度にフィリアが「きゃっ!」っと可愛らしい悲鳴を上げるのだがこの子は隣にゾンビがいるのを覚えているのだろうか。


エルフ姉弟が腹を満たし終えたころ、フラム達は斜め上に伸びる道を見つけた。とりあえず上の方に行けばいずれ出られるだろうとフラム達は考え、その道を進んでいった。

その道には本当に全く魔物が出てこなかった。今までは20分に1匹または群れ一つくらいの頻度で遭遇していたのにすっかり姿を見せなくなってしまったのだ。


「全然魔物がいないな?まぁ楽でいいんだけど」

「主、あまり気を緩めるでないぞ?」

「わかってるって。一度痛い目にもあってるからな」

「痛い目?」

「森でキマイラのしっぽ踏んづけちまってな。そいつから逃げて崖から飛び降りたらあそこまで落ちちまったんだ」

「不注意にも程がありますね…。気をつけてくださいよもう」

「もうあんなヘマはしないようにするよ」

「次魔物が出てきたら私も頑張りますね!アルクももう自分で歩けそうなので次からは援護できそうです」

「そうか、頼むよ」


斜め上に伸びる一本道をひたすら進むと大きな扉が見えてきた。


「また魔族がいたりしないだろうな…」

「そんな何度も魔族に鉢合わせたりしませんよ。行きましょう」


フィリアが扉を押し開けた。

中には魔族はいなかったが、代わりに首なしの騎士、デュラハンがいた。

そして、デュラハンを挟んだ反対側にも扉が見えた。


「喜べ攻略を夢見し者よ。ついにこの魔宮最後の試練だ。先の扉の先に汝の望むものがある。手に入れたくば我を倒して道を切り開け。さすれば扉は開かれよう」


なにこいつ口ないのにどうやって喋ってんのこっわ

俺たち3人は顔を見合わせ、一斉に首を傾げる。

試練?攻略?最後?なんのこと?人違いじゃありませんか?と


「何をしてる?早くかかってこんか」


フラム達が一向に動く素振りを見せないのを訝しみ、デュラハンは戦いの催促をしてきた。


「具体的には何をくれるんだよ?」

「知らないでここまで来たのか?戦士なら誰もが欲するものだ。そこまで言えばわかるだろう?」


…なるほどわからん。

戦士かー、戦士って言えばむさ苦しい男共だよなぁ。そんな奴らが誰でも欲しがるものか…。


「…女か?」

「フラムさん不謹慎ですいやらしいです汚いです自重してください空気読んでください」


フィリアにジト目でそう言われた。酷い。いや、汚いのは認めるけど

フラムは向けられるジト目から目をそらし、「いや例えばだって」と誤魔化す。

ちなみに戦士が欲しいものとして一番最初に挙げられたものが女だったので、デュラハンさんは「戦士とはそういうものではなぁい!」と少しキレ気味でいらっしゃった。


「まぁよい。開ければ自分が今本当に欲しいものがなんなのかわかるだろう。さぁ剣をとれ。せっかくここまで来たんだ。熱い戦闘を繰り広げようではないか。なかなか相手が来なくて暇だったんだ」


この首なし、完全に戦闘狂じゃねぇか


まぁこの首なし、戦わないと逃がしてくれ無さそうだと感じたフラムは仕方なくアスを抜いた。


「面倒だ。とっとと終わらそう。行くぞ首なし」

「ああ」


(【超速】)


フラムは直近に覚えた使い勝手の良いスキルの名前を思い浮かべた。

そして地を蹴りデュラハンに急接近する。そしてそのままデュラハンに向かって剣を振るう。

しかしカァンという金属音とともにアスがデュラハンの纏う鎧に弾かれる

そしてその隙をついてデュラハンがフラムの右腕に向かって剣を振り、右手はボトッと握っていたアスと一緒にその場に落っこちた。


「冷静に考えてアスで鎧をどうこうできるわけなかった」

「余計なお世話じゃアホ。ほれ、次の攻撃が来るぞ」


デュラハンは追撃を繰りだそうと振り下ろしていた剣を振り上げてくる。


ゾンビの肉体再生には一瞬のラグが存在する。肉体の再生を待ってアスを拾って追撃を躱す。そのようなことをしている時間は無さそうだった。アスを拾うのを後回しにしようかと考えていたその時


「精霊さんお願い!」


突然のフィリアの声とともに光の壁が現れ、デュラハンの剣を弾く。


「ナイスだフィリア!」

「守りは任せてください!」

「僕も!【風刃】!」


体力のだいぶ回復したアルタも風の刃で援護してくれる。

フラムはその間に再生にした右腕でアスを握り直す


「なんだ。随分と高度な回復魔法でも持っているのか?右腕は切り落としたはずなんだがな」

「さぁな。戦闘中にネタばらしするアホが居るわけ無いだろ」


フラムはさっきと同じように【超速】を使ってデュラハンに接近する。

狙う場所は鎧ではない。フラムは剣を握るデュラハンの手を集中的に攻撃することにした。


「むっ!その判断は良いぞ!しかしまだ甘い!」


デュラハンの剣の腕は相当なようで、フラムが何をしようとしているのかを一瞬で見破るとフラムの剣撃を、剣を使っていなしていく。【超速】状態で剣を振るっているが、全て剣で受け止め、または流されていく。これが剣の力量の差なのだろう。最近少しは剣の扱いに慣れてきたと自負しているフラムだったがその道のプロには到底及ぶはずもない。

しかし速度では逆に圧倒的にフラムが上回っていた。この差が何をもたらすのか、それが今ここで示されることになる。


フラムは剣撃の最後に突き出した剣を、デュラハンの剣と触れ合う前に無理やり体とともに下に落とす。

デュラハンがフラムのスピードに対応できていたのは、勘と経験によって次に剣がどこに飛んで来るかを予想していたためである。しかし、フラムが一度予想外の動きをすれば、それを止められるスピードをデュラハンは持っていない。

それを知ってか知らずか、フラムはデュラハンにフェイントをかけることによって隙を作ろうとした。

それはただのフェイントなのだが圧倒的な速度で行われたそれにはさすがのデュラハンも対応しきれなかった。フラムの剣を受けるために構えられた剣を握る手。そこに向かって全力で左手に握ったアスを全力で振るう。


「ぬっ!?」


カァンという音とともに、剣ごとデュラハンの両腕が跳ね上げられる。そこが最後のチャンスであり、見逃せば勝利はまた数歩遠のくであろう。もうフラムはそれを逃すようなヘマはしなかった。手が跳ね上げられたことによって開いたみぞおちに向かって、【豪腕】によって強化された拳を振るう。


「終わりだ首なし」


フラムの拳はデュラハンの纏う鎧に放射状の亀裂を入れ、そして鎧を粉砕しながらデュラハンを壁に殴り飛ばした。


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