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Rule of Scramble  作者: こーたろー
第五編 楽園侵食
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序章 『混沌』

『混沌』という言葉を聞いてどのようなものを連想するだろうか?


 ある者は鉄火飛び交う戦場を。

 ある者は子供たちが騒ぐ教室を。

 ある者は性の乱れた娼館街を。

 ある者は大量の人間で溢れた都心を。

 ある者は理論で説明のつかない現象あるいは数式を。

 またある者は、生物という存在あるいは概念をそう定義するのかもしれない。

 これらは皆正しい。それら全て混沌であり、否を唱えられる道理はない。


 さて――。

 諸君……各々、自らの思う混沌を連想してくれたかな?

 

 では次だ。

 仮定として、今この瞬間に、世界全人類が各々の混沌の定義を連想してくれたとしよう。

 それら全ての混沌の定義を、否定せず、肯定に肯定を重ねてそれら全てを複合させた場合、混沌とはどのようなものを表すことになるだろうか?

 答えは明確だろう。


 ――――世界だ。


 つまりこの『世界』こそが『混沌』であるということ。

 少し納得のいかない者も多くいるかもしれない。


 だが、一度考え直して貰おう。


 いつか、善行をしたというのに不運な目に遭ったことはないだろうか。

 あるいは、何もしていないのに辛い目に遭ったことはないだろうか。

 少し良い目を見た直後に、それを全て台無しにするような不幸な目に遭ったことは?


 今上げた例は負の事象に過ぎないが、逆もまた然りだ。同じように、悪行を重ねているというのに、あるいは特に何か能動的に動いたわけでもないのに、福が舞い込んできたこともあるだろう。


 例を挙げればきりがない。


 つまり私がここで言いたいことは、因果関係の存在しない事象とは、すなわち全て混沌故の結果であるということ。

 少し意味の不明な表現をすれば、『混沌という法則によって起こる事象』ということ。


 ……すまない、少し意地が悪かったな。性分でね。俺は俺の事情を知って欲しいが故、こうして人を不快にさせる悪癖があるんだよ。


 ……あぁ、口調が変わってしまったか。


 少し待っていてくれ。『元』に戻す。


 ……

 …………

 ……………………


 待たせたね。こちらにも少し事情があってね。久方ぶりの『発作』で私も驚いてしまった。


 さて、これで混沌というものについての理解は深まってくれただろうか。

 これ以上は特に私から言うことはない。

 ただ、これだけは覚えておいてくれ。



 この世の誰一人として、混沌を笑顔のまま受け入れることなどありえないということを。


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