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Rule of Scramble  作者: こーたろー
第四編 戯曲 序
86/220

終章 コインの裏表 2.神話行軍

 ずるり、ずるり、と。

 人間が地を這う音が、暗闇の中に木霊していた。


 人気が存在しない裏路地。昼であるというのに日の光が差し込まない無明の空間。苔が生え狂い、羽虫や害虫がカサカサと男の前を横断している。キチキチと歯を鳴らすのはゴキブリかはたまた全く別の生物か。


 並の人間ならば卒倒してもおかしくないような悍ましい景色の中を、男は気にしいる素振りもなく這いずっていた。


「がふ……っ、もう、少しでいい。もって、欲しいのだけどね……」


 半身を焼かれたその男は神話級魔術師であるライアン・イェソド・ジブリルフォード。渋谷の街を混沌に陥れた元凶の一人。あるいは、彼こそが大元の原因だ。狩真が来たことも、悪夢(ルーザー)が出撃したことも、全て彼が東日本国に潜んでいたからこそ。

 ジブリルフォードは、それをしっかりと理解しながらも、あえて科学圏の手に落ち罪を裁かれるという選択を捨てた。


 やるべきことは山積みだ。

 そもそも彼が今回の襲撃で達成した目標は、全体で見れば一割にも満たないものなのだ。


「ぐふっ……まだ、本番が残っている……と、いう、のに……!」


 唯可の前では見せなかったような苦悶の表情を浮かべながらも、彼は前に進み続ける。


 この先にジブリルフォードの隠れ家がある。これまで彼が得てきた情報と、これから彼が取るべき指針があそこには詰められているのだ。

 データは全て電子機器に保存しており、正規の方法でなければ閲覧できないようにしてあるため、たとえ誰かにあそこがばれた所で問題はない。


 しかし……


「まだ……『敵』になる時では、ない……」


 切れ切れの呼吸でそう漏らす彼の瞳は、未だ闘志に燃えている。その炎は僅かも揺らいでいない。

 それはまだ彼の真意が誰にもばれていないことを確信するがゆえであり、同時にばれたとしても次善の策が存在するからに他ならない。


「く、くく……しかし、これでようやく本計画に移れる……ここまで長かったが、しかし努力の甲斐は合った。あとは私が限界を超えればいいだけの事」


 無様に地を這うという姿すらも、この男がすればどこかに気品を感じさせた。おかしな話だが、生まれついての高貴な者、あるいは常に己を律し、何ものにも左右されない強く気高き信念を持った者というのは、皆がこうなのかもしれない。


 そうして地面を這い、迷路になっている路地の深部に辿り着き、あともう少しで我が家だと安堵の息を吐いたその瞬間。



「お帰りかな、ライアン・イェソド・ジブリルフォード殿」



 厳かにして猛り狂う、虎のような印象を与える美声がジブリルフォードの鼓膜を震わせた。


「――――な、に……」


 声の発生源の方向を見ても、誰もいる気配がない。

 空耳ではあるまいし、まさか遠方から念話を掛けられているのかと訝しんだが――


「どこを見ておられるのか。俺は貴方の目の前にいるであろう?」


 再度同じ場所から声が聞こえる。


「霧牢の海神と呼ばれ、あらゆる魔術師から畏怖の対象として崇められた無謬の使徒も、敗走中とあっては勘が鈍るらしい。仕方ない。こちらから姿を現そう」


 その言葉と同時。ジブリルフォードの眼前の空間が静かに揺らめき、そこから一人の男が静かに足音を立てて顕現した。


 くすみ痛んだ癖のある銀髪は男の腰辺りで緩くカールを巻かれているようだった。

 顔立ちは美麗そのもので、世の女を惑わすに十分過ぎる色香を滲ませている。緩くカーブを描くその微笑を向けられただけで、嬉々として身体を差し出す女は後を絶たないだろう。


 しかしその雅な美貌に、右眼を隠す眼帯が禍々しさを差し込んでいた。

 身に纏う衣装は純白の生地に金の刺繍があしらわれた、華美な軍服のようなもの。コートを服に縫い付けているのか、袖を通していないにもかかわらず、風に煽られたそれは、(なび)き心地の良い音を立てるだけで、飛ばされることはない。胸に勲章やバッジを付けていないことから、この男が軍属ではないと分かる。


 いいや。

 そもそもこの男が軍人であるはずがない。


 彼は王。

 絶対的な君主にして、唯一無二の秩序の覇者。


「俺は貴方に折り入って相談したいことがあったのでね。楽園教会『枢機卿』が一柱。第九神父――ライアン・イェソド・ジブリルフォード殿」

「なぜ、あなたがそれを……ッ?」

「なぜ、と? これまた奇怪なことを言う。部下の名前を覚えていない上司などおるまい」

「部下、だと……?」


 その時、ジブリルフォードの脳裏である可能性が浮かび上がった。


(まさか……)


 それはあってはならない可能性。本当に世界が詰んでいる証拠に他ならない。故に、彼はこちらを見下ろす男へ問いかけた。否定して欲しいという願いを込めながら。


「あなたは……楽園教会の人間、だったのですか……?」


 すると青年はゆるりとゆるりと人の良い笑みを口元に湛えて、


「然り。俺は楽園教会の五つの柱たる『葬禍王』――その第一柱にして、魔術圏西日本帝国が帝王『統神(ライブラモナルカ)』コールタール=ゼルフォースだよ」


「そんな、馬鹿……な……ッ」

「そこまで驚くことか? 貴方は自らの言葉でこう言っていたはずだ。――『教会は世界の全てを管理している』――と」

「しかし……っ」

「信じられないとは言わせんよ。とは言え、如何に枢機卿と言えど、それを推察しろというのは酷か。俺自身、正体を隠していたこともある。だが――」


 コールタールは一度言葉を切ると、


「まさか、都合の悪い現実が立ち塞がれば両手で目を覆うような、そんな安い覚悟で教会を離反したわけでもあるまい。貴方はそのような妥協を己に許す弱い人間ではないはずだ。確固たる己の正義に従い、貴方自身が望む秩序を手に入れるために魔人の集団へ刃を向けたのだと推察していたのだが」


 同時、地を這うジブリルフォードへ凄まじい重圧が圧し掛かった。気配が膨れ上がり、それに伴って物理的な重圧が襲い掛かっているのだ。

 重力操作。

 コールタールが扱う『無数』の魔術の一つである。


「む……すまない、また漏れ出ているか?」

「……ええ、そう……ですね。少し気配を収めていただけると、こちらとしては助かります、ね……ッ」

「そうか、善処する」


 そう言って、コールタールは己が心象の昂ぶりを抑えた。

 特に魔術を行使しようとしたわけではない。ただ、少し感情が揺れ動いただけで、世界の在り方を歪めてしまう、異常なまでの最強。

 そう、最強なのだ。


 この男は。

 統神という異名を持つこの男は、この世界に存在する全ての魔術師、全ての存在の中で頂点に立っている。

 故に。


「すまない。貴方も少し、俺に合わせられるように『全力』を出してもらえるか? 俺はまだまだ未熟であるが故、感情を抑えるなどという芸当は出来んのだ」


 このように、相手が自分に合わせることを強要してしまう。

 弱者の気持ちが分からないのではない。分かっていながら、自らの強大な力をこれ以上制御できないから、そちらも努力してくれという嘆願だ。


 その心中は、謝罪の言葉で埋め尽くされている。

 強すぎる己に、会話する相手が合わせなければならない――なんと傲慢で戯けた話か。どだい認められるようなものではない。

 しかしジブリルフォードは、自らの欠点を理解し、己の未熟を恥じるコールタールを責める気にはなれなかった。

 彼は真に猛省しているのだから。


「礼を言うぞ。俺も負傷している貴方にこのような事を強要するのは心苦しいが、最低限、会話くらいは成立させたいのでね」

「お気に……なさらず……」


 そう言ってジブリルフォードは『染色』を展開した。

 攻撃の意志はない。ただ、コールタールと会話できる程度の強さまで己を引き上げるためだけに、魔女たちを大いに苦しめた海の法を展開したのだ。


『これで良いかな?』

「ああ、ありがとう。協力痛み入るよ」


 その染色に取り込まれてなお、コールタールの表情にさしたる変化はない。ただただ、敵としてこちらを認識しているはずであるのに、気を遣わせてしまったことを申し訳なく思っている様子だった。

 当然だが、海の中だから呼吸ができないなどという常識は、この最強には通用しない。

 水の箱が空に浮かび上がり、その中で浮遊するコールタールに動揺はない。


「では、単刀直入に言わせてもらおう」


 前置きが長くなったことを申し訳なく思いつつ、コールタールは本題を切り出した。


「俺は楽園教会の現最高権限者保持者として、第九神父――ライアン・イェソド・ジブリルフォードを制裁するためここまで来た」

『ほう……あなた自ら?』

「無論だ」


 染色を展開し心に少し余裕が出来たのか、あるいは腹を括ったのか――ジブリルフォードの声音は、既に戦士のそれへと変じていた。

 コールタールはそれを嬉しく思いながら、返した応えにこう付け足した。


「貴方は貴方が信じる秩序の光、そして無辜の民の命を尊び、この先に希望がないと判断した末に楽園へ刃を向けた。己が信念、自らが信じる正義の道を歩いた貴方を、なぜ他の者の手に掛けなければならない」


 それは彼の譲れぬ想い。世界最強の力を持ってなお自らを『未熟』と断じる男が、畏敬を抱き、羨ましいと崇める者へと送る無謬の敬意に他ならなかった。


「貴方は素晴らしい。貴方は強者だ。紛れもない英雄の器だ。神話級魔術師としての短命を呪うのではなく、新たな世代に繋ぐために動いた至高の光。自らの手を染め偽悪的に振る舞った貴方を、この世の誰よりも俺が讃えよう」

『それは光栄ですが……しかし――』


 世界最強の男の称賛をジブリルフォードは光栄に思いながらも、何もせず負ける気はなかった。


『ここで私はあなたを斃して、この教会とこの詰んだ世界への亀裂としましょう。今日この日を、私は希望に変えてみせる――ッ!』

「そうか」


 対して、世界最強の魔術師は一言そう返し、


「ならば俺は、それにすらも敬意を表して叩き潰そう」



 ライアン・イェソド・ジブリルフォードの染色を、握り潰した。



「貴方の生きた証は俺が覚えておこう。その願い、諦観……そして望んだ世界。俺が遍く全てを肯定し――その上で踏み躙る」

『――がっ! ぐふぁ……ッ!』


 左手を軽く握っただけで、凶悪な力を誇るジブリルフォードの染色を、力技で捻り潰したのだ。


「貴方はもう十分に足掻いた。ままならぬこの世界を憂い、その身を粉にして新世界へ己が魂を差し出した。その気概、その信念、その願い、光と仰いだその美しき夢……個人が持つには余りに重すぎるものであったろう? 故に、もう休め。そして寄越せ。貴方が掲げた信念願い、嘆きと怒り――渦巻く貴方の心象、俺が全て担い、叶えよう。その手に余るのならば、俺が代わりに背負ってやる。重荷となるならば俺が全て持ってやろう。さあ――その重責、命を賭して叶えようとしたその夢を、俺に差し出せ」

『――――』


 統神の声を聞いたジブリルフォードが最初に感じたものは、疑問であった。

 何を言っているのかという単純明快な疑問。


 私の夢を何だと思っている。この景色が、私が望んだ世界が、我が心底にて形を成すこの美しき平凡な世界を、他者に委ねて堪るものか――などという湧き上がるべき憤怒が何一つ湧いてこない。


 しかしそれも当然。

 理由は明快――それは目の前の王が、何ら偽りを語っていないから。

 その瞳は、紛れもなくジブリルフォードを敬っている。彼の掲げた湖の世界を、美しく優しい世界であると信じている。そして、それを背負いたいと語っている。


 ああ、おかしい。何を言っている。何だこの生物は。

 嗚呼、何故に。


『お戯れ、を……ッ』


 何故あなたは、他者の全てを背負おうなどと考えられる。


 他者から『全て』を託されることを望むなど、この男は精神が狂っている。

 他者の意志を受け継ぐ――なるほど言葉にすれば美しい。綺麗で真っ直ぐ、輝かしい英雄の所業に他ならん。


 しかし、しかしだ――。

 その行為には、絶対凶悪なる負の側面が存在する。

 人の意志を託されるとは、その人間の生涯を背負わされると同義。我が望みを叶えてくれ、果たせなかった願いを成就してくれ。私は死ぬ、だからお前にこの願いを託そう。命と共に、私の願いを――。


 その重責、その過酷、その絶望。

 この男はそれを分かっているのか? ――愚問なり。その瞳に輝く正気という名の狂気が雄弁に告げているではないか。

 この王は、託されることの重みを理解している。英雄という概念における邪性を余さず理解している。

 そう、その上で。

 王の中の王はその重みを十全に理解したうえでこう告げたのだ。



『俺に貴方の意志を託せ』

『貴方の命を、俺が背負ってやろう』

『任せろ。俺が全てを叶えてやる』



 ――ああ、この人は、真の狂人だ。

 染色と共に磨り潰される意識の中、ジブリルフォードは戦慄する。

 この日、ジブリルフォードはようやく知った。

 真なる狂気とは。


 半世紀にも及ぶ復讐心でもなく、

 何者かに操られた末の自壊でもなく、

 叶えられぬ世界を望むため死体を積むことでもなく、

 欲望のまま哄笑を上げながら人を食うことでもなく、

 機械的に人形を壊すことでもなく、

 天地万物全てが我が玩具と弄ぶことでもなく、



 魂を焦がす熱量の、恒星が如く眩しき善性であるのだと。



 しかし、戦慄しながらも彼もまた使徒。

 染色を――己の体の一部を握られ磨り潰されつつも、描画師は、苦悶の声を上げ、なお光の王へと立ち向かった。


『ならばこれはどうですか統神(ライブラモナルカ)……ッ!』


 次いで起こった現象は単純にして凶悪であった。

 空に浮かぶ水の立方体が凄まじい勢いでその体積を減じていく。それが示す意味は単純にして明快であった。

 すなわち、コールタールを過剰なまでの水圧でもって押し潰す。

 既に鉄塊ですら(ひしゃ)げてもおかしくないような圧力の中、コールタールはやはり静かに微笑を湛えながら。


「それともう一つ」


 次の瞬間、獰猛な虎としての禍々しい本性をその美貌に張り付けた。


「俺は一介の男なのでな。――血沸く戦いを何よりの娯楽として好いている。敬意を表すとは言ったが、それはまた別の話。殺し合おう、あまり失望させてくれるなよ! 楽しむぞ。神話級魔術師『霧牢の海神(エーギル)』ライアン・イェソド・ジブリルフォード! 貴方の全てを俺にぶつけろッ! 世界を滅ぼすつもりで来いッッ!」


 瞬間、爆発的に膨れ上がる気配が、コールタールを押し潰そうとする水圧を跳ね返し、更に気配を爆発的に広げることで、染色諸共、第九神父を()り潰した。


「――さらばだ、我が同胞。俺は貴方の願いすら叶えられる新世界を創生する。故に天から見ていてくれ」


 そう締め括り、存在一つ残らなかったジブリルフォードへ、情けを掛けず同情もせず、最後まで敬意を抱いたままその場を後にした。



 そして――。

 それからしばらく無明の路地を歩いたのち、銀の虎は小さく誰かに語り掛けた。


「もう良いぞ。すまないな、俺の我が儘に突き合わせてしまって」


 指を一つ鳴らすと、次の瞬間、虚無の黒しか存在しなかった空間から、一人、また一人と、滴定における呈色の如く、人の像が薄っすらと浮かび上がり始めた。

 空虚な張りぼてのような存在感しか持っていなかったその像は、やがて確固たる実態を取り戻し――、一個の人間としてここに成る。


 艶やかな黒い長髪が特徴的な、花魁のように煌びやかな着物を淫らに着崩した十歳程度の日本人の少女。


 灰色の髪を無造作に跳ねさせ、傍らに同じく灰色の毛並みの子狼を連れた、みすぼらしい格好の中学生くらいの西欧生まれの少年。


 白磁の如き白い肌との金糸の如き長髪、緑色の瞳を持つ、煌びやかなドレスにも似た衣装を纏った少女。


 目元を隠すほど長い黒髪を持つ青年は、浴衣を風にたなびかせ、緩く笑みの形を取った口に煙管を咥えている。


 くすんだ金髪、落ち窪み隈が残る生気のない目と、痩せこけた頬。古ぼけ擦り切れた服を纏い、頭からフードを目深に被ったみすぼらしい格好の男。


 そして燃え滾る地獄の炎の如く赤い髪と、黄金(こがね)色の瞳を持つ礼服の少年が何かを見据えるように両目を細めた。


 総計六名に及ぶ曲者――否、使徒がここに君臨していた。


「では始めよう」


 コールタールがコートを靡かせながらゆるりと笑みを浮かべ、最強の神話級魔術師たちを率いて進軍を始めた。


「これより世界の変革を行う。――皆、異論は無いか?」

「無論」

「当然っ!」


 コールタールの呼びかけに、煙管を咥えた男と金髪の少女が応える。


「重畳。では差し当たって、騎士と魔女の奪還を当面の目的とする。追光の歌姫(ブリュンヒルデ)八百万夜行(やおよろずやこう)紅蓮焦熱王(スルト)――以上三名は俺と来い。まずは騎士奪還のため渋谷へ赴く。ああ、それと――」


 そこで彼は何かを思い出したかのように軽く息を吐くと、すぐ後ろで彼に付き従う紅蓮の少年に尋ねた。


雷闘神(トール)はどこにいる? どうせまた無法者の住処で自分を痛めつけているのだろうが……バルトルート、居場所を掴み次第合流するよう伝えておけ」

「了解です」

「残り三名は待機。死想全知(しそうぜんち)はジブリルフォードの霊と対話し、『アノニマス』の残党を追え。童子纏いが堕ちた以上、奴らはもはや烏合の衆に他ならん」

「い、いえす、マスター」


 それに、死想全知と呼ばれた十歳程度の少女がおどおどと返した。先ほどジブリルフォードを完膚なきまでに下したコールタールに恐怖を抱いているのかもしれない。

 それを感じ取ったコールタールは、優しく彼女の微笑みかけると。


「安心して良い。別に失敗したところで怒りはしない。愛花(まなか)、たとえ君が失敗したとしても、年長者たちがカバーしてくれる」

「ほ、ほんとう……?」

「ああ」


 そう言って、コールタールはさらに柔らかく笑みを浮かべ、大きく美しい手のひらでその頭を撫でてやった。

 すると少女の不安は晴れたのか、未だ若干硬さは残るものの、小さな笑みを浮かべた。


「行くぞ、最強たる六柱の枢機卿。逃亡や死亡、格上げによって三柱が抜けるなどイレギュラーが続いたが、文句を言っても仕方あるまい。各々、理想郷の礎となるため、その身を()にせよ」


 コールタールの激励に、六人の最強の魔術師たち――否、使徒達が各々の言葉と声で返した。


『魔神』という表の殻を捨て、世界の表と裏において最強の王『統神(ライブラモナルカ)』が使徒を率いて世界を侵食する。


 目指すたった一つの理想郷。

 秩序と笑顔が溢れた幸福の世界を生み出すため。



 これにて序曲は幕を下ろし、

 これより終曲へ繋がる舞台の幕が開ける。




 真なる理想郷を目指す者たちの戦争が。




 世界崩壊まで、あと――――


ついに、一編当初から書きたいと思っていたところまで書くことが出来ました。それもひとえに読者の皆さんのおかげです。ありがとうございます!

これにてようやくRule of Scrambleという物語の『序章』が終わりました。

物語は第五編『楽園侵食』へ。これからも友介や唯可の歩む英雄譚にご期待ください!!!!

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