行間二
少年から見た少女は、とても綺麗だった。
その容姿はさることながら、立ち振る舞い、人格、表情、生き様——その全てが、少年には輝いて見えていた。
それはきっと、彼女の努力を一番近くで見てきたからだろう。
彼女は努力家だった。生まれつき魔術の才が乏しかった彼女は、毎日、毎日、勉学に費やした。友達と遊ぶ暇も、欲しいものを買いに行く暇も惜しんで、彼女は己を高めることに没頭した。そこに子供の甘えなどなかった。兄達よりもはるかに才能が劣る彼女は、己を追い詰め続けた。
だが、それは彼女にとって苦ではなかっただろう。だってきっと、彼女は楽しんでいたから。自分を鍛え上げていくことに、少女は楽しさを感じていた。友達と遊ぶよりも、玩具を買ってもらうよりも、少女は魔術が大好きだった。陰陽術が大好きだった。
だから少年も、彼女と同じように努力した。彼女の横に立つために。弱い自分をいつも助けてくれる姉のような少女のために、少年は強くなろうと決意した。
今さらながら思い出す。あれは、初恋だったかもしれない。彼女にとって自分は弟のような存在でも、少年にとっての彼女は恋人だった。
けれどそんなある日、彼女は挫折してしまった。
やっと手に入れた成功の末に得た残酷な真実は、少女の心を過剰なまでに抉った。それは、彼女の人生そのものを否定するような事実だった。知るべきでなかった。
だがそれでも、全てが壊れてしまうようなことはなかった。
本当の終わりが始まったのは、あの時だ。
土御門狩真。字音の実弟が道の真ん中で少女を殺害している場面を目撃してしまったあの時。
あの時に、全てが変わってしまった。




