序章 ある二人のお話
投稿遅くなりました。
申し訳ないです。
西暦二〇四五年。
渋谷事変から一年と五ヶ月経ち、東日本国も徐々に落ち着きを取り戻し始めた。
八月を過ぎ夏が終わろうとしているにもかかわらず、雲一つない晴天から射し込んでくる日光は未だ衰えを見せようとはしない。
そんなある日。
西日本帝国のとある遊園地で、二人の少年がジェットコースターでこんな問答を広げていた。
「テメエ、字音姉ちゃんのことをどう思ってんだ?」
そう問いかけるのは、短髪をくすんだ金色に染め上げた少年だ。目つきの悪い、いかにも不良と言った風貌の中学生くらいの少年だった。
質問を受けたのは、彼の隣に座る美少年。こちらはさらに幼く見える。十三か十四くらいだろうか。ふわふわの髪や長い睫毛から中世的な印象を受ける少年だ。彼は虚ろな瞳を自分の足下に向けながら、ポツリとこう漏らした。
「……大切な幼馴染み」
生気の感じられない、小さな声。
だが隣の金髪の少年は、それを気にする素振りも無く、さらに淡々と質問を重ねていく。
「じゃあよ、テメエは字音姉ちゃんのために死ねるか?」
「それは、分からない。愛しているわけではないから」
帰ってきた答えに、少年はさして不満を持っている様子は無い。まるでアンケートのように、一方が機械的に質問を出し、もう一方が適当に答える。
カタカタという音と共に、ジェットコースターが坂を上り始めた。視界が徐々に高くなっていき、眼下に広がる景色が一転する。遊園地の全貌はもちろん、遥か遠くにある山まで見える。
周りの客達は黄色い声を上げているが、二人の少年は興味が無いのか、ずっと二人で問答を繰り返していた。
「んじゃあよ」
ジェットコースターが坂の頂上に辿り着き、一瞬だけ静止する。無音状態が客達の緊張を高める。
そんな中、金髪の少年が最後の質問だと前置きして、こう尋ねた。
「もしその大切な幼馴染みを自分の手で傷付けたら……あるいは殺してしまったら、テメエはどうなっちまうんだろうなあ?」
残酷に、酷薄に引き裂かれた笑み。
それを見ても、やはり美少年はその美しい顔を崩すことは無かった。
そして。
少年が何かを言う前に、腹の底を不快な浮遊感が襲い、ジェットコースターは凄まじい勢いで降下した。
これからしばらく低速でしょうが、お付き合いいただければ嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします




