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Rule of Scramble  作者: こーたろー
第七編 夏の活劇
184/220

???(時系列不明の交差点)

 私はひとつの夢を叶えた。


 村の人たちは幸せになった。笑顔を絶やさなかった。ずっとずっと、幸せそうに笑っていた。


 まだまだ未熟だった私には、それが嬉しくて仕方がなくて。みんなを笑顔にできたことが誇らしくて、父と母に褒めて褒めてと言ったものだ。

 彼らは褒めてくれた。村の人たちも、どんどん私に歌ってくれと懇願した。それが嬉しくて、私は求められるままに歌った。


 幸せだった。幸せだったのだ。


『私の村』は、『幸せ』で満ち溢れていたのだ。


 だけど。




――か? 幸せそれは言えるの、くれよ果たして答えて




 ある時、とても変な声が聞こえた。何を言っているのかわからない。ちぐはぐで継ぎ接ぎだらけの言葉。間違えて嵌めてしまったパズルのような、そういう印象を与えてくる、気味の悪い言葉の羅列だった。

 夢を叶え、幸せになってから、ごくまれに聞こえてくるようになった。


 それがきっかけだとは思わない。

 あの声が何かをしたとは思っていない。

 何よりあれは――きっと、観ているだけ(・・・・・・)のものだから。

 だけど、前触れではあったのだろう。


 ある日――そんな幸せで満たされた場所に『彼ら』が来た。

 彼らは、その当時は正義だった。誰も彼らに逆らえなかった。

 女の恐怖の対象そのものであり、現在では、ある意味核よりも忌避される人類史上最悪の汚点。教養の低さを象徴するかのような、蛮行の嵐。

 魔女狩りを専門とする異端審問会だ。


「俺ァ総聖堂〝十一先兵〟で序列第八位を賜ってるもんだ。『災害の人魚(ウェパル)』なんて呼ばれ方もされてる。ちょっくらここに用があって来たんだが……ハハッ、こりゃひでェなおい」


 ある夜の日だった。いつものように幸せに過ごしていたある日、そいつはやってきた。あれから時は経っていないはずだが、あまりいい思い出ではないせいか、あの後のことが衝撃的に過ぎるせいか、もうその姿は覚えていない。


「あァ、なんか勘違いしているようだが、昼間にばか騒ぎしてる紛いもんじゃねェとだけ言っておく。本物さ。本物の異端審問機関ってやつだ。魔女狩りに鬼落とし、吸血鬼の殺害まで、神の意に反する存在なら何でもござれ殺してやるから首を出せっていうあれだよ。つまりテメエらは相当ヤバいってこった。何より俺が出張ってんだ、それくらい自覚してくれや」


 大男が話しかけているのは、ここの村の村長だった。気のいいおじさんで、村一番の働き者だった人。

 蓄えた筋肉やいかつい面貌、無精ひげなどのせいで最初は子供たちに怖がられるのだが、実際はとても優しく正しく真っ直ぐな人だ。

 だから私は、彼のことを疎ましく思っていなかったし、父と母の次くらいには大好きだった。

 私は父や母、他の友達には内緒で、その会話を盗み聞きすることにした。


「!$& $%!%’!$&&’&‘“_」¥~-#R*‘)rQQ|・。>><?」

「あァー、なるほどね? いやいや、そういうわけかい。ククッ、クハッ。はははははは! こいつァ傑作じゃねェかなァ? 俺が通り過ぎる前にぶっ壊れてちゃァわけねェだろォがなァッ。あはっ! カハハハハハハハハハハハッッ!」


 何が面白いのか、村長の前で気でも触れたかのように転げまわるその男に、私はどうしようもない忌避感を覚えた。違う……ただただ嫌悪した。

 ただそれ以上に気がかりだったのは、村長の口調というか話し方が、変だったことだ。まあ、その時は特に気にしなかったのだけど。


「いやァー、アヘン中毒者よりおさらに酷ェのがいるって聞いたけど、想像以上じゃねえか。おいおい……つゥーことはナニ? 俺は今から正義のお仕事をするってか? だってこれ、救いってやつだろ? カミサマお得意のスクイ」

「##%“‘」”’$)‘$(#! #$P‘KD#)W“#RF)E! ――――ッ!」

「ははッ、会話は成立しなさそうだなァ。ならまあ、とりあえず虐殺だな」


 地獄が始まる前に、彼は言った。




「村がまるまるひとつ消えた、か。

 村人全員が『しあわせ』な世界にカッ飛んじまうとはなァ。

 何があったかしらねェが、まァ人様に迷惑をかけることもない、そしてもっと気持ちいいトコに連れてってやるよ。

 天国ってンだ。

 テメエらにゃお似合いだろ?

 ぶち込んでやるから二度と戻ってくんなよ気持ちワリイ」




 そして嵐が爆発した。


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