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Rule of Scramble  作者: こーたろー
第六編 鏖殺の果て
168/220

誰も知らない負け惜しみ

 ウィリアム・オーフェウス=ガラハッドは浅い眠りの中で、とある少年との競争の日々を思い出していた。


 テストの点数で勝ち負けを競ったこと。

 足の速さでどちらが上か勝負したこと。

 喧嘩の強さで白黒はっきりさせようとしたこと。

 どちらが先に、年上のお姉さんの心を射止められるか勝負したこと。


(……負けて、しまったなあ)


 朦朧とする意識の中で、白髪の少年はそんな風に思っていた。

 現在、『彼』は眠っている。今のウィリアムは、自身の意志で行動することができる。


(だったら……少しくらいは、いいよな……)


 既に体は満身創痍。腹に穴をあけられて、宝剣もまともに使えそうにない。

 はっきり言って役立たず。こんな自分が何をしようとしたところで何もできないだろう。

 だが――


(このまま寝ていたら、一生ディアに勝てないだろうなあ)


 それは嫌だった。

 シャーリンを射止められたことはまあ百歩譲っていいけれど。

 ライバルだと思っていた幼馴染に差を付けられるのは、少々癪だ。


 今は自分なんだ。誰かに魂を乗っ取られた哀れな生贄ではない、最も穢れ無き騎士ではない。

 ウィリアム・オーフェウスという、ディア・アークスメントのライバルでしかない。

 ならば、


「行く、んだ……!」


 たとえ自分が戦力にならずとも構わない。

 最後のとどめとなるとは思っていない。

 木偶にできることなど、敵の攻撃を受けるだけだろう。

 それでもいい。


「たとえ、君がもう僕をライバルとは、思っていなくても……!」


 少年はゆっくりと起き上がる。近くに置いてあった白き楯を手に取って、体を引きずるように歩き出す。


「――意地が、あるから……」


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