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Rule of Scramble  作者: こーたろー
第六編 鏖殺の果て
156/220

証言C ある鮮魚店主の話

 おお、久しぶりだなヴィクト。

 何だ何だ、最近会ってないかと思ったら、また顔つきが変わったんじゃねえか。……ん? 英雄王閣下に会ったかもしれないって?

 英雄王閣下ってあれか? ディリアスの奴か。

 ん、ああ、俺はあいつと顔見知りだぜ。今でもあの男が俺の事を覚えてるかは分からねえけどな。

 教えて欲しい? あいつのことをか?

 まあ、そうだな。あいつは面白い奴だし、話すのもやぶさかじゃねえしいいか。


 あれは十年前……ちょうどブリテンの宵闇の只中だったな。

 俺も若い頃はやんちゃしたもんで、槍を持って戦争に参加してたんだ。

 アルスター騎士団って知ってるか? ケルトのアルスターサイクルを原型にした騎士団なんだが。

 お、やっぱ知らねえよな。

 俺はその頭目だったんだよ。そんで、俺たちはあの英雄の敵陣営に付き、奴らとドンパチを繰り返した。

 俺たちはマジで強かったんだぜ?

 頭目である俺を筆頭に、雑魚を薙ぎ倒し、強者を蹂躙してた。

 俺たちのおかげで勝利も近かった。


 だけど、そんな時、俺たちの目の前にあいつが現れた。

 ちょうど敵方の補給地を狙った時だ。

 何の変哲もない街だったから、民間人にも当然被害が出る。

 ああ、そうだよ。あの時はもう泥沼だった。両陣営共倒れになってもおかしくなかった。そもそも、科学側が俺たちみてえな騎士を雇ってる時点でバグってたんだよ。

 敵魔術師やら騎士やらをぶっ殺しながら、俺は虚しい勝利を確信していた。


 だっていうのによお、突然俺たちの前に現れたあいつは、全部持って行きやがった。

 今でも覚えてるぜ、あいつの名乗りを。

 どこまでも垢抜けねえ青二才のくせに。

 名乗った瞬間、死神になりやがった。


『貴殿らが、アルスター騎士団か。私はディリアス・アークスメント。全員で掛かって来ると良い。その全てを捻じ伏せよう』


 結果はまあ、察した通り、俺たちの負け。

 十人近い一騎当千の騎士が束になって掛かって、たった一人のガキに負けた。

 ただよ、あいつ。

 俺達に勝った後こう言ったんだ。


『貴殿らはここで死んだ。数多の非道を繰り返したアルスター騎士団は、今日、壊滅した。故に、もう貴殿らは戦争に囚われることはない。行け。

 ――この内乱は、私が止める』


 そうしてあいつは、宣言通り内乱を止めちまった。北と南でブリテンが分裂してしまったとは言え、もう視認が出ないよう最善を尽くし――そして成しちまった。

 ほんと、あいつには敵わねえ。

 あいつのおかげで、俺は今はこうして魚売って、カミさんも出来て、子供にも恵まれて……幸せに暮らせてる。


 だから、まあ。

 俺もお前と同じだよ。

 あいつの力になりたい。あのガキに助けてもらった恩を返してえ。

 いつかそんな時が来たら、どんなに嬉しいだろうな。


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